Lesson6
「グローバル化する近代医療 医療は帝国的権力か?」
池田光穂・奥野克巳編『医療人類学のレッスン』学陽書房、2007年 解説編
◆ 読解のポイント
近代医療の拡張が成功した時代とは、西洋列強の国家は世界の周縁部に多くの植民地を抱えており、また それらの争奪戦に明け暮れていました。戦線の後背地での軍陣医学において、また新しく征服された植民地とその住民への公衆衛生活動において、医療の有効性 は多角的にチェックされました。帝国医療という分析の視座は、このような制度が近代医療にどのような革新をもたらしたのかを明らかにします。
◆ 各節の構成
1.地球上に拡散する医療システム
2.帝国医療の実態
3.近代医療の現場にて
4.グローバリゼーションと近代医療
5.〈帝国医療〉の新たな展開をとおして
◆ 確認チェック!
□ 狭い意味で近代植民地主義の展開のなかで宗主国が植民地においておこなった公的医療を、歴史学では、植民地医療ないしは「○○医療」とよばれます。「○○」の中に入ることばを記してください。
□ 宗教(おもにキリスト教)の使命にもとづき、のちに植民地医療につながる、医師、助産婦、看護師などを宣教師とともに派遣する医療をなんとよびますか。
□ マラリア原虫をアノフェレス蚊の唾液腺に発見し、マラリア原虫の生活環を明らかにし、1902年にノーベル賞を受賞した英国の医学研究者の名前をなんとよびますか。
□ ロックフェラー財団が20世紀初頭の米国の南部諸州で、また1913年に国際保健委員会を組織してセイロン(現スリランカ)などの植民地で対策をおこなった寄生虫疾患をなんというでしょうか。
□ 初期の植民地時代に、ヨーロッパの白人(先進国人)と先住民(現地人)が接触した空間について考察して、歴史家メアリー・ルイズ・プラットが概念化した専門用語をなんというでしょうか。
□ 途上国でしばしば現地の人たちが語るうわさ話の中で、白人が子供などを誘拐し被害者から奪い取ると言われているものはなんでしょうか。
□ 政治、経済、情報などに関するさまざまな要素が、比較的短時間に世界中に流通し、それぞれの社会の中で社会的衝撃をもたらす現象を総称してなんとよびますか(ヒント:地球規模化という訳語がある)。
文献
帝国医学前史については、小川眞里子「序章」『病原菌と国家:ヴィクトリア時代の衛生・科学・政治』名古屋大学出版会、2016年、が簡潔でとても役立つ。
◆ 各章の構成[『医療人類学のレッスン』ポータル]
1「医療人類学の可能性 健康の未来とは何か?」池田光穂
2「病気と文化 人間の医療とは何か?」奥野克巳・山崎剛
3「呪術 理不尽な闇あるいはリアリティか?」池田光穂・奥野克巳
4「憑依 病める身体は誰のものか?」花渕馨也
5「シャーマニズム シャーマンは風変わりな医者か?」奥野克巳
6「グローバル化する近代医療 医療は帝国的権力か?」奥野克巳・森口岳
7「リプロダクション 「産むこと」は単純ではないのか?」嶋澤恭子
8「女性の身体 身体は所与のものか?」松尾瑞穂
9「エイジングと文化 老いはどのように捉えられているか?」福井栄二郎
10「心と社会 狂気をどのように捉えればいいか?」池田光穂
11「今日における健康問題 なぜある人びとは病気にかからないのか?」池田光穂
[永遠の名著コーナーへもどる]
1「医療人類学の可能性 健康の未来とは何か?」池田光穂
2「病気と文化 人間の医療とは何か?」奥野克巳・山崎剛
3「呪術 理不尽な闇あるいはリアリティか?」池田光穂・奥野克巳
4「憑依 病める身体は誰のものか?」花渕馨也
5「シャーマニズム シャーマンは風変わりな医者か?」奥野克巳
6「グローバル化する近代医療 医療は帝国的権力か?」奥野克巳・森口岳
7「リプロダクション 「産むこと」は単純ではないのか?」嶋澤恭子
8「女性の身体 身体は所与のものか?」松尾瑞穂
9「エイジングと文化 老いはどのように捉えられているか?」福井栄二郎
10「心と社会 狂気をどのように捉えればいいか?」池田光穂
11「今日における健康問題 なぜある人びとは病気にかからないのか?」池田光穂