レナード・L (1920-1981)の記録
Biography of Dr. Oliver Sacks and his patient nemed Leonard L. (in Japanese)
解説:池田光穂
レナード・L (1920-1981)の記録
1920年 レナード・L(仮名) 生まれる。
1933年 オリバー・サックス[→Oliver Sacks, Official WebSite]、英国に生まれる。
1935年 レナード・Lに脳炎後遺症のはじめての症状がでる。
1942年(頃) レナード・L、ハーバード大学卒業
1947年 レナード・L 学位論文作成中に脳炎後遺症が悪化し、論文作成を中断。
1950年 マウント・カーメル病院(仮名)にレナード・L入院。病院図書館の責任者になる。
1966年 秋、ベス・アブラハム病院(ア ルバート・アインシュタイン医科大学と提携)にオリヴァー・サックス嗜眠性脳炎回復者を診察するようになる(サックス 2015:214)。にオリバー・サックスは、文字盤を通してレナードと会話するようになる。
1966年(春) オリバー・サックス、はじめて脳炎後遺症患者を受け持つ(レナード・L[46歳]もそのひとり)
1969年3月 はじめてレナード・Lに、L-ドーパの処方を試みる。2週間の間に1日5グラムまで投与量があがる。2週間後に劇的効果 (3月末)。
1969年4月 レナード、精神の「過剰性」に苦しむ。性欲過剰(〜5月)。
1969年6月 レナード、最初の3週間で5万語の自伝をタイプ。
1969年7月 レナード「激情にあおられ、分解した状態」になる。月末にはペニスへの自傷と自殺企図から、Lードーパの投薬中止
1969年8月 ほとんど動かず話さず
1969年9月 文字盤を使っての会話。レナード・LにL-ドーパの投与再開。アマンタジンへの切り替え。
1972年3月 11回目(最後)のレナード・Lへのアマンタジン投与
1974年9月 Lードーパの再投与により感受性発現(〜1980年までアマンタジンの投与続く)
1977年〜1978年 肺炎・尿道炎・皮膚の糜爛がはじまる
1980年 アマンタジンが効かなくなる
1981年 L-ドーパの投与により効果発現しかし彼は「……ラザロだってこんなひどい目にはあわなかった。後生だからやめてくれ。静かに 死なせてくれ」と発言。Lードーパ投与を中止。
1981年6月 死亡(母親ティナ83歳)
リンク
文献
【生物医学の資料編】
パーキンソン症候群
パーキンソニズム parkinsonism(パーキンソン症候群parkinsonian syndrome)とは,パーキンソン病の特徴である振戦,筋強剛,無動・動作緩慢,小刻み歩行de marche a petits pas,すくみ足歩行freezing of gait,仮面様顔貌のような錐体外路症状のいくつかが出現する疾患全体をさす概念で,多数の疾患が含まれる.40歳以下で発症した場合は若年性パーキン ソニズムと呼ばれ,家族性発症が多い.原因疾患を大別すると, 特発性パーキンソニズムidiopathic parkinsonism(パーキンソン病と同義),原因が明らかな症候性(二次性)パーキンソニズムsymptomatic p.,パーキンソン病以外の原因不明の神経変性疾患によるもの,の3つがある.L‐ドーパ(日本語の医学表記ではドパ)や,その他の抗パーキンソン薬は, パーキンソン病以外の疾患には有効でない.症候性パーキンソニズムの中で最も頻度が高いのは,脳血管性パーキンソニズムarteriosclerotic p.と薬剤性パーキンソニズムdrug‐induced p.である.前者は大脳基底核の多発梗塞や虚血性の大脳白質変性が原因で生じ,開脚位の小刻み歩行と筋強剛を特徴とする.薬剤性パーキンソニズムの原因薬 は,線条体のドパミン受容体遮断作用を有するベンザミド誘導体(鎮吐薬,腸管運動改善薬,老年者の精神症状改善薬として繁用),フェノチアジン系・ブチロ フェノン系の抗精神病薬,脳循環改善薬,カルシウム拮抗薬などで,進行が速く振戦が目立たない特徴があり,原因薬剤中止により改善する.神経変性疾患のう ち,線条体黒質変性症,進行性核上性麻痺は,初期にはパーキンソン病との鑑別が困難なことがある(James Parkinsonはイギリスの医師,1755‐1824).
パーキンソン病
中脳黒質のドーパミン作動性神経細胞の変性脱落によって,神経終末がある線条体でドパミン不足をきたし,錐体外路性運動障害が出現する変性 疾患で,静止時振戦,筋強剛,動作緩慢・無動,姿勢反射障害を四主徴とする.とくに,親指と示指で丸薬をこねるような振戦(丸剤製造様運動 pill‐rolling movement)は本症に特徴的である.他に,仮面様顔貌,瞬目減少,脂顔,小声で早口,前傾で四肢を屈曲した姿勢,小刻み歩行,すくみ足,突進歩行, 方向転換困難などが出現し,便秘や排尿障害,低血圧などの自律神経症状も合併する.高齢者では痴呆の頻度が高い.補充療法であるL‐ドーパが著効し,ドパ ミン受容体刺激薬,抗コリン薬も有効である.病理学的には,中脳の黒質と橋の→青斑核*のメラニン含有神経細胞の変性脱落と,残存神経細胞質内に出現する 好酸性封入体(レヴィー小体)が認められる.有病率は10万人当たり約100人である.病因は不明であるが,何らかの中毒物質の関与が推定されている.
線条体黒質変性症
striatonigral degeneration(SND) パーキンソン症候群を主徴とし,これに錐体路症候や自律神経症候が混在してみられることもある疾患で,線条体と黒質に変性の主座があることからこのように 呼ばれる.1961年アダムスらにより初めて報告された.中高年に発症しパーキンソン症候群(パーキンソニズム)を呈するのでパーキンソン病と臨床的に似 るが病理学的には異なり L‐ドーパは無効である.
塩酸アマンタジンamantadine hydrochloride
白色から灰白色の結晶または結晶性粉末で,においおよび味はなく,水に溶けにくい.パーキンソン症候群(パーキンソニズム)に適応され,製 剤としては,錠剤,散剤がある.本剤は黒質‐線条体路のドパミン作動性ニューロンにおいてドーパミンの放出促進作用,再取り込み抑制作用,合成促進作用に よりパーキンソン病を軽減させると考えられている.また本剤は抗ウイルス剤としても知られ,インフルエンザA型ウイルスに対し特異抗血清に匹敵する増殖抑 制作用を示す.ヒトに経口投与した場合,1から4時間で最高血中濃度に達し,投与後24時間で投与量の約60%が,96時間までに約90%が未変化体で尿 中に排泄される.〔副作用〕 ときに発疹などの過敏症,睡眠障害などの精神神経症状,便秘などの消化器系症状,および自律神経系症状の現れることがある.〔用量〕 1日100から900mg
オリーブ・橋・小脳萎縮症,シャイ・ドレーガー症候群Shy‐Drager syndromeと本症は病理学的に近縁であって主たる病変部位が異なるだけであると考えられ,3者をまとめて多系統萎縮症multisystem atrophyと呼ぶことがある.
進行性核上性麻痺progressive supranuclear palsy(PSP)
《同義語》スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群Steele‐Richardson‐Olszewski syndrome:Steele,Richardson,Olszewski(1946)によって独立疾患として認識され,垂直注視麻痺,項部ジスト ニー,仮性球麻痺,錐体外路徴候,痴呆を主徴とする.男性にやや多く,40から60歳代に,不安定な歩行,言語障害,性格変化などで徐々に発症する.特徴 的なのは注視麻痺で,垂直注視,とくに下方視の障害が顕著で,進行すると側方注視も困難となる.oculocephalic reflexや人形の目徴候が存在し,麻痺は核上性と考えられる.また頚筋のジストニー,固縮により頭部の後屈がみられる.体幹筋,四肢の固縮も存在す る.中期以降には仮性球麻痺が出現し,軽から中等度の痴呆も伴う.病理学的には淡蒼球,黒質などの大脳基底核,上丘,中脳水道周囲灰白質,橋被蓋などに神 経細胞の脱落,神経原線維変化,グリオーシス,脱髄がみられる.原因は不明であるが,変性疾患と考えられている.有効な治療法はなく,徐々に進行性で,平 均5から6年で感染症,栄養障害のために死亡する.
[出典:南山堂医学大事典第18版:一部表記を変えた。ドパミン→ドーパミン、L-ドパ→L-ドーパ]
L-DOPA
L-DOPA (L-3,4-dihydroxyphenylalanine; Levodopa; Sinemet, Parcopa, Atamet, Stalevo, Madopar, Prolopa, etc) is a naturally-occurring dietary supplement and psychoactive drug found in certain kinds of food and herbs, and is synthesized from the essential amino acids L-phenylalanine (PHE) and L-tyrosine (TYR) in the mammalian body and brain. L-DOPA is the precursor to the neurotransmitters dopamine, norepinephrine (noradrenaline), and epinephrine (adrenaline). Aside from its natural and essential biological role, L-DOPA is also used in the clinical treatment of Parkinson's disease (PD) and dopamine-responsive dystonia (DRD). [Souce: http://en.wikipedia.org/wiki/L-DOPA]
関連リンク
このページを資料に使った「医療人類学2009:高知大学医学部」
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