紛争におけるコミュニケーション(1)
中西 淑美
2007年5月22日(火)
☆この講義内容および目標
我々の日常生活は、“考え・利害・立場の不一致状況と不一致行動,矛盾,対立に満ちている.紛争・対立・葛藤・トラブル・諍いと表される「コンフリクトconflict」とは何かを学ぶ.
「コンフリクト」とは2つ以上のゴール(目標)が両立・共存し得ない状況である.その「場」で展開されるコミュニケーションから,対立する両者の間で、妥協点を調整するのではなく、両者が不満や不信感を残さない,新しい紛争解決を,「場」や「プロセス」から創造的に模索する方法を紹介する.
☆この講義のキーワード
コンフリクト,紛争交渉コミュニケーション,人間の相互理解,協調・協働的解決(【winwinウィンウィン】resolution),真の関心(real concern⇒Interest)・difference sum(異なった利益)・「場」・コンフリクトの転換・対話のプロセス
☆この講義の参考文献
名嘉憲夫,「紛争解決のモードとは何か」世界思想社2002
鈴木有香,「交渉とミディエーション」 三修社 2004
「ハーバード流交渉術」三笠書房 1989
ガルトゥング著 伊藤武彦編 奥本京子訳 「平和的手段による紛争の転換:超越法」平和文化社 2000
モートン・ドイッチ「紛争解決の心理学」,
井上孝代著 「あの人と和解する」集英社新書 2005,
井上孝代著「コンフリクトの転換」川島書店 2005
「新ハーバード流交渉術 論理と感情をどう生かすか」TBSブリタニカ2006
和田仁孝・太田勝造・阿部昌樹著「交渉と紛争処理」日本評論社 2002
紛争におけるコミュニケーション(1)
1. コンフリクトとは何か(1)
問題提起: 人は生きている限り,考えや利害,立場などの違いから生まれる“不一致状況”や”紛争“は,いたるところに見られる.
◇あなたは、誰かと諍いや衝突を感じたり起こしたとき、どんな対処をしていますか。
◇仲直りをしようとするのはどんなときですか?
◇コンフリクトにおけるコミュニケーションについて考えてみませんか。
2.コンフリクトとは何か(2)
コンフリクトの四つのレベル
◇個人の感情や精神内の対立を表すコンフリクト
◇個人と個人の間の対立を表すコンフリクト
◇集団内対立を表すコンフリクト
◇集団と集団の間でのコンフリクト
3.ワークをやってみましょう.ご自由にお書き下さい。
*人と異なる・・・何が????
人と人が異なるというとき,何を基準に私たちは判断しているのでしょうか?
多様性と個性,価値観,文化,信条,宗教.など・・・・各人の感じ方を聴き,各人で振り返る
*コンフリクトとは?
コンフリクト(意見の対立、衝突)という言葉を聞いて連想するものは何ですか?
ネガティヴ・ポジティヴ・ニュートラル⇒ワーデイングがもたらす功罪と,通常の理解について考える
3.コンフリクトとは何か(2)
〜コンフリクト(Conflict)の定義を探る〜
コンフリクトは、「紛争」と訳されるが、その言葉の意味には、日常の人間関係に生じる対立や争い、あるいは個人のなかにある感情の矛盾や対立をも含む。心理学的には伝統的に「葛藤」と訳されてきた背景がある。
コンフリクトの定義として、Deutsch(1973/1995)、Fisher(2000)や、(Galtung1998/2000)、Myers(2001),井上(2005)より、「二つ以上のゴール(目標)と行動とが両立しているか対立した相容れないものである状況である」がある。
コンフリクトとは何か。
4. 紛争スタイル分析〜1000円ゲーム
5.コンフリクト(葛藤・対立・紛争・闘争)への対応
回避Avoidance
否定Denial
順応Accommodation
攻撃・敵対Aggression/Fight
譲歩・妥協Compromise
協働・協力Collaboration
☆次回への課題 自己の経験にもとづく具体的他者とのコンフリクトを振り返って,コンフリクトとその対応について考えてみよう。
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