裁判をめぐるコミュニケーション(2)
中西 淑美
2007年6月26日(火)
*講義目的
・紛争・対立・葛藤・トラブル・諍いと表現されるコンフリクトの解決方法として,裁判(訴訟)がある.裁判のしくみを理解してみよう.
・コンフリクトの解決について「謝罪」をキーワードに現行の裁判や法制度から概観する.
・妥協点を調整するのではなく,両者が不満や不信感を残さない,新しい紛争解決を場や過程(プロセス)から創造的に模索する方法を紹介する.
*講義内容
「謝罪」,紛争解決としての裁判制度,ADR(裁判外紛争処理)とは(6月26日)
・クレームトラブルにおける謝罪と,その謝罪の源泉としての「問い」
・ 謝罪の状況から考える謝罪の種類と段階(和田仁孝「医療紛争と謝罪」参照)
表現としての謝罪(導入)→機能としての謝罪(展開過程)→内容としての謝罪(過程と帰結)
第一段階: 導入=表現としての受容謝罪(いつ,だれ,何に向けての謝罪なのか)
謝罪行為とは,謝罪受容と謝罪成立のための受け手の応答
第二段階:展開過程=機能としての2つの謝罪(プロセスとしての謝罪)
*共感と示すこと(共感表明)としての謝罪
*責任を認めること(責任承認)としての謝罪
第三段階:内容としての謝罪(プロセスがもたらす帰結としての謝罪)
単純な謝罪表現としての行為を超えたプロセスがもたらす謝罪
・法の力,法律とは何か,法律による正義と「罪」〜現行の裁判制度から
因果関係(自然因果関係と法的因果関係)による過失論
・法廷での対話(コミュニケーション)の限界
・ 裁判制度と裁判外紛争処理について
* ADRとは何か
* ADRの種類
* ADRの規範性と第三者関与度と合意性
*配付資料
・中西淑美「裁判におけるコミュニケーション」(PowePointと文献)ハンドアウト資料
*文献
・小林英明 『イラストと事例でわかる裁判のしくみ』かんき出版,2003
・井上正三・高橋宏志・井上治典編『対話型審理』信山社,1996
・和田仁孝・太田勝造・阿部昌樹編 『交渉と紛争処理』,2002
・和田仁孝 「法廷における法的言説と日常的言説の交錯――医療過誤をめぐる言説の構造とアレゴリー」,棚瀬孝雄編『法の言説分析』ミネルヴァ書房2001所収。
・ 和田仁孝 『医療紛争と謝罪』医療安全,No.11.3.2007
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