まとめの授業・学生シンポジウム
「臨床コミュニケーションとはなにか?!」
総合司会:池田光穂
2007年7月10日(火)
■授業の手順とその進行内容
1.先週配布した「臨床コミュニケーション I まとめの授業のための次週までの宿題」にもとづき次の3点についてグループディスカッションをおこなう(当初目標30分→実際40分)。
宿題の内容は、1.あなたが理解した臨床コミュニケーションを定義してください。2.あなたが想定した臨床コミュニケーションが起こりうる典型的な場と空間について、具体的な例をあげつつ解説 しなさい。3.上記2であげた、臨床コミュニケーションの具体的な時空間において、生起しうるさまざまな「問題・トラブ ル・危険性」について、その1例を挙げて[創作してもよい]説明し、それを「解決・抑止・回避」するためにどの ようなことが必要か、記載してください、の3点についてであった。
2.いつものレポーターが、シンポジウムのパネラーになり壇上で報告する。レポーターの間でジャンケンをして、負けたグループのグループ討論司会者が、シンポジウムの司会を務めることとする。教師側からは、西村先生が登壇した。(当初目標40分→実際45分)
3.学会等のシンポジウムを模して、司会者とパネラー用にそれぞれ2本のマイクをつかい、フロアからの質問やコメントには、マイクボーイ(池田)がその場に向かう。
4.3つの課題について各グループの代表パネラーが発表し、全員の発表が終わってから、パネラー間で論戦をおこなう。
パネラー臨床コミュニケーションの定義をおこなった後には、かならずそれにふさわしい事例を報告し、抽象的な説明に具体性を付加するように配慮した。
違和感のある定義に関してはさまざまな反対意見の表明があった(例;コンピュータを介したコミュニケーションを臨床コミュニケーションと呼ぶことの疑義、身体やモノ=具体性[embodyment]の自明性の確認、コンフリクトを要件とする臨床コミュニケーションの可能性の示唆とそれに対する疑義など)
5.臨床コミュニケーションの可能性についていくつかの論点が明らかになった。議論は完全燃焼ではなかったが(その最大の時間が事前のグループ討論およびシンポジウム討論の時間の短さ――ただし、足りないぐらいの時間管理のほうが結果的にメリハリがつく場合もある)、参加者はフロアを含めて概ね満足したようであった。
■まとめのレクチャー
総合司会の池田光穂による解説をおこなった。
この授業の総括ではなく、一教師でありかつ出題者自身による「宿題への解答」を披瀝した。
詳細は別項[→リンク]に譲るが、その要約は以下のようである。
1.暫定的な臨床コミュニケーションの定義をしたが、それに関してはさまざまな例外や極端な事例があるように思われる(=暫定的定義の限界)
2.教師にとってもっとも身近な臨床コミュニケーションの現場は、今回の授業であった。そこから私が発見したことは、学生が動員、発揮した〈対話力〉であった。ここでの対話力の定義は、「おしゃべりの場」を「議論の現場」にかえる力のことである。
3.しかし、対話がもつ生産力の〈負の側面〉もなかなか侮れない。つまり対話がもつ「破壊力」についても十分に思いをはすべきである。
4.このことから臨床コミュニケーションは、そのような力の操作のことではないかという着想がつくはずである。つまり、臨床コミュニケーションとは、対話力を介して現象に介入し、状況を創っていく技法[=知と実践が癒合したもの]そのものではないか。
5.ここに至って4.で新しい臨床コミュニケーションの定義が生まれたので、1.の暫定的定義は放棄された。
クレジット:2007年7月10日(火) 臨床コミュニケーション I 担当:池田光穂
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