『銃・病原菌・鉄』をめぐる討論
2009年8月27日-28日の高知大学医学部授業「医療 人類学」
基本資料「カハマルカでの衝突」(パスワードつきpdf)
1532年11月 フランシスコ・ピサロ
Conquistador = 征服者の意味(スペイン語)
インカ帝国 アタワルパ皇帝
征服者たちの出自・生態環境?
馬の飼育・操馬術→農耕・移動
製鉄・鉄器
ジャレッド・ダイアモンド・米カリフォルニア大学教授(ロスアンゼルス校)生理学教授
ピサロの力の秘密
家畜の利用による生産性の向上、移動手段
食料(食糧)生産=パワー(権力)の源泉
ラマ・リャマの家畜としての限界
馬の制御=jineta (ヒネタ:16世紀の騎兵の乗馬法):戦闘術の洗練化
アタワルパ皇帝、カハマルカ滞在:スペイン人たちを招待。ただし、だまし討ちの試み?
アタワルパの偏見が墓穴をほる?
征服者たち:トレドから傭兵の歴史の末裔
1530年代 銃の重要性の確立(cf.後の信長の長篠の戦い)→戦争の方法の革新
青銅から鋼へ:(青銅よりも)軽く細く作れる、堅い(炭素の含有量比率、ただし入れすぎると脆く=堅くなりすぎる=なる)、剛性(しなやかさ) がある、焼き入れの技法(技術と経験に依存)。espalda de lopea (ロペアの剣)
De Soto (デ・ソト)
アタワルパの行状は、クロニスタ(スペイン人の記録者)たちの記述による。
アタワルパの使用言語は、たぶん?ケチュア語(Quechua)
8万のインカ軍〈対〉168人のスペイン人
ピサロの策略=奇襲作戦
エルナン・コルテスによるアステカ王国(メキシコ)の征服=征服のマニュアル
サラマンカ大学図書館=新大陸の戦史保管場所
文字のパワー:文字体系の発明
シュメール人:くさび形文字の流用による伝播と創意工夫
アルファベットの発明
2500年前:プロト・マヤ文字(象形文字)の発明
ユーラシア:東西に長く、南北は短い
アメリカ大陸:その逆(長辺1万3千キロ)直角対称
経度移動:日照時間影響なし、気候・植生が類似
緯度移動:日照時間の大変化
1532年11月 ピサロ、カハマルカにてアタワルパのインカ軍を撃破
戦勝の祭りに専念するインカ軍
神父がアタワルパ(=神の子)にカソリックへの改宗を迫る。インカ軍の神概念の根本的な相違:
文字を書いた本(=聖書)というものに対する概念の欠如?→聖書を汚したという口実をもとにスペイン人たちの殺害
スペイン人=鉄砲=稲妻=ビラコチャの化身と誤解?
アタワルパの捕縛(8ヶ月後に処刑)
「目に見えない大量殺戮兵器」=伝染病
ポートンダウン研究所(英国南部)
奴隷の天然痘発症:膿胞(のうほう)が感染性を強く持つ。ウイルスの拡散(10日間の発症伝染サイクル)
ピサロの秘密兵器?=家畜とともに育つ(=人獣感染症への免疫の獲得)
個人が免疫をもつ、免疫力には個人差(遺伝的差異)、病気による淘汰圧(とうたあつ)=抵抗力のある遺伝子が選択される=集団的遺伝的特性をも つ。
新大陸には家畜があったが、接触の度合いが低く、人獣感染症の汚染源になりにくかった。
・新大陸死亡率:先住民人口1/20に激減(最大の見積もり)
・ペルーの植民地化
・黄金の略奪・輸出による世界の貨幣流通のシステムの大変化
・ヨーロッパ人の知力ではなく、地理的条件と歴史(銃と病原菌)のおかげ=ヨーロッパの世界征服の理由(ダイアモンドの説)
1488年 バルトルメ・ディアス Cape of Good Hope (喜望峰)に到達
・「アフリカの停滞」の理由はなにか?
・銃・鉄・病原菌が、ヨーロッパ人のパワー(世界権力)の理由がダイアモンド説
・「熱帯の中へ」
・蒸気機関車=アフリカ開拓のツール
・鉄道敷設によるヨーロッパ文化の移植:なぜアフリカで「失敗」したのか?
・南アの初期入植者=ボーア人(オランダ系移民)
・緯度/経度の差異仮説:技術発達の地理要因説
・南アとヨーロッパの緯度が対称に同緯度(温帯)。
デゥトワ家の人々:1683年入植
先住民コイサン族の放逐:入植者が病気を持ち込んでコイサン族を滅ぼす?=天然痘(人獣感染症のひとつ=人間の初期天然痘ワクチンは牛痘によっ て作られる)
・フォールトレッカー(オランダ系ボーア人)による銃による武装と入植:海岸部より1300キロまで進出(温帯から亜熱帯へ)
・銃=技術革新の蓄積の象徴
・ズールー族による襲撃
・ズールー王国:高度に組織化された軍事・経済・空間的支配:8万平方キロ
・1838年2月のブラウクラウスの虐殺
・1838年12月ブラッドリバー(血の川)の戦い(ボーア人の戦闘技術の改善とリベンジ)
・鉄道建設による物資の移動:それを支えるヨーロッパでの産業革命
・マキシム銃の連続発射能力:火力強化
・南アの入植の特色:武力紛争とアフリカ人の大量虐殺による。その後の無住の地に入植。
・リンポコ河北岸(南緯23度=南回帰線)に到達:土地の生産性の低下、高温湿潤、家畜の死亡、入植者の死亡:どうして?:温帯から熱帯へに進 出したので、あたらしい病気のゾーンに入る
・熱帯の特徴:雨季と乾季。小麦が生育しない。先住民の農耕作物は?→もろこし、きび
・部族社会の特徴:多言語、多文化状況
・バイリンガル・トリリンガル、クオドリンガルは当たり前。ただし、それぞれの言語の語彙は互いに類似=バンツー語族(語群):
西アフリカ起源で、農耕を基本とする。
・リンポコ河沿岸に遺跡:マブングヴェ遺跡:製鉄、アフリカ南部の経済ネットワークの拠点:ボツワナ北部からインド洋沿岸までの広域交易システ ムをもつ。
・(ただしこの文明の崩壊については説明せず)
・入植者が直面した深刻な病気とは?=マラリア(ハマダラカが媒介するヒトーヒト感染症)[新大陸とは逆に、入植者=ヨーロッパ人が犠牲者]
・コイサン族とズールー人との差異:前者は天然痘への免疫力もたず、後者は牛痘(ぎゅうとう)を経由して免疫力をもつ。
・マラリアへの抵抗力:居住地の選択:低地湿潤地を避ける、住み方を分散させる(=蚊のマラリア伝播を防ぐ)→言語の多様性、多文化の理由か?
・アフリカの魅力=天然資源の宝庫
・ベルギー領アフリカ(現コンゴ民主共和国):奴隷を利用した強制労働による、アフリカの文明の崩壊
・天然資源収奪のための鉄道敷設(〜現在でつづく)
・1960年代のアフリカの独立:にもかかわらずアフリカはなぜ貧困で、病気が蔓延しているのか?
・ザンビアの貧困と病気:外来患者の45%がマラリア。5歳未満の子供の主要な死亡原因になる。風土病(endemic)=地方病のこと←→広 域流行病(epidemic)→世界的流行病(pandemic)
・経済低下の要因としてのマラリア蔓延
・クロロキン耐性のマラリア:マラリアの種類(卵形、三日熱、四日熱、熱帯マラリア)
・ダイアモンド「体験と理解の間には齟齬がある」
・ダイアモンドの自己総括・振り返り
・銃と鉄という技術的要素:病原菌[耐性=免疫力獲得]という偶然の要素
・この仮説から処方せんが見つかるのか?
・格差の理由を知る(=理解する)ことと、対処法を得られること(=未来を変える)を、ダイアモンドは混同しているのでは?
・ザンビアの女医:病気がなくなれば経済の生産性が上がる→人々が幸せに(「ゆたかな人生が送れる……」)
・「歴史はヒトの顔が語る」
・持つものと持たざるものの格差を明らかに(できた?)
学生たちの感想(マップ)
オリジナルクレジット:2009年8月27日-28日の高知大学医学部授業「医療 人類学」のグループワーク討論の記録
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