か ならず読んでください

宗教研究と文化人類学

Religion Studies and Cultral Anthropology

講師:池田光穂

文学研究では、その作品の中に現れた宗教 や宗教観などを、その作家や作家が影響をうけた社会的文化的環境の中で考察しているようです。ただし、 学派や研究者によって様々な分析のスタイルやスタンス(=作品との距離の取り方)があるようです。

もちろん皆さんが考えたいと思っている宗 教のテーマは、神話研究に代表されるように文化人類学が最も得意としてきたテーマの1つです。文 化人類学の強みは文学研究のようなテキストの分析と解釈のほかに、宗教現象そのものを具体的に調べてみること(=フィールドワーク)があります。また、そ のフィールドワークも実証的な側面ばかりを強調するのではなく、つよい理論的統合を指向しています。

仏教学は長い間、テキスト中心の教義の解 釈にとどまってきました(今でもその傾向は否めませんが)。

しかし、生命倫理(=バイオエシックス) を中心に実践的な問題に取り組んでくる研究者や実践家が近年増加してきました。また仏教に関する フィールドワークも、宗教社会学や宗教人類学の観点から取り組んでいる研究者もおられます(もっともかつては新宗教や巡礼、憑霊などがその研究の中心にあ り、最近では国家や政治現象などとの歴史的関連性を強調する研究が多い)。

というわけで、教義解釈に力点がおかれた 仏教学よりも宗教社会学や宗教人類学のほうが、人々が生に接している宗教の実態により近い立場に いるといます。もっとも、実証的な研究には教義解釈の理論的基礎がないと有意義な成果をえることができませんので、この2つの方向性は車の両輪のようにと もに重要であることも申し述べておきます。

ちなみに、国文学と宗教(=神話)と人類 学がうまく結実した例として、国文学者の西郷信綱 『古事記の世界』岩波新書、1967年があります。この本は新刊では手に入りません(→図書館で借りて読んでね)が、かつて非常によく読ま れた本で、当時は著名な国文学者が文化人類学者レヴィ=ストロースに手を染めたと際物(きわもの)あつかいされた向きもありましたが、どうして、どうし て、とても文学研究から神話研究に入るよい入門書になっています。ご参照あれ。

また宮沢賢治の文学的政治論としては西成彦『森のゲリラ・宮沢賢治』岩波書店、1997年が インスピレーションに飛んだ興味深い議論をおこなっています。

以 上のような解説は、これまでの仏教文化論からみたら、かなり過激な挑発になって いるかもしれません。皆さんにおいては上掲の本などをお 読みになって、その感想を指導教官の先生方と相談されてみてはいかがでしょうか? どのようなリアクションがでるか楽しみです。

● 文化人類学ならびに宗教学で使う用語や価値

比較宗教学
マックス・ミューラー

宗教現象学
ファン・デル・レーウ

ヌミノーゼ
ルドルフ・オットー

聖性
ネーサン・ゼッテルブローム

アニミズム
エドワード・バーネット・タイラー

呪術(magic)
ジェームズ・ジョージ・フレイザー

最高存在
アンドリュー・ラング

マナ
ロバート・ヘン リー・コドリントン

プレアニミズム
ロバート・ラナルフ・マレット

トーテミズム
ウィリアム・ロバートソン・スミス

供犠
ロバートソン・スミス;モース

呪術
マル セル・モース

宗教生活の原初形態
エ ミール・デュルケーム

供犠
アンリ・ユベール

左と右
ロベール・エルツ

原始一神教
ウィルヘルム・シュミット













◎ 吉田禎吾(よしだ・ていご)先生という宗教人類学者がいた?!

1923 東京生まれ
1947 東京帝国大学文学部心理学科卒業
1957 翻訳:呪術 J.A.ロニー 白水社・文庫クセジュ
1965 未開民族を探る 失われゆく世界 社会思想社・現代教養文庫
1969 東京大学教養学部教授
1970 呪術 その現代に生きる機能 講談社現代新書/翻訳:人類学入門 エヴァンス=プリチャード 弘文堂
1971 翻訳:レヴィ=ストロース エドマンド・リーチ 新潮社
1972 日本の憑きもの 社会人類学的考察 中公新書 1972
1976 魔性の文化誌 研究社出版
1983 定年退官/『宗教と世界観 文化人類学的考察 』九州大学出版会
1984 宗教人類学 東京大学出版会
1986 翻訳:未開と文明 J.グディ 岩波現代選書
1987 東京大学名誉教授
1992 バリ島民 祭りと花のコスモロジー 弘文堂
1999 勲三等瑞宝章受章
2018 死去

リ ンク

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■ まとめ:

宗 教を人類学的に研究する分野には、宗教人類学と呼ばれる分野があります。宗教研 究は文化人類学が得意とする分野のひと つです。文化人類学の学問的 特徴はフィールド ワーク(=実証的な証拠あつめ)と理論の統合にあります。

■ 発展課題

■ 推薦された文献


Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099


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