クリニカルパス
Clinical Pathway, Clinical Process Map
解説:池田光穂
クリニカルパス、あるいはクリニカル・パスとは、病院や治療現場における患者を、工場における生産現場における品質管理のプロセスとみたてて、 医療を高品質の治療と看護の現場にするための具体的なプロセスマップ(作業表)のことである。
クリニカルパスという用語は、1950年代の化学会社DuPointやユニバックで知られたコンピュータ会社Remington Randが採用した、クリティカル・パス・メソッド(CPM)やクリティカル・パス分析という用語の言葉遊び(地口)から作り出されたものである。した がってクリニカルパスをジャーゴンとするのではなく、常識的に考えて、その意味を正しく汲んで「臨床プロセスマップ」と呼び慣わすほうが適切である。ある いは素直に「臨床の経路」ないしは「臨床の最適経路」と名付けることもできたはずである。
クリニカルパスのような用語と思想が、看護の領域における適用されるとそれは、ケア・パスウェイすなわち「看護の経路」あるいは「看護の最適経 路」という名称で、類似の工程表をつくることができる。
このようなクリティカルパスの医療・看護・福祉版は、高度にシステム化された労働現場ではよくみられる現象である。
クリニカルパス思想がもたらす重要な利点は、高品質の医療を低い危険度で提供するための最適なプロセスを現場の経営学的分析から構築できること であり、また、一定のマニュアル化が可能なので、新人はその経路に沿っていち早く馴染むことができる。他方、クリニカルパス思想に対する最大の批判は、医 療・看護・福祉の現場は、工場のような工業製品をつくだす場所ではなく、さまざまな背景をもった患者が集積する現場であり、処理しなければならない情報量 と経路の複雑性は格段に異なるということで、この方法では現実には処理できないというものである。
クリニカルパスには明らかに限界があるにも関わらず、臨床の現場ではそれが採用されつつあるのは、クリニカルパス思想が導入される前までは、臨 床の現場を品質管理という点から見て、それを改善しようとする組織管理のメカニズムがほとんどなかったか、それほど体系化されてこなかったからである。ク リニカルパスの思想がアメリカ合州国からやってきたことからもわかるように、それが経営の管理原則に収斂することに心血が注がれていることは明らかであ る。
閑話休題
複線径路・等至性モデル(Trajectory Equifinality Model, TEM)と
は、サトウ・安田・木戸・田・ヴァルシナー
(2006)が提唱した、限られた事例から一般化したモデルをつくるときに、非可逆時間の経緯のなかで、分岐点(=その時点での経路が変わるポイント)と
等至点(とうしてん:=異なった経路だが結果的に同じオプションに帰着する事後的な合致点)の組み合わせで、(実際におこったものと/起こりえたかもしれ
ない)現象を同等に取り扱う方法である。
【文献】
Critical Path Method in Wikipedia
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