Lesson7「リプロダクション:「産むこと」は単純ではないのか?」
池田光穂・奥野克巳編『医療人類学のレッスン』学陽書房、2007年 解説編
『医療人類学のレッスン』/『燕は戻ってこない』
◆ 読解のポイント
人間社会が世代を超えて存続するためには出産=再生産は不可欠です。しかしながら他の生物と は異なり人間社会には、出産に関する知識や実践が高度に社会化・文化化されていることが特徴です。出産は、生物学的事実でありますが、それ以上に社会的事 実であることを確認します。
◆ 各節の構成
1.医療からの脱臼
2.テクノロジーとの親密な関係
3.生権力——人口の管理と身体の管理
4.人類学としてのリプロダクション
5.再構築の手がかりとして
◆ 確認チェック!
□ 生殖あるいは人口の再生産のことを英語の外来語で呼ばれることがあります。この外来語を カタカナで表記してください。
□ 特別な介助なしに、リラックスのための呼吸法や出産の姿勢などをとることで、妊婦の主体 性を中心とする出産法をなんといいますか。
□ 陣痛期から産道通過の時期に麻酔をつかって徐痛する出産方法をなんというでしょう。
□ 腹部外壁から子宮内の胎児の状況を観察することができるもっとも一般的なテクノロジーを なんというでしょうか。
□ 日常生活において治療や医療的管理の対象外であったものが、診断技術の発達や医療の専門 家による治療が必要であると判断されて加療の対象になってゆくことをなんというでしょうか。
□ 人間の出産が自然現象であり助産師による出産介助が中心であったものが、医師たちによる 治療に類似した行為に変化した要因のなかでもっとも重要なものはなんでしょうか(ヒント:「○○性の確保」といいます)。
□ フランスの思想史家のミッシェル・フーコー(1926-1984)は、国家の統治者が国 民を管理する際に2つの方法があると指摘しました。まず医療を通して個々人の健康を保障すること(=解剖的政治)である、他方は出生や人口への動態を管 理、維持することです(=生政治)。公権力とは異なるこれらの政治において行使される権力をフーコーはなんと呼んだでしょう。
□ 文化人類学では、個人の両親について調べる時に、生物学的な父(ジェニター)と、社会的 な父を区分します。社会的な父をジェニターと区分していったいなんとよぶでしょうか。
□ ラオスの伝統的な出産概念にとって、産後にユー・ファイと呼ばれる養生法が重要なものと されています。ユー・ファイとは母親の身体に、どのようなことをするのでしょうか。
◆ 桐野夏生『燕は戻ってこない』集英社、2022年
「北海道での介護職を辞し憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極め、未知の「生殖医療ビジネス」に誘われる29歳女 性・リキ。バレエ界の「サラブレッド」としてキャリアを積み、自らの遺伝子を受け継ぐ子の誕生を熱望する43歳男性・基。その妻で、不育症と卵子の老化に より妊娠を諦めざるを得ず、「代理母出産」という選択をやむなく受け入れる44歳女性・悠子。それぞれのままならぬ現実と欲望が錯綜する、ノンストップ・ ディストピア小説!」
◆ 各章の構成[『医療人類学の レッスン』ポータル]
1「医療人類学の可能性 健康の未来 とは何か?」池田光穂
2「病気と文化 人間の医療とは何 か?」奥野克巳・山崎剛
3「呪術 理不尽な闇あるいはリアリ ティか?」池田光穂・奥野克巳
4「憑依 病める身体は誰のものか?」 花渕馨也
5「シャーマニズム シャーマンは風 変わりな医者か?」奥野克巳
6「グローバル化する近代医療 医療 は帝国的権力か?」奥野克巳・森口岳
7「リプロダクション 「産むこと」 は単純ではないのか?」嶋澤恭子
8「女性の身体 身体は所与のもの か?」松尾瑞穂
9「エイジングと文化 老いはどのよ うに捉えられているか?」福井栄二郎
10「心と社会 狂気をどのように捉 えればいいか?」池田光穂
11「今日における健康問題 なぜあ る人びとは病気にかからないのか?」池田光穂
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1「医療人類学の可能性 健康の未来とは何か?」池田光穂
2「病気と文化 人間の医療とは何か?」奥野克巳・山崎剛
3「呪術 理不尽な闇あるいはリアリティか?」池田光穂・奥野克巳
4「憑依 病める身体は誰のものか?」花渕馨也
5「シャーマニズム シャーマンは風変わりな医者か?」奥野克巳
6「グローバル化する近代医療 医療は帝国的権力か?」奥野克巳・森口岳
7「リプロダクション 「産むこと」は単純ではないのか?」嶋澤恭子
8「女性の身体 身体は所与のものか?」松尾瑞穂
9「エイジングと文化 老いはどのように捉えられているか?」福井栄二郎
10「心と社会 狂気をどのように捉えればいいか?」池田光穂
11「今日における健康問題 なぜある人びとは病気にかからないのか?」池田光穂