臨床コミュニケーション I
2007年度 第1学期
Introduction to Human Care in Practice I
□ キーワード:臨床コミュニケーション、ディスコミュニケーション、人間の相互理解、臨床知、実践知、スキル学習
□ 講義目的
1. 臨床コミュニケーションという人間活動に関する基本的な考え方について理解する。
2. さまざまなタイプの臨床コミュニケーションがもつ可能性と限界について理解する。
3. 臨床コミュニケーションに関する「知」に基づいて、日常生活におけるさまざまなコミュニケーション不全(ディスコミュニケーション)を発見し、具体的な解決方法を見いだすことができる。
□ 講義内容
コミュニケーションメディアがどのように発達しようとも、人間のコミュニケーションは対人コミュニケーションが基本にあります。臨床コミュニケーション関連授業は、この人間の基本的なコミュニケーションの様式にまつわるさまざまな事柄について、教員の変化に富んだ事例の提示と受講生どうしの共同討議により運営しています。
良好な対人コミュニケーション能力をつけるためには、まず、対人コミュニケーションについて基礎から入門することが得策です。臨床コミュニケーションIとII は、この授業グループの基礎的な入門編として位置づけられています。これら両者の間に難易度の差はなく授業の方向性が異なるだけで、どちらか1つだけの受講をしてもかまいません。
● 【授業】にもどる
第1回の授業では……
オリエンテーションとして、講義の概要おもにこのシラバスに書かれてあることを口頭で説明し、受講者に確認をとりました。)を紹介し、各教員(池田、西村さん、西川さん)とティーチング・アシスタント(樫本さん)がそれぞれ簡単な自己紹介をおこないました。受講者が想定してよりも多かった(40数名)ので、院生・学生の自己紹介は省略しました。
最後に次のような宿題を出しました。
――あなたにとって〈臨床〉とは何でしょうか?
――あなたにとって〈コミュニケーション〉の意味は?
――〈臨床〉と〈コミュニケーション〉はどのような形であなたの日常生活のなかで結びついているでしょうか?また結びついていないでしょうか? 具体的な例に即して考察してください。
その後「プレゼンテーションの技法」にまつわるミニレクチャーをおこなって定時に終了しました。
臨床コミュニケーション
臨床コミュニケーションとは、人間が社会生活をおこなうかぎり続いてゆく、ある具体的な結果を引き出すためにおこなう対人コミュニケーションのことを言います。ここで言う臨床とは、狭い専門領域としての臨床(clinic)ではなく、その現場における実践状況(human care in practice)のことをさします。臨床コミュニケーション研究において、このような脱専門領域の意識を共有することは重要です。なぜなら臨床コミュニケーションとは、専門家どうしの対話のみならず、専門家と普通の人(例えば患者など)、そして日常経験の中に生きる普通のひとどうしの対話などから成り立っているからです。
ディスコミュニケーション
コミュニケーションの不在や失敗を、私たちはディスコミュニケーションと呼びます。ディスコミュニケーションは良好ではないという点で、いちはやく「問題の発見」や「改善や治療」の必要性が叫ばれます。しかし、劣悪な関係性であれば、コミュニケーションを遮断することが最善の選択になることだってあるはずです。我々はコミュニケーションとディスコミュニケーションの様式を深く学び、それらを上手に操ることも必要なのです。良好なコミュニケーションを目指す人は、ディスコミュニケーションについての深い理解が不可欠です。
本講座では
このような「知」のあり方を自覚するために、様々な専門領域の大学院生どうしの討論をおこないます。各自が専門領域以外の者と円滑にコミュニケーションを図る能力、プレゼンテーション能力、および社会的判断力を身につけることを通して、ディスコミュニケーションを解消するための具体的なスキル学習を目指しています。
具体的には
異文化間、医療現場、紛争の現場における臨床コミュニケーションの特徴と課題を理解するとともに、参加者が自分たちの生活の場面からディスコミュニケーション事例を持ち寄り、そのプレゼンテーションと解決のための討論を通して、各領域におけるコミュニケーションの可能性と限界を明らかにします。そして、この臨床コミュニケーションの将来の課題を皆さんとともに模索してゆきます。
さらに学びたい人は
第1学期に開講されている「ディスコミュニケーションの理論と実践」、第2学期に開講する「臨床コミュニケーション II」「現場力と実践知」があります。また夏期集中講義「医療対人関係論」では、この授業のより具体的でかつ先進的なかたちで受講することができるでしょう。より少人数で、テーマを絞ったグループ討論で、学びを深めることができます。
これらの一連の授業の関連性について示したものが以下の図です。上下の軸は受講者が指向するレベルの局面を、左右の軸は受講者の解決したい問題の質を表現しているものです。受講者は、本人の関心に応じてどのような授業から入門されてもかまいません。
クリニカル・サイエンス・フォーラム(Clinical Sciences Forum, CSF)
詳しい説明はこちらへ
● 【授業】にもどる