現場力とコミュニケーション
《第6回》
現場力に関わる諸概念
現場とアンチ現場―平井流・現場力の定義
講義目的
現場力を以下のように暫定的に定義し、その内容について議論する。現場力とは、「複数の対人関係が存在するある特定の空間で、ある特定の目標を達成するために比較的短期にある程度の結果を 引き出せる行動が選択できる意思決定能力」のことである。
講義内容
心理学者の平井啓さんは、2006年11月7日の「現場力とコミュニケーション」の授業の中で、現場力を次のように定義 している。
「複数の対人関係が存在するある特定の空間で、ある特定の目標を達成するために比較的短期にある程度の結果を 引き出せる行動が選択できる意思決定能力」
このすばらしく明確な定義に、私(池田)が註釈を与えるとすると、およそ以下のようなものになろう。
まず、現場力を能力という観点で表現していることは、私と共通である。他方で、平井さんは、この定義において現場な るものがいかなるものであるかを説明している。それは「複数の対人関係が存在するある特定の空間」というものが、現 場ということらしい。
それに比べると、私はこれまでの説明において現場というものを説明していないことに私じしん、後になって気がつい た。ひょっとしたら、私にとって、現場とは自明のものであり、わざわざ説明のいらないものであると考えているのかも しれない(「現場」概念の先験性)。
ただし、それは、平井さんのいうような「特定の空間」というものを意味していない。極端なことを言えば、現場は行為 者(=人間)が、放り込まれた特定の空間だけでなく、時間をも包摂し、人間の能力(faculty)と行ったからには、その 能力行為はポータブルであり、行為者は、その能力を駆使して、その場に「現場」すら作り出すことができる。つまり、 現場力には「現場の時空間を、そこに造り出すこともできる能力なのだ」とすら、私(池田)は考えたい。
文献
注意:このページは平井啓先生がおこなった講義をもとに、池田光穂がその授業内容をまとめたものです。
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