ヒューマン・サービスに関わる科学とは?
What is the Science for Human Service ?
ヒューマン・サービスに関わる科学は、いかにして可能なのか、について考えるのがこのページの目的である。
立命館大学の望月昭教授は、ヒューマン・サービスに関わる科学を、対人援助学と名づけ、 それに関わる諸科学と実践の総合を模索されておられる。
下記の記述は「臨床人間科学の構築」と題された、立命館大学オープンリサーチラボラトリに関するプロジェクトの最終年度に開催されたイベント (2009年12月12日)に池田がコメンテータとして招へいされ、コメントした記録である。
臨床人間科学の構築
コメント
池田光穂 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター tiocaima7n[at]mac.com
立命館大学オープンリサーチセンター整備事業 「臨床人間科学の構築」
2009年12月12日(土):立命館大学衣笠・創思館
総論
短い時間に豊富な研究領域の紹介
立命館流の臨床人間科学の確立
あらゆる学際的統合的研究には、成果報告会が不可欠と言われてきたが、その成果を当事者たちが共有しているか?
教育臨床チーム
人間の多元性・多次元性に対する理解を前提に統合的アプローチ
独自性のある研究だが、よき方法論をより広く展開するためには、一種の「布教」も必要か、と。
高齢者チーム
脳科学の成果を高齢者に対する「支援」になるか否かの介入研究→結果は改善
ではこの「善行」どのように社会に還元するのか? 投下する経費(人的、経済的)と効果とのトレード試算が必要になるかもしれない。
知的画像処理チーム
画像を見たときの心象の理工学的解釈の研究「年代別写像関数」など、画像と人間の心的状態に関する研究
なにが基礎研究として知的世界に貢献するのか、なにが応用研究としてより実践的な評価を与えるのか?
ディサビリティチーム
認知心理学と社会心理学の2つのチームで、前者は記憶を中心とした援助者と被援助者に心理に関する基礎研究、後者は共感と援助行動の関係に 関する実験的研究
篤実な研究だと思えるが具体的な成果にむすびつくような大胆な提案がほしかった。
バリアフリーチーム
被験者をつかった姿勢の研究を事例として発表:高齢者と若年者のあいだに感覚の差異はなかったが、その理由についての研究
篤実な研究だと思えるが具体的な成果にむすびつくような大胆な提案がほしかった。
家族チーム
家族(恋人や友人を含む)親密性についての病理(例:暴力)についてのカフェなどの実践研究
恋愛カフェなどの実践についての現場の知識が必要。阪大CD教育でも同じだが、WS受講が必要なのは教員とスタッフかも。
子どもチーム
子どもの成育や生育にかかわる諸問題の解決にむけの多様な実践研究の紹介
プロジェクト外で実施されている類似の多くの活動のハブになり、研究成果の流通や情報交換へ、ヴァージョンアップが必要になる時期なので は?
自己決定QOLチーム
障害のある学生への就労継続支援についての実践研究
実践の報告なのだが、そのおもしろいところが「役にたつ情報」としてギャラリーに伝わったか?
医療福祉とエンパワメントチーム
医療福祉の制度、組織、男性介護、高齢者、妊娠・出産に関する研究、男性介護ネットワークの確立という成果など
事務局活動などの定常維持化などの次なる課題や設計についての話が聞きたい
コミュニティチーム
ボランティア育成のためのさまざまな基礎研究、多様なボランティアの広がり、マイノリティ支援の研究(アクションリサーチ)などの成果
臨床人間学のコアになるべき研究では?そうであるなら、さまざまな研究チームへの介入という「ボランティア活動」というものもあってもよ かったのでは?
M&Aチーム
もうひとつのM&A(mindful & acceptance)=種々の臨床的立場から討論できる場の提供・思想・スタイルの提言
すばらしいアイディアの源泉には興味深い具体的実践があったのでは?発表の内容は骨子であり、生成のダイナミズムについての話を聞きたい (=経験を共有すること)
ユースサービスチーム
学生の社会化にとってキーパーソンとなるユースワーカー、スクールソーシャルワーカーの養成および児童自立支援施設への関わりについての報 告
単独では十分に評価できる活動であるが、他のチームとの連携、共同が将来の課題か
ベトナム(東アジア)チーム
発達障害児に対する支援研究の東アジアを中心とする国際的な共同研究
本整備事業が契機・インキュベータになり個別の研究への支援をおこない、最終的に別の財源で動かし、最終的に自立するモデルとして考えられ る
社会臨床チーム
当事者性の観点から臨床医学的枠組(不妊治療を例に)そのものの見直し、代替的枠組の可能性について検討した。
研究成果の検討内容の報告よりも、その結果、なにをどこまで成果をあげたかについての報告があってもよかったのでは?(研究発表の会場では なく聴衆もそのような相手ではない)
研究法開発チーム
多様な方法論(とくにメタ的な意味での)の検討であり、また開発された方法論が研究に具体的に反映された豊富なプロジェクト
それぞれの研究チームに還元されるべき有用な研究だが、このチームの取り組みがそのような介入を指向しているか、また他のチームが受け入れ るだけの枠組み(度量?)をもつか
ダイバーシティ・ マネージメントチーム
経営論の観点から多様性を管理することが、組織全体の繁栄・成功につながることについての、普遍性と文化依存的性格の分析
研究法開発チームとならび、基幹となる重要な視点であるが、他のチームとの協働があればすばらしい活力剤になったのでは?
結論
私じしんの2つの経験から:共同研究の「統合」についての隔靴掻痒感、公聴システムの代理機能としての外部評価者
どうせ報告書に記載できるのだからこの場所はむしろもっとわかりやすく楽しめる学術フェスタにすればどうでしょうか?(この臨床人間科学の 各チームの元気さを立命館全体に伝えてくださるよう……)
研究支援のスポンサーやディレクターに対するローヤリティの確認は重要で、研究代表者は、万難を排して出席すべきでは?(共同研究者は研究 の先達でも謙譲表現で)
対人援助学:Science for Human Services, (lit.) Interpersonal Support Studies, Interpersonal Asssistance Studies
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