医療人類学:高知大学2009
Introduction to Medical Anthropology in Okoh Campus, Kochi University, 2009
平成21年度シラバス(授業計画)
1. 授業題目 (履修期間 時間割)(必須)
医療人類学( 1学期 集中授業 )
8月27日(木) |
08:50-10:20 -- |
10:30-12:00 -- |
【昼休】 |
13:10-14:40 1 |
14:50-16:20 2 |
16:30-18:00 3 |
8月28日(金) |
4 |
5 |
【昼休】 |
6 |
7 |
8 |
8月29日(土) |
9 |
10 |
【昼休】 |
11 |
12 |
13 |
8月30日(日) |
14 |
15 |
【昼休】 |
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用語法:生物医学、社会医学、医療人類学(→人類学的医療)
2. 資格等:必要ありません。
3. 副題
Medical Anthropology
4. 担当教官名(必須)
池田 光穂 講師(非常勤講師)
5. 所属
大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
6. 電話番号
非公開
7. E-Mail
8. 履修希望学生に求めるもの(必須)
授業に集中でき(そのため授業中の私語とパソコンへのアクセスは禁止)他の受講生と協調精神をもって課題に積極的に取り組める受講生を歓迎 します。
9. 備考
10. オフィスアワー
非常勤講師のため特に設けず 、講義期間中にはリクエストに応じて対応します。
11. 学生相談場所
非常勤講師のため特に設けず 、講義期間中にはリクエストに応じて対応します。
12. キーワード(必須)
13. 授業テーマと目的(必須)
この授業は、医療人類学の面白さを受講生に理解してもらい、この学問を修めることがいかに有意義であるかをご紹介します。またこの学問の学 習と実践を通して、皆さんにもっとも身近な問題である医療の実践的課題に答えようとします。 医療人類学について聞きかじったことのある学生、この学問の 名を全く知らなかったけれども、がんばって勉強に取り組みたいと思う学生、そして楽してサバイバルの技を身に付けたい、ちょっとものぐさな学生にも是非受 講されることをお奨めします。 授業はレクチャー(講義)と質疑応答、および討論からなります。ものおじせずに発言し、他者と協調精神をもって課題に積極 的に取り組める受講生を歓迎します。
14. 授業計画(必須)
全授業コマの構成は以下のようになっています。文中のレッスン(Lesson)の数字は指定された教科書の章に対応しています。
8月27日(木) | 08:50-10:20
-- |
10:30-12:00
-- |
昼休 | 13:10-14:40
1:人間と病気 「文明のはじまり」50mim[→リンク] |
14:50-16:20
2:レクチャー:医療人類学入門 レッスン7・10・1・2・8を中心に |
16:30-18:00
3:疾病交換 「二つの世界の衝突」50min[→リンク] |
8月28日(金) | 4:現代の感染症問題
「アフリカへの旅」 |
5:レクチャー:みんなの好きな呪術の問題
「呪いで人は殺せるのか?」 レッスン3・4・5を中心に |
昼休 | 6:高齢者について考える:ベイルイマン監督『野いちご』1957
解説(レクチャー)・討論・プレゼン [→リンク] |
7:高齢者について考える:ベイルイマン『野いちご』1957
解説(レクチャー)・討論・プレゼン [→リンク] |
8:高齢者について考える:ベイルイマン『野いちご』1957
解説(レクチャー)・討論・プレゼン [→リンク] |
8月29日(土) | 9:高齢者政策について考える:北久保弘之監督『老人Z』1991 | 10:高齢者政策について考える:北久保弘之監督『老人Z』1991 | 昼休 | 11:医療的身体について考える:ベニー・マーシャル監督『レナードの朝』1990
解説(レクチャー)・討論・プレゼン[→リンク] |
12:医療的身体について考える:ベニー・マーシャル監督『レナードの朝』1990
解説(レクチャー)・討論・プレゼン[→リンク] |
13:医療的身体について考える:ベニー・マーシャル監督『レナードの朝』1990
解説(レクチャー)・討論・プレゼン[→リンク] |
8月30日(日) | 14:まとめの授業 | 15:試験 | 昼休 | -- | -- | -- |
グループワークのまとめ
本講義で論じられなかったが、重要な観点
1) 上述の図における【患者】=【社会】=【文化】の構成における、心理学・行動科学の位置づけに関する解説 → 私は臨床医学・行動科学・医療人類学の3つ の領域の相互の協力による、新しい医学(教育)が必要だと考えている。
2) コミュニケーション・パターンに関する文化差や歴史的変遷に関する研究 → このことに関して、医学も進化するが、患者の行動パターンも変化することをま なぶ必要性が生じる(だが、そのようなことを教える学問は意外に少ない)
3) 知識は教科書、図書館、ネットワークを経由していくらでも手に入る。容易に手に入らないが、しかし必要なものは、個々人の行動パターンや本人の思考プロセ ス。後者には固有の方法論があるが、長い時間の試行錯誤プロセスが欠かせない。
2. 資格等:必要ありません。:
<授業内容>
1. イントロダクション・はじまりのワーク
身近な題材を提示しながら、医療人類学とは何かについて考えます。医療とはなにか、人類学(=文化人類学)とはなにかということが明らか にされ、さらに医療(保健、ヘルス)を対象とする人類学的研究が現代社会にもたらす意義について考えます。
2. リプロダクション: 「産むこと」は単純ではないのか?(Lesson 7):教科書の章に相当[以下同様]
人間社会が世代を超えて存続するためには出産=再生産は不可欠です。しかしながら他の生物とは異なり人間社会には、出産に関する知識や実践 が高度に社会化・文化化されていることが特徴です。出産は、生物学的事実でありますが、それ以上に社会的事実であることを確認します。
3. 心と社会:狂気をどのように捉えればよいのか?(Lesson 10)
西欧近代精神医学者の非西洋社会の〈狂気〉への関心は、やがて文化結合症候群に関する膨大な病気のラベルとその症状記載に溢れることに結実 しました。しかし神経伝達物質説や脳の代謝のイメージングの技術が、精神症状の文化的多様性への関心を衰退させ、その伝統を放棄しようとしています。心と 社会のありようの現在を非西洋世界を眺める精神医学の観点から考えます。
4. 医療人類学の可能性:健康の未来とは何か?(Lesson 1)
最初のまとめをここでおこないます。これまで、その学問が扱う素材とその検討方法から医療人類学とはなにかということを考えてきました。医 療人類学という科学が生み出した豊饒な理論装置のいくつかについて検討を加えます。医療人類学についての暫定的だが強いイメージを抱くことが期待されま す。
5. 病気と文化:人間の医療とはなにか?(Lesson 2)
人間が生物の一員である限り他の生物の疾患と共通する普遍的現象をもつことは明らかです。しかし、人間がかかる多くの病気は人獣感染症に由 来します。人獣感染症は農耕の定着以降の人間と家畜との共存によりうまれてきたものですが、さらに人間の集住により中間宿主としての家畜を媒介にしない感 染様式を進化させました。さらに健康転換(Lesson 11参照)など新しい病気への人類社会の対応などについて検討します。
6. 女性の身体:身体は所与のものか?(Lesson 8)
ふたたび〈産む主体〉としての女性について考えます。しかしここでは、人間の身体に関するジェンダー的構成が、文化を媒介にしてどのように 編成されるのかを学びます。女性の身体についての文化的拘束性とそこからの抵抗と解放の可能性を、インドの社会を例にとってえます。
7. 呪術:理不尽な闇あるいはリアリティか?(Lesson 3)
呪術を信じないと公言する人の行動を詳細に観察しても人は〈呪術的世界〉を無視して生きることはできません。世界を理性と非理性に分けて、 呪術を後者の世界の出来事だけのことであると考えることは愚かなことです。呪術的な思考が人間にとってそれほど特異なものではないことを明らかにします。
8. 憑依:病める身体は誰のものか?(Lesson 4)
憑依現象の存在は、身体の固有性を信じてやまない近代的主体の概念に対して以下のような挑戦をつきつけます。こころは、からだの主であるの か? 私のからだは唯一独自な存在なのか? 今日の私と昨日の私ははたして同じものなのか?そして私(心と体)とは何ものか?ということです。
9. シャーマニズム:シャーマンは風変わりな医者か?(Lesson 5)
シャーマンは非西洋社会で働く医療人類学者にとってつねに気になる存在であり、また現地のシャーマニズム的治療システムに心を動かされない ものはいません。シャーマンは何によって病気治療が成功するのでしょうか? そしてどうして現地の人びとから尊敬を受けたり、また逆に迫害されたりするの でしょうか? シャーマンと医療者には多くの類似点があ りますが、同時に決定的に異なる点もあります。これらの比較をとおして医療行為の本質に迫りま す。
10. グローバル化する近代医療:医療は帝国的権力か?(Lesson 6)
近代医療の拡張が成功した時代とは、西洋列強の国家は世界の周縁部に多くの植民地を抱えており、またそれらの争奪戦に明け暮れていました。 戦線の後背地での軍陣医学において、また新しく征服された植民地とその住民への公衆衛生活動において、医療の有効性は多角的にチェックされました。帝国医 療という分析の視座は、このような制度が近代医療にどのような革新をもたらしたのかを明らかにします。
11. エイジングと文化:老いはどのように捉えられているか?(Lesson 9)
人間には(もちろん動物にも)かならず死が訪れます。感染症や事故あるいは戦闘行為などで死なない限り、老化はかならず訪れます。老年をど のようにとらえ、老人をどのように扱 うのか(もちろん老年や老人の定義もまた!)は歴史、文化、社会によって多様でありかつ永遠に続くものではなく大 きく変化するものであると言われています。老人と老年の多様性について考えます。
12. 今日における健康問題:なぜある人びとは病気にかからないのか?(Lesson 11)
医療人類学の使命のひとつに、なぜある人は病気にかかり、なぜある人はそうでないかということについて誰にでも明白な形で証明することがで きるということがあります。みなさんのこれまでの学習を通してそのような答えに自分なりの回答を出せることができるかが重要になります。
13. まとめの授業
受講学生がどれだけ理解したのか、そのことについて質疑応答を通して整理します。
14. まとめの授業
受講学生がどれだけ理解したのか、そのことについてミニテスト等を通して整理します。
15. まとめの授業質疑応答を中心に授業の全体をふり返ります。
15. 相互参観授業公開日程(新項目)
● 公開する ○ 公開しない
● 全て公開する
コメント 原則として全て公開ですが希望の方は事前に照会ください。実施側の事由により承諾しかねることもありますのでご了承ください。
16. 達成目標(達成水準)(必須)
1.医療人類学についての必要かつ最小限の知識と実践を習得する。
2.学んだ医療人類学の知識と思考法によって、身の回りにおこっている文化と社会に関わる諸問題を発見する。
3.諸問題の解決や解消に向かって、具体的な方策を立てそれを実践することができる。あるいは、未来において生じうる問題や困難を予測し、 それを回避しつつ、当初の目的を敢行することができる。
17. 授業時間外の学習(必須)
予習復習は「Webテキスト」に挙げられているリンクから行って下さい。また授業中に有益なリンク情報を提示します
18. 関連科目名,関連科目コード番号
19. 教科書・参考書(必須)
(教科書)
※授業ならびに試験を含むレポート作成に不可欠ですので受講生はかならず授業までに入手してください。複写は著作権法に定められた限りのも ので、教科書の代替物のための大部の複写は容認されません。
(参考書)
池田光穂『実践の医療人類学一中央アメリカ・ヘルスケアシステムにおける医療の地政学 的展開』世界思想社、2001年。
医療人類学研究会編『文化としての医療』メディカ出版、1992年。
近藤英俊他『現代医療の民族誌』明石書店、204年。
ジョーダン.B『助産の文化人類学』日本看護協会、2001年。
マッケロイ、A.とP.タウンゼント『医療人類学』大修館書店、1995年。
波平恵美子『医療人類学入門』朝日新聞社、1994年。吉田正紀『民俗医療の人類学』古今書院、2000年。
※参考書は入手する必要はありませんが、予習復習時には不可欠な資料です。図書館等でチェックしておいてください。
(4つのテキスト群)
4つのテキスト群うえぶ
・池田・奥野編『医療人類学のレッスン』(教科書)
・ J・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』
・ E・エリクソン他『老年期』(→「野いちご」関連論文)
・ O・サックス『レナードの朝』
20. Web テキスト
◎医療人類学プロジェクトhttp://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/medanth.html
◎医療人類学入門1997http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/ima-all.html
上記のウェブページからリンクするページ
ベイルイマン『野いちご』(1957)[読解ならぬ]視解[→学生向け資料]
レナード・L (1920-1981)の記録[→学生向け資料]
老人ゼット[→学生向け資料]
21. 成績評価の基準と方法(必須)
8割以上の出席をもって最終試験の受験資格とします。配点は授業中に課されるさまざまなテストや試練による平常点(全体の3割)と、授業に おける質疑やコメントの評価点(3割)、ならびに最終試験の点(4割)。以上の総合点により成績評価の判定をします。 追試等は原則として実施しませんのでご注意ください。
22. パソコン必要度
● 3. 必要
● 3-2. 授業時間外学習に必要( ○ a. 1−2回程度必要 ○ b. 3−5回程度必要 ○ c. 半分程度の回で必要 ○ d. ほとんど毎回のように必要
● e. 毎回必要)
コメント
授業中は不可、時間外の利用は必須(下記のコメントを参照) 授業中におけるウェブページへのアクセスは講義内容を聞く態度にとってマイナスになるので禁止します。しかし授業時間外の学習(予習、復習、発展学習)に は不可欠であり、大いに活用されることを推奨します。
[試験問題2009]
この授業を通して、あなたがもっとも関心をもったテーマについてひとつあげ、その具体的な記述をおこない、かつそれについて理論的に説明し てください。(試験時間60分)
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