クニリカル・サイエンス・フォーラム
Clinical Sciences Forum, CSF
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解説:池田光穂
臨床研究を主たる方法論とする学際研究をまとめて臨床研究ないしは臨床諸研究 (clinical sciences)と呼んでみよう。
臨床研究の王道は、臨床医学(clinical medicine)である。しかし、近代医療研究はかつて一度は病院の臨床研究から離れて、研究室の医学になった経緯がある。今日、生物医学 (biomedicine)と呼ばれている態勢がそうである。
他方で、臨床医学は依然として、医学教育の根幹なすものである。また、かつては臨床家としての医師と患者との関係(doctor- patient relations)が、今日では看護師や隣接する臨床医学関連の専門家との共同でおこなわれるようになり、また患者の概念も患者のアイデンティティの多 重性・複数性を軸に、臨床の現場はさまざまな個性(アイデンティティ)が交錯する場になっている。
また、臨床心理師(clinical psychologist)の活動に代表されるように、それらの専門家が考慮すべき臨床の領域は、心理相談の現場だけでなく、法制度や社会制度のみなら ず、文化という環境をも含むものになっている。
さらには、臨床哲学や臨床社会学の発展のように、臨床の概念は、これまでの理論〈対〉応用という二分法を超えた、社会参画や実践の必要性を訴え るようになった。
このような状況のなかで、いま我々に求められているのは、古典的な臨床医学概念に先祖返り厳密なる臨床という空間の領域を墨守することでも、臨 床の概念を無秩序に拡張する社会運動でもない。
まず、ひとつには、臨床という概念が、それぞれの領域のなかでどのように使われているのかに関する冷静な反省的分析であり、他のひとつには、そ れぞれの臨床科学の従事しているひとたちのオープンマインドな交流である。
そこでは、新学際領域をつくりあげてその名のもとに旧来の専門領域を延命させる必要もなく、また実行できそうもないユートピア的プランをでっち あげて聴衆に目くらましの言説を弄する必要もない。
第一に、それぞれの分野が自明視している、臨床の概念の他分野との交流を通しての認識論的相対化をまず手始めにおこなうことである。
そのような情報交流の場をクリニカル・サイエンス・フォーラムと呼んでおこう。なお、外来語ではサイエンスの単複を区別しないが、英語表記は諸 科学になっていることに注意していただきたい。クリニカル・サイエンシーズ(複数)を、クリニカル・サイエンス(単数)にすることが目的ではなく、複数の 科学の相互交流が重要なのである。
現場力研究会
現場力研究会(げんばりょく・けんきゅうかい)は、大阪大学コミュニケーションデザインセンター(CSCD)の臨床コミュニケーショ ンチームが中心になり、さまざまな対人コミュニケーションが生まれる「現場」(げんば)というものの具体的な諸相に光をあて、看護 学、人類学、臨床哲学、演劇プロデュースなどの諸学問の学際的観点から研究している団体です。
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