ホリスティック医療運動
Holisitic Medical Movement, HMM
解説:池田光穂
ホリスティック医療運動(holistic medical movement)とは、現代医学のもつ生物医学的理念的枠組み——心と身体を二分する考え方からしばしば「デカルト的医療(Cartesian medicine)」とも見なされる——を批判し、デカルト主義のような要素還元主義(reductionism)的アプローチとは正反対の、心と身体の 均衡や調和、さらには動態(ダイナミズム)に配慮する全体論的(holistic)——政治学における全体主義ではないことに注意——なアプローチをとる 医療をめざす運動をさす。具体的には、代替補完医療(Complimentary and Alternative Medicine, CAM)——つまり伝統的医療、非西洋的医療、瞑想や養生法の採用など——を優先したり、生物医療の専門家のみを、医療を供給する人材とみなさずに、日常 生活の中からも健康をめざす運動。ただし、それぞれの運動には、流儀や主義が多様で、お互いに反目したり、競争したり、逆に連携したり、あるいは棲み分け をしたり、その各派の動きは複雑である。
サリー・ガットマッカー[1979]は、ホリスティック医療運動の特徴として、人々の健康の文化的社会的要因についてはそれほど危惧しないの
に、生物医療の技術や思想については、健康についてより問題があると考える傾向が指摘されている。さらに彼女は、この運動が、健康と病気の個人主義化をす
すめ、医療化(medicalization)の促進と、個人が生物
医療の外部で代替補完医療に関わることで、生物医療に関与する国家財政の支出の軽減にも貢献する可能性を示唆している。
文献
附論
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