植民国家
settler state
解説:池田光穂
植民国家あるいは殖民国家(settler state)とは開拓移民国家ともいい、国家主権や領土を確立する際に、先にそこに存在していた人々 すなわち先住民を、排他的にあるいは包摂する形で、成立が保証される国家のこ と。植民国家建設のためには、その統治領域空間(国土、植民地、帝国領内)における「植民・殖民による植民地主義」(settler colonialism:→殖民・植民地主義)という考え方とそれを支える殖民技術および殖民 技法というものが確立あるいは、開発途上にある必要があり、このことは歴史上の植民国家の成立にもみることができる。この定義によると、近代の国家形 態の成立経緯は、ほとんどこの植民国家としての性格をもつことになる。
「地
政学は、ナチスドイツのように、国民国家が全体主義を通して、復古主義的な装い(=擬古主義)をもって帝国を目指した時に、植民行為を正当化するために、
重要な御用学問になった。大日本帝国末期における、大東亜共栄圏のような概念も、地政学的概念にもとづいている。その時に問題になったのは、広大な領土に
おいて、1)多民族にまたがる支配を「帝国臣民」の概念で包摂できるのかという問題、2)多文化・多民族を横断する文化の創造と、象徴システムをつかった
文化的統合の課題、3)「帝
国臣民」の概念で包摂するという理想をもつにも関わらず、現場では異民族対立や異文化対立がしばしばおこり、その間の紛争の調停をどのようにするかという
問題を抱えることになった。しかしながら、後発帝国のジレンマとして、例えば大東亜共栄圏内では、それまでの支配帝国(インドシナにおけるフランス、イン
ドネシアにおけるオランダ、フィリピンにおける米国)を排除して、自分たちが支配の位置を占めるに至ったが、粗暴な軍事的な侵攻ゆえに獲得したために、先
行する帝国の統治メカニズムから学ぶことがすくなく、また支配民族の優越思想が、そのような統治術について学ばなかったという陥穽を指摘することができ
る」(→「地政学」「入植植民地主義」)
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