はじめによんでください
ナショジオ版(2004, 2007)ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』解説
On Diamond's "Guns, Germs and Steel"
第1話 文明のはじまり
600万年〜450万年前 人類アフリカで誕生
175万年 アジア大陸進出
2万年 アメリカ大陸進出
8500年前 肥沃な三日月地帯で、小麦、大麦、オリーブの栽培がはじまる
8000年前 三日月地帯(羊、豚、山羊);中国(米、粟、こうりゃん、豚):ニューギニア(サトウキビ、バナナ)
7000年前 インダス川流域(小麦、大麦、胡麻)
6000年前 三日月地帯とインドで、牛の家畜化が開始。エジプトで、小麦、大麦、エジプト無花果の栽培はじまる
3500年前〜6000年前 ヨーロッパで、小麦、大麦、エン麦、芥子の栽培がはじまる
5000年前 アフリカ・サヘルで農耕の開始
4000年前 ウクライナで馬の家畜化。エジプトでロバ、中国で水牛の家畜化開始
3500年前 メソアメリカでトウモロコシ、カボチャの栽培はじまる。アンデスで、ジャガイモ栽培、アルパカの順化はじまる(リャマ)、アマゾ ンでキャッサバ農耕はじまる。
3000年前 熱帯アフリカで農耕はじまる
2500年前 中央アジアでフタコブ駱駝の家畜化。アラビア半島でヒトコブ駱駝の家畜化
農耕のはじまり
・中東の肥沃な三日月地帯(小麦・羊)
・作物の誕生:育種、種類、栄養素、育ちやすさ
・家畜:14種類(南米1種・旧大陸13種):サイズ、育てやすさ、生育サイクル ・ミルク、皮、毛皮、肥料、労働量の提供。
作物と家畜の組合せ:
・作物の保存
・漆喰(石灰+土)
・鉄・青銅の生産
・文字
・生産性の向上:作物と家畜の相互作用による。
他方、苛烈な自然環境の収奪による砂漠化
同緯度(東西)による作物の生育パターンの類似。同緯度=植生や気候が類似
第2話
1942年 コロンブス、バハマ諸島に到着
1519年4月 エルナン・コルテス、メキシコに到着
1519年11月8日 コルテス、テノチティトランに到着
1519年11月14日 コルテス、モクテスマ2世(モテクソマ・ショコヨツィン)を捕縛
1520年6月29日 モテクソマ・ショコヨツィン、アステカ人により殺害。天然痘で死んだクウイトラワクの後に、クワウテモク即位
1520年7月 ノーチェ・トリステ
1521年8月13日クワウテモク強制退位
1524年11月 フランシスコ・ピサロ、ペルー遠征に出立
1532年11月 ピサロ、カハマルカにてアタワルパのインカ軍を撃破
1533年7月 アタワルパ処刑
1533年11月 ピサロによるクスコ占領
1533年12月 マンコがインカ皇帝に即位
1536年4月 マンコ軍のクスコ包囲
1537年 ディエゴ・デ・アルマグロがチリを征服(翌年、7月アルマグロはピサロにより殺害)
1541年6月 ピサロはアルマグロの残党に殺害される
1544年 マンコ・インカ皇帝暗殺
1572年9月 インカ皇帝トゥパック・アマル処刑
フランシス・ピサロの力の秘密
・退役軍人、幼少時代はイベリア半島で豚を放牧して生きる。
征服の理由とはなにか?
旧大陸:家畜利用による生産性の向上、移動手段
新大陸:人力による。
馬の制御:jineta(16世紀の騎兵の乗馬法)
アタワルパ皇帝:カハマルカ滞在。スペイン人たちをカハマルカに招待
・銃:スペイン人の利用、銃の対する驚異(1532年の戦法)
・高品質な鋼(刀):炭素の含有量(多い:堅いが逆に脆くなる)
espalda de lopea
・中世の騎士のアイテム、黄金希求の欲望をドライブ。
カハマルカには8万のインカ軍と168名のスペイン人
De Soto による騎馬兵
ソトを無視するアタワルパ
ソトは恐れをなしてピサロのもとに帰る。
ピサロの作戦計画:奇襲作戦
コルテスによるアステカの征服:王を捕虜にして征服を敢行。
・文字をもつ文化/文字をもたない文化
・文字が生まれる機会は数回のみ:シュメール文明
・紙・インク・活字、印刷機
・2500年年前のマヤ文字の原型。
・ユーラシア:南北に短く、東西に長い
・アメリカ:南北に長く、東西に短い
・アメリカ大陸は、南北に長く、気候や植生が多様。
・ピサロは、ヨーロッパ大陸の文明の利器で完全武装していた。(すべて地理的な条件による)
・アタワルパの戦意のなさ:すでに内戦を平定後。その時に、スペイン人たちは侵攻(隠れていた)
・神父がアタワルパに改宗を迫る。アタワルパは、自らが神の子であることを主張、聖書を汚すことを合図にしてスペイン人たちはインカ人に襲 いかかる。
・ビラコチャ(稲妻の白い神)の化身をスペイン人と思う。
・アタワルパを捕虜にする(コルテスの戦闘方法を真似る)。
・馬、剣、作戦によって破竹する。
・イギリス南部ポートンダウンの生物研究所:伝染病のワクチン開発
・ピサロがカハマルカに向かう12年前に、天然痘をもつ奴隷が新大陸に上陸。膿胞がもっとも感染性をもつ。中央アメリカからインカ帝国にま で蔓延。
ピサロは豚を飼う。家畜の病気とともに育つ。人獣感染症。免疫のない新大陸の人たちは感染。その致死率は想像を絶するものになる。
なぜ、新大陸の人たちは天然痘に容易に罹るのか?
・人と家畜の関わりの関係による。例外地:南北両アメリカ太陸、サハラ以南のアフリカ、オーストラリア大陸。
・アタワルパの処刑(8ヶ月後):20トンの黄金の略奪
・その後、銃・病原菌・鉄によるペルーの進出。
19世紀おわりまでのヨーロッパ人の世界征服
第3話
1488年 バルトロメ・ディアス、ケープ・オブ・グッド・ホープ(喜望峰)に到着
1652年 オランダ東インド会社ヤン・ファン・リーベックによるケープ植民地、オランダ人入植者(=ボーア人)の移民
1688年 ナント勅令が廃止され、弾圧されたフランス・ピューリタン・ユグノーがケープに入植
1779年 ボーア人とコザ人(バンツー系)の紛争(カフィール戦争)
1806年 英国、ケープ植民地を占領(→1814年英国領)
1816年 シャカ・ズールー、ズールー王国(南ア東海岸)建国
1835年 ボーア人によるグレート・トレック(北進開拓)。フォールトレッカーを自称
1837年12月 ボーア人とズールーの紛争
1838年2月 ズールー人によるボーア人虐殺;「ブラウクラウスの虐殺」
1838年12月 ブラッドリバーの戦い:ボーア人による植民国家ナタール共和国を 建設
1843年 英国、ナタール共和国を征服
1852年 ボーア人、トランスヴァール共和国を建国
1854年 ボーア人、オレンジ自由国を建設
1879年 英国軍がズールー人を駆逐(「ズールー戦争」)
1880年 ボーア人が英国軍を破る(第一次ボーア戦争)
1899年 第二次ボーア戦争勃発
1902年 英国軍がボーア人を破り、第二次ボーア戦争終結。トランスヴァール共和国とオレンジ自由国は、英領ケープ植民地に併合
1910年 英領南アフリカ連邦成立(南ア共和国の前身)
Into Tropics
1930年代製の蒸気機関車:ヨーロッパの銃・鉄の技術発展の延長上にある。
鉄道敷設によるヨーロッパ文化の移植:なぜアフリカだけで失敗したか?
1600年代半ばに定着:初期ボーア人の入植
栽培食物と家畜にめぐまれること。同緯度による拡散と分化
どのようにして家畜と作物を持ち込むことができたか?
南アフリカとヨーロッパの緯度の合致
デュトワ家の入植者:コイサン族(=先住民)の遺跡・遺物出てくる。入植者による病気によるコイサン族の絶滅
ヨーロッパ人は家畜由来の武器による(例:天然痘)
アフリカ大陸の最南端に足場を築く。
1830年代のヨーロッパ人が入植。
フォールトレッカーによる銃の武装
銃の技術革新の複合性:ヨーロッパ人の家畜に利用の延長上に?
フォールトレッカーによる入植:海岸より1300キロ内陸へ
フォールトレッカーたちが遭遇した先住民(王国)ズールー族
高度に組織化されたズールー王国:軍事力、経済、空間的支配
・フォールトレッカーの入植挫折(38年2月ブラウクラウスの虐殺)
1838年12月16日のリベンジ=ブラッドリバーの戦い(銃・病原菌・鉄の勝利?)
・鉄道建設による物資の移送:産業革命
・マキシム銃:激しく抵抗する部族に対する大量殺戮兵器。
部族征服とボーア人による開拓
しかし、地理的な条件についての制約:温帯から熱帯への進出
・家畜の死滅:人間の熱病:しかし現地人は家畜を育て病気にならずにいる:どうして?
・南緯23度:リンポコ河以北=熱帯地方、四季がなく乾期と雨期がある。小麦が育成しない。先住民は農耕している(作物は?もろこし、き び)
・部族の多様性:複数の言語を話す。言語の類似性と多様性(バンツー語群:西アフリカ起源で東進し、南下する)
・リンポコ河の遺跡:かつての王国の中心部(マプングヴェ):製鉄もあり。アフリカ南部の経済ネットワークの中心地:ボツアナ北部からイン ド洋にいたる領域。独自の熱帯農耕システムをもつ。
・(しかしこの文明の崩壊については言及されていない)
・入植者が遭遇した病気は?:マラリア(土着の病原菌)と熱帯の感染症
アフリカの牛は、天然痘/牛痘への抵抗性を確立。
・マラリア原虫に対する抵抗性(ただし免疫性とはいわない)
・マラリアに罹りにくい場所に定住:高地で乾燥した土地。また分散にして生活する。他方、入植者は水辺の蚊の多い場所を選んで住む。
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・アフリカは南米の二の舞にならなかった。しかし、アフリカは天然資源の宝庫:(現在の)コンゴ民主共和国でベルギーが強制労働に従事させ られた。
・アフリカの天然資源収奪のための鉄道敷設:
・アフリカの各国の独立
・ザンビアのルゴラ:世界で一番貧しい国(数百ドル、平均年齢30数歳)
・文明の痕跡をみることはできない。植民地化されてヨーロッパを真似た都市ができている。
・ザンビアのマラリア:外来の45%の子供がマラリア。5歳未満の子供の死亡原因になる。
・分散居住がマラリアの蔓延を防ぐ。しかし集住がマラリアを蔓延させる。マラリアとマイナスの経済的効果
・クロロキン耐性のマラリアの登場:
体験と理解には齟齬がある:歴史ではない現在の脅威(ダイアモンドの所感)
・銃と鉄による征服、病原菌によるサポート
・歴史と地理的な要因の犠牲になるべきか?——現在の格差や原因を理解することが重要。
・マレーシアやシンガポールになれということか?(地理的な要因から自由になる——地理と歴史を理解すれば「何かできるか」を理解できる)
マレーシアのマラリア対策に関する歴史的映像が散見される!
・ザンビア政府の対応:健康になれば生産性を向上できる。豊かな人生がおくれる。(ザンビアの女性医師のメッセージ)
・個々の人間の人生を積み重ね:歴史は人の顔が語る。
・持つものと持たざるものの格差を明らかにする。
重要な文献
Jared Diamond "Guns, Germs and Steel" Further Readings を勝手に訳したぞ[山形浩生]
同ページより「Jared Diamond Guns, Germs and Steel がむちゃくちゃにおもしろく刺激的な本であることは、だれにも否定しがたい確固たる事実ではあります。とても刺激的であるために「この部分についてもう ちょっと知りたいぞ」とか「このネタもとはなんだろう」とか思ってしまうのは、これまた人情。そして原著には、その人情に応えるために、Further Readings という章が巻末につけられて、ネタ本や異説などがきちんと紹介されていたのでした。えらいですね。/しかぁし!!/邦訳書『銃・病原菌・鋼鉄 一万三〇〇 〇年にわたる人類史の謎』)(倉骨彰訳、草思社)では、この Further Readings の部分がばっさりと削られていたのであります。最近になって、本書絶賛も一区切りついて、「くどい」「浅い」「ここは調べたのか」といった批判をチラホラ 目にするようになってきました。そういうのに対する防御としても、あるいは批判をただの悪口で終わらせないためにも、こうした参考文献はとってもだいじな のに…… 」
2016年5月23日の授業の資料(→進化生物学からみた医療人類学: 2016)
・《疑問》2016.05.23
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