平成18(2006)年度
文化人類学
高知大学 医学部 集中講義
担当:池田光穂(大阪大学)
8. 履修希望学生に求めるもの(必須)
ものおじせずに発言し、他者と協調精神をもって課題に積極的に取り組める受講生を歓迎します。
9. 備考
10. オフィスアワー
非常勤講師のため特に設けず
11. 学生相談場所
非常勤講師のため特に設けず
12. キーワード(必須)
文化、人類学、民族誌、フィールドワーク、参与観察
13. 授業テーマと目的(必須)
この授業は、文化人類学の面白さを受講生に理解してもらい、この学問を修めることがいかに有意義であるかをご紹介します。またこの学問 の学習と実践を通して、皆さんにもっとも身近な問題である文化の実践的課題に答えるべく、文化人類学についてのAからZまでについての伝授をおこないま す。
文化人類学について聞きかじったことのある学生、この学問の名を全く知らなかったけれども、がんばって勉強に取り組みたいと思う学生、 そして楽してサバイバルの技を身に付けたい、ちょっとものぐさな学生にも是非受講されることをお奨めします。
授業はレクチャー(講義)と質疑応答、および討論からなります。ものおじせずに発言し、他者と協調精神をもって課題に積極的に取り組め る受講生を歓迎します。
14. 授業計画(必須)
回 主題
1回 文化人類学入門の入門
2回 博物学と人類学
3回 文化概念の誕生
4回 機能主義人類学とマリノフスキー
5回 社会を理解すること
6回 マーガレット・ミードのサモア
7回 ルース・ベネディクトと日本社会
8回 レヴィ=ストロースと構造主義
9回 民族誌の効用について
10回 解釈人類学者クリフォード・ギアツ
11回 首狩と情熱
12回 メイキング人類学
13回 総合討論(1):文化人類学は何のために?
14回 総合討論(2):文化の多様性とは何か?
15回 まとめ:文化人類学が創られる時
<授業内容>
1回 文化人類学入門の入門
*近代啓蒙主義と文化人類学の関係、ヨーロッパにおける他者問題、日本人とは誰のこと、文化と政治、などをテーマに、現代の我々の生活 において文化人類学を学ぶことが、なぜ必要であるのかについて論じます。
2回 博物学と人類学
*近代文化人類学の誕生は、それに先行する西洋の博物学的知識の集積と、それらの知識の分類や、人間社会の多様性に関する多種多様な説 明から生まれてきました。博物学的な知識収集から、どのような過程を経て近代文化人類学が誕生したかについて考えます。
3回 文化概念の誕生
*かつて我々にとって、文化を身につけるという表現は知的に成熟することを意味していました。しかし、現在では文化とは人間の異質さを 強調する際に持ち出される「原因」であり、また他方では人間の相互交流の可能性と限界を表現する用語へと変化をしました。文化概念の1世紀にわたる変化を 理解しなければ、この変化がなぜ起こったのかについて理解することはできません。このことを中心に論じます。
4回 機能主義人類学とマリノフスキー
*近代文化人類学はマリノフスキーのフィールドワークに始まると言われています。フィールドワークは、長期にわたり現地に住み、現地語 を話し、そして現地の社会活動に部分的でも関与し人々の視点から考察する「参与観察」という要素から成り立ちます。マリノフスキーが、トロブリアンド諸島 でどのような経験をしたのか。そして彼の経験が後の彼の社会理論である機能主義としてどのように結実したのかを考えます。
5回 社会を理解すること
*現在のマリ共和国のドゴンの人たちの研究を1930年から56年の死まで続けたフランス人民族学者マルセル・グリオールの研究を通し て、ある社会を「全体として理解する」ことの意味について考えます。
6回 マーガレット・ミードのサモア
*現地の人たちの思いこみや人々のいう冗談を、その社会についての「本当のこと」であると誤解している人に対して、私たちはどのように 考えればよいでしょうか。その社会にとって「本当のこと」とは一体何を意味するのか? 何をもって本当だと証明するのか? 変化や多様性があればそれは本 当のものとは言えないのか? さまざまな疑問をミードとう偉大な人類学者の経験を通して考えます。
7回 ルース・ベネディクトと日本社会
*ベネディクトは優秀な異文化研究者であると言われています。比較という方法を採用し、それぞれの文化を相対的に眺めた時にはじめて見 えてくるパターンという概念を、第二次大戦中の敵国である日本社会に適用させて、見事な日本社会像を浮かび上がらせました。他方で、日本の戦後の権威者 (研究者)からは不審の眼で見られました。彼らには、自分たちの社会を相対的に眺める視点について彼女ほどの洗練された方法を持たなかったからだと理解す ることができます。ベネディクトの独自の方法について考察します。
8回 レヴィ=ストロースと構造主義
*レヴィ=ストロースは高度な理論である構造主義の提唱者であり、また「最後」の集大成者でした。これらは彼の該博な勉強と理論的構想 力の結果と言われていますが、その理論が生まれる背景には、若き時代にブラジルでのフィールドワークがありました。彼のブラジルでの経験とのちの理論家と しての成功の間にみられる連続性と断絶について考えます。
9回 民族誌の効用について
*人類学者は自分が生まれ育った社会を離れ、異文化の環境下で調査をおこない民族誌と呼ばれる著作をあらわします。この著作は、その社 会を人類学者がどのように理解したかという主張と、その主張を正当化する民族誌データの提示が統合されたものであると言えます。しかし参与観察は実験的観 察とは異なり、調査者の主観的経験と出来事の客観的経験が複雑にブレンドされたもので、それらを事後的に分離することは不可能です。したがって、民族誌に は著者の生き方というものが多かれ少なかれ反映されています。ヴィクター・ターナーという魅力的な生き方をした象徴人類学者を例にとり、このことについて 考えます。
10回 解釈人類学者クリフォード・ギアツ
*現在もっとも影響力の大きいアメリカの人類学者であるギアツが提唱する文化の概念は、ボアズにはじまるこの研究の頂点にあると言われ ています。他方で、ギアツの提唱する概念は抽象的でまた主知主義的でわかりにくいと批判されます。具体的な人間活動から文化の概念を通して抽象化する作業 とは極めて倫理的なものであると考えているかのように思えるギアツの主張を理解する鍵は、西洋の経験論と懐疑主義について思いをめぐらすものであると私は 理解しています。
11回 首狩と情熱
*未開人のもつ典型的なイメージのひとつである首狩り。しかしかつての「野蛮人」からみるともっとも気高い行為と見なされてきたもの が、統治政策の結果、蛮習として畏れられ、貶まれ、やがて禁止されてゆきます。首狩りに込められた複雑な感情経験は、その蛮習が禁じられた後も人々の心の 中に残っており、意外なところから呼び起こされることがあります。心的外傷とは決して普遍的なものではなく文化的特異性があります。しかし他方でそれは学 びうるものであり、また理解する可能性があるものなのです。このテーマについて特殊でありながら一般化可能な希有な事例を取り上げます。
12回 メイキング人類学
*11回のレクチャーのまとめと質疑応答からなります。また、残り2回の総合討論にとって必要な事例を紹介します。
13回 総合討論(1):文化人類学は何のために?
*文化人類学者がおこなう活動について、これまでの授業のおさらいを行います。また、それらの活動の個々の意味やそれらが総合された時 に、どのような知的・実践的効果が生じるのかに関して議論をおこないます。
14回 総合討論(2):文化の多様性とは何か?
*文化が多様であるとはどういうことなのか? 文化が異質であるとはどういうことなのか? 文化は人間が意識的に担っているものなの か? あるいは人間は文化によって操られるものなのか? もし一人ひとりの人間が異なるものであるなら、なぜ他人を異文化と呼ばないのか? など文化の定 義にまつわる素朴な疑問について「真面目に」考えます。
15回 まとめ:文化人類学が創られる時
*この授業で学んだこと、学ばなかったこと、学び忘れたこと、などについて受講生からのフィードバックを中心に、総合的なまとめ授業を おこないます。
15. 相互参観授業公開日程(新項目)
○ 公開する ● 公開しない ○ 全て公開する ○ 一部公開する ○ 第1週 ○ 第2週 ○ 第3週 ○ 第4週 ○ 第5週 ○ 第6週 ○ 第7週 ○ 第8週 ○ 第9週 ○ 第10週 ○ 第11週 ○ 第12週 ○ 第13週 ○ 第14週 ○ 第15週 ○ 一部公開する(日程は後日決定)
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16. 達成目標(達成水準)(必須)
1.文化人類学についての必要かつ最小限の知識と実践を習得する。
2.学んだ文化人類学の知識と思考法によって、身の回りにおこっている文化と社会に関わる諸問題を発見する。
3.諸問題の解決や解消に向かって、具体的な方策を立てそれを実践することができる。あるいは、未来において生じうる問題や困難を予測 し、それを回避しつつ、当初の目的を敢行することができる。
17. 授業時間外の学習(必須)
18. 関連科目名,関連科目コード番号
19. 教科書・参考書(必須)
(教科書)
太田好信・浜本満編『メイキング文化人類学』世界思想社、2005年
(参考書)
多数あります。以下のURLをポータルとするサイトで紹介しています。(URL入力が面倒くさい人は、googleやyahooで「池 田光穂」と「授業」や「文化人類学」と複合検索してください。ポータルからリンクする画面などで見つかります。
◎文化人類学入門
http://cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/0-culanthro.html
◎医療人類学プロジェクト
http://cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/medanth.html
20. Web テキスト
◎文化人類学入門
http://cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/0-culanthro.html
◎医療人類学プロジェクト
http://cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/medanth.html
21. 成績評価の基準と方法(必須)
授業中に課されるさまざまなテストや試練(?)による平常点と、授業における質疑やコメントの評価点、ならびに事後レポートの点。以上 の総合点により判定します。
22. パソコン必要度(新項目)
● 1. まったく必要ない
○ 2. 必ずしも必要ないが推奨
○ 2-1. 授業中の活用を推奨 ○ 2-2. 授業時間外学習の活用を推奨
○ 3. 必要 ○ 3-1. 授業中に必要 ( ○ a. 1−2回程度必要 ○ b. 3−5回程度必要 ○ c. 半分程度の回で必要 ○ d. ほとんど毎回のように必要 ○ e. 毎回必要 )
但書 ○ A. (但書無し) ○ B. 教室に設置されているデスクトップパソコンを使用する ○ C.自宅のデスクトップパソコン利用で受講できないことはない
○ 3-2. 授業時間外学習に必要 ( ○ a. 1−2回程度必要 ○ b. 3−5回程度必要 ○ c. 半分程度の回で必要 ○ d. ほとんど毎回のように必要 ○ e. 毎回必要)
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在校生特典! 昨年度の怒濤の授業は こちら(画像で重たいので注意!)