『レナードの朝』をめぐる議論
Why do I
think that Oliver Sacks' "Awakenings" is one of the most important
books for all students of medical school?
レナードの朝 1990年
原作:オリバー・サックス(Oliver Sacks)神経内科医
レナード L(仮名:)1920-1981
パーキンソン病・症候群
嗜眠性昏睡(しみんせい・こんすい)
ドーパミン(ドパミン)神経伝達物質
ドーパミンの前駆物質=L-DOPA
___________________
病者の身体感覚・身体観
患者と医師
1969年 マルコム・セイヤー医師(サックスのモデル)【→「レナードの 朝:(映画)ストーリー参照」】
「原因不明の痴呆症患者」ルーシー
反射行動と意図的行動::映画のなかにある、車いすの座って硬直しているレナードに対してボールをなげると「俊敏にキャッチする」行動は、矛盾 性運動(キネジア・パラドクサ)と言われてきたものらしい(サックス 2015:215)。
「非定型〜〜」という診断と「定型」
嗜眠性脳炎:
A型脳炎type A encephalitis,エコノモ型脳炎(病)Economo's encephalitis(disease) 第一次世界大戦中,およびその後10年ぐらいの期間に,インフルエンザの流行中に本症の発生がみられた.臨床的および病理学的所見はウイルス感染に合致す るが,起炎ウイルスは一度も検出されたことはない.著しい嗜眠傾向があるが,麻痺,知覚障害,痙攣などの症状はないのが特徴である.20%の死亡率で,生 存者には後遺症として高率にパーキンソン病の症状が出た.1930年以降の発生の報告はほとんどない(Constantin Alexander von Economoはオーストリアの神経科医,1876‐1931)『南山堂医学大事典18版』
====ウィキペディア『レナードの朝』の記述=====
『レナードの朝』(レナードのあさ、Awakenings) は、医師・オリバー・サックス著作の医療ノンフィクション。また、そのノンフィクションを基にした舞台作品、映画作品。マウント・カーメル病院に入院して いた嗜眠性脳炎(英語版)の20名に、1960年代に開発されたパーキンソン病向けの新薬L-ドーパを投与し、覚醒させたが、耐性により効果が薄れていっ た状況を記述している。
===========================
「脳が機能を失う」→何も考えてない(はずだ)という先輩医師たちの信念
・外界からの特定の刺激に反応(個人差=個体差)
「他人の意思を借りて歩く」
・病院長の許可条件:治験対象者は1名、親族の同意が必要
・L-DOPA その後、塩酸アマンタジンの処方
・セイヤーの推論:
(1)パーキンソン病の症状が「進行」した時の状態が、嗜眠性脳炎の後遺症患者と同じでは?と考える
(2)パーキンソン病の患者の治療に(中脳黒質の変性=ドーパミン系の欠如)、L-DOPAを使う
(3)嗜眠性脳炎の後遺症患者に、L-DOPAを使えると効くのでは?
・セイヤーの実験
(1)L-DOPAの規定の処方 → 効かない
(2)オレンジジュースとの混合処方で効かなかったのでは? → 混合処方をやめる
(3)投与量の増加:最大5グラム/日
======
・嗜眠性脳炎後遺症患者:外見が加齢しない、(本人の)加齢意識の欠損、時間進行の消失
・「眠っている、または死んでいる」(講演会でのセイヤー)
・現実のレナード:投与開始後1ヶ月後には性欲昂進(映画ではマイルドに表現)
・L-DOPAに対する耐性のはじまり。
・レナードの行動の変容を薬が効果を失ったと解釈するセイヤー
・耐性後の症状:チックの悪化、動作の突然の中途停止:投与量を増加しても症状の改善がなくなる。
・レナードが前の症状に戻ってから(治療を中止して以降)映像をみて回想にふけるセイヤー
========
【グループワークの課題】
(1)セイヤー医師の行動から、我々が学ぶべきこと、あるいは(その批判を通して)学んではいけないこと。
(2)レナードの内的世界や感覚を、この映画をとおして、何がわかるか、わからないか、について考える。
(3)課題以外に気づいたこと、他のグループのメンバーにも共有したいことなどについて指摘する。
====
(1)やまおか(グループ名)
・気づいたこと:病気は社会全体に対してなりたつ(患者、医師、家族、などなど社会に広がる)
・母親と子供の依存関係があるのでは?(「息子は変わりつつある」という母、息子に依存する母親)
・レナードの外出要求とセイヤーの答え:理性的にはNO、感情的にはイエス)
・学ぶべきことなど:研究から臨床へ、些細な変化に気づく、注意深く観察すること。夜中の電話への対応すごい!! 副作用がわからない状態 で投与し続けるのはいかがなものか?(臨床医と研究医=薬剤医の違いがある)、投与量の試行錯誤しかしアバウトすぎる!
・レナードの内的世界:症状の記録をとれとセイヤーに要求すること:自己犠牲、みんなのため?→生きることはすばらしい、記録として残した い。
(2)イサクコーシロー(グループ名)
・1番:治らないといわれる患者に熱意、あきらめないこと、優しさ、研究者の視点で現場を見る。空気を読む、気遣いができる。ひとをみる。 人間味がある:::治療段階なのに外出させた、患者のいうことを聴きすぎ。いきあたりばったり。
・2番:散歩のシーン、治療段階なのにだめなのに、レナードはわかっていないのでは?
・3番:レナードはモテモテ、演技最高!、健康の人が病気を演じることはど〜なの?、医師は眼鏡をもっている、なんで?、セイヤーも患者か ら学ぶことはたくさんある。レナードの自己犠牲は感動できる。
(3)タマタマ(グループ名)
・1:レナードだけに感情移入しすぎでは? 研究から臨床へ:実験台としてみてしまった。ただ、その後の行動はみならう点もある。Lドーパ の導入の姿勢などは学ぶべきこと。医師としてひげを剃れ!
・2:病者の葛藤のシーン:意思がつよい。
・3:レナードの目覚め、暴れた後に実験台になる(セイヤーとの友情の暖かさ)
(4)パイロット(グループ名)
■クレジット:池田光穂「『レナードの朝』をめぐる議論」2009年8月29日高知 大学医学部授業「医療人類学」における授業討論の 記録
■文献
■その他の情報
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099