「遷延性意識障害」の患者の理解と、その看護について考える
PBL医療人類学【8】
今日のテーマは「遷延性意識障害」の患者の理解と、その看護について考えるワークが中心となります。午前中のワークは、この症状に関す る医学文献の読解とプレゼン技法獲得をめざします。午後は[ビデオがうまく上映できれば]『あせらないけどあきらめない』の上映とそれにもとづくディス カッション(議論)およびプレゼンの2部構成でおこなうつもりです。
【ワーク】45分
2011年X月某日、未来のあなたは職場の管理者から「遷延性意識障害の患者が入院する予定ですので、あなたにそのケアチームの一人と して任命します」という連絡を受けました。しかし、遷延性意識障害の患者に関する知識がほとんどないことに気付きました。そこでまず調べた『医学大辞典』 の項目が下記の【資料】にあげたものです。
決められた班に加わり以下の手順でワークに従事してください。ワークはチームワークでおこなうものです。ワークに参加しないのみなら ず、参加してもチームの一員として議論に参加しないなど十分貢献しない場合は、あなた自身の責任によりチーム全体にマイナスの影響を与えることになりま す。チームがだらけている時は緊張を促し、チームが逆に真剣なりすぎているときは、みんんなを和ませることも任務です。楽しく勉強できるか否かは、あなた の貢献次第であることをよく自覚してください。
[1]チームのメンバーで自己紹介しよう。もうすでに知っている人どうしでも、初対面と思って自分の「顔」をきちんと分かってもらうよ うに自己紹介しなさい。
[2]議論を促したり制御したりする司会者をきめてください。未経験者を優先します。
[3]レポーターさんを決めてください。レポーターさんは、議論に参加して自分の意見を言うことができますが、議論の終了後のプレゼン をしなければなりません。未経験者を優先します。
[4]全員で資料を音読しましょう。(順に読んでもかまいませんし、全員で唱和してもかまいません)
[5]わからない言葉を調べましょう。また今手許にない場合は、どのような資料をしらべればわかるか考えましょう。
[6]それぞれの文章を、この知識がわからない看護学生に2011年の未来のあなたは説明するために、文章をかえてわかりやすいことば で作文しましょう。
[7]ワーク終了後に、各班のプレゼンをおこないます。もっとも平易で明快な説明をできたグループがもっとも優秀なワーク実践者である とみんなで評価しましょう。
PBL医療人類学【9】
【資料】[南山堂医学大辞典第18版]より
遷延性植物状態[センエンセイショクブツジョウタイ]
【英】persistent vegetative state
慢性期意識障害の一型で,1972年,JennettとPlumにより提案された社会・医学的socio‐medicalな概念であ る.すなわち,「脳卒中や頭部外傷,ときに各種重篤脳症により昏睡状態に陥り,死線をさまよったのち開眼できる状態にまで回復したものの,周囲との意思疎 通を完全に喪失した患者の示す症候群」である.
病理学的には大脳半球がびまん性に障害されているが,脳幹機能がほぼ正常に保たれている.したがって,自発呼吸があり,栄養補給,褥 瘡予防処置など適切な看護により,数年から十数年生存できる.なお,太田ら(1975)は植物状態vegetative stateよりも,「植物症vegetative state(syndrome)」なる用語を推奨している.
診断基準としては,以下の6項目を満たし,かつそれが3ヵ月以上継続しほぼ固定している状態である.すなわち, 1)自力で移動できない, 2)自力で食物を摂取できない, 3)糞尿失禁をみる, 4)目で物を追うが認識できない, 5)簡単な命令には応ずることもあるが,それ以上の意思の疎通ができない, 6)声は出るが意味のある発語ではない.この診断基準で問題となるのは,「簡単な命令には応ずることもある」という表現である.
1989年アメリカでは,これら患者に対する治療を中断してもよいとの声明が出されており,患者のQOL問題との関連から今後再検討 する必要がある.一般的に予後絶対不良と考えられているが,必ずしもそうではない.この状態はまた「植物人間」と俗称されることがあるが,患者の人権を考 えると適切でない.
類似の状態を表現する用語には,形態学的には→失外套症候群*,そして機能的には無動性無言(→無動無言症*)がある.これに対し, 施錠症候群locked‐in syndrome(→ロックトインシンドローム*)とは,意識清明な患者が瞬目(まばたき)のみでしか意思表示できない状態で,意識障害の一型ではない.
PBL医療人類学【10】
【ワーク】60分
『あせらないけどあきらめない』の上映とそれにもとづくディスカッション(議論)およびプレゼンテーション。
ワークの方法は午前中で指示した方法を踏襲してください。
ワークの課題は次のとおりです。
[1]遷延性意識障害の患者とのコミュニケーションにおいて、看護者はどのような点に気を配って実践しているのだろうか?
[2]遷延性意識障害の患者の家族とのコミュニケーションにおいて、看護者はどのような点に気を配って実践しているのだろうか
[3]遷延性意識障害の患者とのコミュニケーションにおいて、家族はどのような点に気を配って実践しているのだろうか?
[4]このビデオから皆さんが学んだ重要なことはたくさんあると思いますが、その中でもっとも重要な点を3点あげて、グループのみなさ んと議論しなさい。
PBL医療人類学【11】
【テーマ】 ジレンマと向き合う [→こちら]
【クレジット】準PBL方式で学ぶ医療人類学、第3回目
2007年6月23日:http://www.cscd.osaka-
u.ac.jp/user/rosaldo/07023naruhit03.html
● 授業蛙