ドゥクン(dukun)
中部ジャワにおける二重の意味
ドゥクン(dukun)とは、インドネシア・マレー系の伝統的治療師のことである(→医 療人類学辞典)。
■ドゥクン:中部ジャワにおける二重の意味
「彼は、自分はドゥクンではなくpitulung であるという(私はこれまで彼が自分のことをそう表現するまでこの用語を聞いたことがなかった;誰にとってもこの男はdukunだった)。
私は彼にどんな違いがあるのかについて聞いてみた。
彼はドゥクンは金を取り、ピトゥルングはそうでないと言った。つまり、後者は人々を助けるのだと。
彼は自分はいつも助けられるのではないと言い、時に助け時に助けられないという。
もし彼の言うことが確かとしたら「私は君を治すことができる」時には、そこには2つの神がいることになる。……彼は3つの卵に呪文をかける ことを認めているにもかかわらず……そして平癒した患者から贈り物を得ているにもかかわらず、彼はただひたすらに神に懇願しているだけなのだ」
■ドゥクンと彼の患者のあいだの心理的関係
「ドゥクンたちに対して、多くの人たちがみせる両義的な態度があるが、それは、ドゥクンと彼の患者のあいだの心理的関係についていくつかの まとまった要因を指摘することができる。
第1に……治療の結果についての不確実性……第2にドゥクンの地位は彼の患者の個人的生活に巻き込まれていることがあるということ、……そ して最後にドゥクンの力が本来もっている両義性である。
その知からはドゥクンが神と悪魔の両方に取引することに由来する。〈誰かをドゥクンにかける〉という意味のンドゥクニ(ndukuni)と いう言葉は、人の病気を治療すると同時に、人に邪術をかけるという2つの意味があるからだ……。
ドゥクンを言い換える時によく使うtijang sepuh という言葉があるが、これは(発話において尊敬を込めていう)「両親」のことを意味する」(ギアーツの 『ジャワの宗教』よりただし引用は Boom 2005:35)。
文献
Boom, James A., 2005. Geertz's Style: A moral matter. In "Clifford Geertz by his colleagues," R.A. Shweder and Byron Good. Chicago: The University of Chicago Press.
「仮想・医療人類学・辞典」(池 田光穂提供)
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