現場力とコミュニケーション
《第1回》
オリエンテーション 現場力とはなにか 解説:池田光穂
講義目的
現場力とはなにか、について具体的に考えることが本講義の目的である。自らの臨床実践でおこなっているやり方を、他者のそれと対比させる。 また実践知に関する文献的な知識・知恵を手がかりとして、具体的な実践の営まれ方への理解を深める。そして実践の現場で、現場力がなにによってなりたって いるのかについて理解します。
講義内容
(学期全体を通して)
本講義では、次の2つの切り口から現場力を深めます。ひとつめは、自分自身の経験を事例としてまとめ、そのプレゼンテーションと議論を通し て、実際の臨床実践とい う営みに基づいた現場力を議論することを目指します。この議論を通して、自分自身がこれまではっきり自覚せずに行ってきた経験を言語化し、自らの前提を問 い直した り、新たな視点でその経験を意味づけることを目指します。この言語化の作業は、次の文献学習とも関係させながら進めていきます。2つ目は、現場に関連する 概念を、参考書(文献)として提示した著作や論文を読み解くこと通して理解します。
(この授業では……)
現場力(げんばりょく)とは、実践の現場で人が協働する時に育まれ、伝達することが可能な技能であり、またそれと不 可分な対人関係的能力などの総称のことをさす[池田光穂の定義で、講義全体での公認のものではありません]。
したがって、現場力は、現場にある物理的な力だけでも、個人に備わる能力だけでもない。その両方の性質を有するもの である。言い換えると、現場力は、現場にあるのでも、個人あるのではなく、現場と個人がマッチした場に現れる、人間 の具体的な技能ないしは具体的な能力のことである。
現場力が観察できる場と条件とは次のようなものである。(括弧内)はその条件の抽象的属性をさす。
従って、人がある具体的な現場力について言及しようとする時には、上記の場と条件に関する記述が不可欠となる。
現場力は、現場で働く人の意識や行動を通して理解されることもあるし(=現場力理解の受動性)、その場に居合わせた 観察者が理解することもある(=現場力理解の能動性)。
他方、当事者には認識されていないが、観察者が発見できる可能性がある。その場合には上記の現場力の場と条件に関す る要素に着目すれば、現場力についての大まかな説明を得られることができる。(「大まかな説明が得られる」とは、そ の具体的な現場力を、その現場にいない人が記述や解釈を通して理解することができるという意味である)。
人間の技能や能力のひとつである「現場力」を、あえてこのような記述概念をもって説明しないとならない理由は次のとおりである。つまり、
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