あなたには愛というものがわからない
you don't know what love is...
Billie Holiday and legendary saxophonist Coleman Hawkins, from Legacy Recordings
楽団のギタリストでビリー・ホリディの父親であったクラレンス・ホリディはドン・レッドマン楽団のメンバーとしてアメリカ南部を巡業している 時に風邪をこじらせ、その後の肺炎によってテキサス州ダラスで一九三七年三月一日に死亡した、と言われている。彼女が二二歳の時であった。二年後、ビリー は作曲家ソニー・ホワイトや編曲家ダニー・メンデルスゾーンの協力を得て、南部の黒人がリンチされ、死体が木につるされた恐ろしい情景を表現したルイス・ アラン(本名:エイベル・ミーアポル、通常言われるアレンはミススペルに由来する誤り)の詩をもの悲しく唄う名曲「奇妙な果実」をコモドア・レコードに録 音し、大ヒットすることになる(1)。
→(1)これらのエピソードは、ウィリアム・ダフティとの共著によって書かれたビリー・ホリディの自伝『レディはブルースを歌う』一九五六 年(邦訳は油井正一と大橋巨泉による『黒い肌』清和書院、一九五七年刊、のちに同じ訳者たちによる『奇妙な果実』晶文社、一九七一年、一九九八年改訂版、 がある)ならびに、「奇妙な果実」が収録されているCDレコード Billie Holiday, Strange Fruit. Commodore UCCU-5009 ならびに Billie Holiday, Billie Holiday: Twelve of her greatest interpretations. Commodore UCCC-3008 (ユニバーサルミュージック, MCA)の日本語版解説を参照にした。この録音に関するさらに詳しい歴史的検証は、マーゴリック[二〇〇三]が参考になるが、註(9)で述べるように、こ れは現代の「神話」とも言える問題を含んだものであり史実が醸し出すアウラ性(註(6)を参照)には警戒を要する。
→(6)文中の「気散じ」ならびに「アウラ」はすべて ベンヤミン[一九九五]による表象芸術の比較社会論の議論に負うている。ユージン・ スミスの写真 は、耽美的表現を追求するあまりコンテクストが醸し出すアウラ性を、写真の鑑賞者が得るための、その手がかりを失うという的確な批判をティスロン[一九九九:六八−六 九頁]は展開している。
リンク
文献
■クレジット:「あなたには愛というものがわからない」水俣が私に出会ったとき(部分) ——社会的関与と視覚表象—— 池田光穂
◆オンライン文献
熊本日日新聞「『智子を休ませてあげたい』故ユージン・スミス氏撮影『入浴する母子像』封印」(二〇〇〇年二月二八日朝刊)(http: //www.kumanichi.co.jp/minamata/nenpyou/m-kiji20000228.html)二〇〇五年一月一一日[最終 確認日]
【ご注意】
この論文の出典は、池田光穂、『水俣からの想像力:問い続ける水俣病』丸山定巳・田口宏昭・田中雄次編、熊本出版文化会館(担当箇所:「水俣が 私に出会ったとき:社会的関与と視覚表象」Pp.123-146 )、2005年3月です。引用される場合は原著に当たって確認されることをお勧めします。