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10兆円規模の大学 ファンドの2022年問題

Fateful Hoaxing of the 10 trillion yen National Universities Funds

池田光穂

大学ファンドの創設について
令和3年3月
文部科学省
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10兆円規模の大学ファンドの創設 現状とファンド創設の狙い 研究力(良質な論文数)は相対的に低下 博士課程学生は減少、若手研究者はポストの不安定/任期付 資金力は、世界トップ大学との差が拡大の一途 スキーム 1 政府 大学ファンド民間等 研究大学 科学技術振興機構(JST) 運用担当理事/運用・監視委員会 資産運用 機関 資金拠出 資金配分 運用委託 運用益 資金拠出 資金拠出 運用や使途に関する基本方針 世界トップ研究大学の実現に向け、財政・制度両面から 異次元の強化を図る マッチング 制度概要 科学技術振興機構(JST)に大学ファンドを設置 運用益を活用し、研究大学における将来の研究基盤へ の長期・安定投資を実行 参画大学は、世界トップ研究大学に相応しい制度改 革、大学改革、資金拠出にコミット ファンドは50年の時限、将来的に大学がそれぞれ自 らの資金での基金運用するための仕組みを導入。 大学の将来の研究基盤への長期・安定的投資の抜本強化 世界トップ研究大学に相応しい制度改革の実行 基本的枠組み 大学ファンドの運用 資金拠出 4.5兆円(※)からスタート、大学改革の制度設計等を踏 まえつつ、早期に10兆円規模の運用元本を形成 ※政府出資0.5兆円(R2第3次補正予算)、財投融資4兆円(R3財投計画額)) 長期的な視点から安全かつ効率的に運用/分散投資/ ガバナンス体制の強化など万全のリスク管理 R3年度中の運用開始を目指す 将来の研究基盤:大学等の共用施設、データ連携基盤 博士課程学生などの若手人材
2020年度(R2) 2021年度(R3) 2022年度(R4) 2023年度(R5) 12月1月4月7月10月1月4月4月 資金運用 内閣府・文科省文科省・JST 大学改革/ファンドの使途・配分 内閣府・文科省文科省 JST法改正 世界と伍する研究大学専門調査会(仮称) 資金運用WG(仮称) 2 支援開始 運用委託 機関選定 運用開始 大学ファンドの創設に係るスケジュール(イメージ案) CSTI会合決定 (運用基本的考え方) 運用基本指針・中長期目標(文科大臣) 運用基本方針・中長期計画(JST) CSTI会合決定 (新たな法的枠組み) 連携 運用に向けた体制整備 JST体制整備 (運用業務担当理事、運用・監視委員会、運用スタッフ採用等) 関連法案 審議 対象大学 指定 国立大学法人の新たな法的枠 組み検討有識者会議(仮称) ・ガバナンス改革等 ・ポストコロナのニューノーマル時代 における大学の在り方
【運用に当たっての留意点】
(1)運用の基本的な考え方 JSTにおける運用が長期的な視点から安全かつ効率的に行われるようにするための基本的な指針を、文部 科学大臣が示す。 長期的な観点からの資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定めるとともに、分散投資を行うなど各種リス ク管理を行う。 (2)ガバナンス体制 ファンド運用に係るJST設置法の改正において、法人監査体制の強化、運用業務担当理事の新設や運用・ 監視委員会の設置等ガバナンス体制強化に係る規定を設ける。 (3)リスク管理態勢 運用開始当初は、元本強化期間と位置づけ、例えば運用開始当初3~5年間は運用益の相当割合を元本強化 に充てるなどの内容を含む元本強化計画を策定・実施。 万一計画の達成の見込みがない又は未達成であれば、リスク運用の停止や繰り上げ償還等を含む抜本的な改 善計画を策定・実施する。 ○ 大学ファンドは、次の考え方のもと創設し、運用開始する予定。 ・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)にファンドを設置。 ・政府出資0.5兆円(2020年度第3次補正予算案)に加えて、財政融資資金4兆円(2021年度財政投融資 計画案)を元本として運用開始(ファンドの期限50年)。 ・早期に10兆円規模の運用元本形成を目指す。 ・財政融資資金については、20年後を目途に今後の対応を検討することとし、融通条件(40年償還 (うち据置期間20年)、元金均等償還)に沿って、順次約定償還。 大学ファンド創設及び運用の基本的な考え方について 3

国立研究開発法人科学技術振興機構法の一 部を改正する法律の概要
趣旨 我が国の大学の研究環境の整備を進めるため、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)において、政府出資や長期借入 等により調達した資金を運用するとともに、大学に対し、国際的に卓越した科学技術に関する研究環境の整備充実並びに優秀な若年 の研究者の育成及び活躍の推進に資する活動に関する助成を行う業務(助成業務)を行うために必要な措置を講じる。 概要 1.資金の調達 JSTが、政府出資、財政融資資金借入、民間からの長期借入、JST債券の発行、大学からの資金拠出等により資金を調達するために 必要な措置を講じる 2.資金の運用 資金運用については、金融商品取引業者との投資一任契約を活用した信託などの方法により安全かつ効率的に行うこと等を規定する 3.運用の管理 ① 助成業務に係る資金の運用に当たり、文部科学大臣は運用資産の構成の目標、資金の調達等に関する基本指針を定めてJSTに 示し、これに基づきJSTは運用の基本方針を作成し、文部科学大臣の認可を受けなければならないこと等を定める ② 資金運用を担当する理事(文部科学大臣承認)を置き、金融、資産運用等の専門家を充てるとともに、同分野の学識経験者・ 実務経験者からなる運用・監視委員会(文部科学大臣任命)を設置する 4.業務の追加 助成業務及び国立大学寄託金運用業務をJSTの業務に追加する 5.損益処理 助成業務及び国立大学寄託金運用業務について、利益及び損失の処理の特例を設ける 施行期日 公布の日から起算して二十日を経過した日(令和3年2月23日) 4
CSTIにおける検討体制(案)

資金運用WG(仮称) 世界と伍する研究大学専門調査会(仮称) ○ 大学ファンドの制度検討に当たっては、内閣府CSTIの下に専門調査会(世界と伍する研究大学専門 調査会(仮称))を設置。 ○ さらに、同専門調査会の下に、金融・経済等の専門家からなるワーキンググループ(資金運用WG)を 設置し、資金運用に係る専門的事項を検討。 ○ 専門調査会及びWGの運営に当たっては文科省とも連携。 ※ 2021年1月の統合戦略推進会議においても、大学ファンドを議題とする方向で調整中。 CSTI 参考 <主な検討事項> ・運用の基本的な考え方(リスク管理の在り方を含む) <主な検討事項> ・世界と伍する研究大学の定義、規制緩和事項等の検討 ・参画大学の要件、配分の基本枠組み ・運用益の使途、選考・評価スキームの設計

※CSTIとは総合科学技術・イノベーション会議(Council for Science, Technology and Innovation)
脆弱化する研究基盤(参考)

我が国の大学の資金力は乏しく、若手研究者に十分な給与やポストを提供することが困難な状況。 これにより博士課程への進学率は減少し、結果として研究力(良質な論文数)は低下。 4.5兆円 17% 9% 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 1.1万人 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 5.8千人 国立大学の40歳未満の任期なしポスト ❊ 修士課程卒業者に占める博士課程進学者の割合 大学基金規模 ハーバード イエール スタンフォード プリンストン MIT ケンブリッジ オックスフォード 慶應 早稲田 東京大学 3.3兆円 3.1兆円 1.0兆円 730億円 300億円 150億円❊ 各大学HPより(2017,2019) 脆弱化する研究基盤 若手研究者の安定的ポストは減少 博士進学率は減少 国際的な競争の激化 我が国の大学は海外大学と比べ資金に乏しい 原因:将来のポスト不安・研究 活動に対する対価が不十分 6 参考 1 1 1 13 4 2 2 2 3 3 3 4 5 5 5 4 7 11 1996-1998 2006-2008 2016-2018 Top10%論文数の各国順位 ❊ 整数カウント 米国 中国 英国 ドイツ フランス 日本

しんぶん赤旗(pdf)funding_or_perish2022.pdf(pw: funding_or_perish2022)

しんぶん赤旗2022.01 . 16 大学ファンドの危険は支 援を受ける大学にも降りか かってきます。支援の要件 として課された自標が達成 できなけれぱ援助の打ち切 りもあり得るため、すさま じい重圧が大学にのしかか ってくるからです゜ 政府は、本来は各大学が 独自にファンドを立ち上げ るなど「自律的」に収益を 上げられるようにすべきで あり、大学ファンドはそう した体制をつくるための時 間短縮が自的だと説明しま す゜ 積み立て そのため大学ファンドの 支援を受ける大学には、年 3 %の事業成長と独自のフ ァンド創設に向けた和み立 てが課されます。しかし、 支援候補大本命の東京大学 でも2oo5S19 年の平均 成長率は1. 4 勿。日本の 代表的な11の研究大学(R ull)の乎均では0 •2% にすぎません。 独自のファンド創設はさ らに困難を極めます。政府 の大学ファンドは、1 校当 たり500 饂円を支援する 異次元 ファンド 危険な大学改革 ② RU l1 日本の代表 徊的な11 の政策 研究大学で組 織する団体で、正式名 称は学術研究懇談会。 北海道、東北、東京、 名古屋、京都、大阪、 九州、筑波、東京工業、 早稲田、慶応義塾の各 大学で構成。 想定で制度設計されていま す。同規模の運用益を各大 学が独自に稼ぐには、途方 もない額を和み立てなけれ ばならないからです゜ 鳥畑与一静岡大学教授 (金融論)は、500 僻円の 運用益を上げるには運用自 標を3 %としても1 兆66 67 領円の基金が必要にな ると指摘。毎年400 億円 ずつ積み立て3 %で運用し たとしても27 年、3oo 領 円では33 年、220 儲円で (%) 6.00 5.00 4.00 3.00 2.00 1.00 0.00 -1.00 —2.00 ■東京大学の事業成長率の推移(経常費用換算) ヘ -0.33 5.09 一. 0:45 0$•9 一; 1.18 は40 年かかるといいます゜ 他大学と比べ強い経営基 盤をもつ東大でも20年度の —_— _. —2.41 ー3 .00 2011 12 13 14 15 束大の財務諸表から作成、診療代用除く 16 17 18 19 経常収益は付属病院を含め て約2 4 00 位円。経常利 益はわずか4 節円です゜ 事業成長3 %とファンド 立ち上げに向けた巨額の槙 立金が強い庄力をかけ、稼 げる研究への「選択と集中」 が大学の経営戦略に組み込 20 (年度) 大学ファンドの原賓の9 割を占める財政融資資金は 20 年後から返済が始まりま す。大学ファンドの支援が 終わったとき、各大学でそ れに代わる収入源が確保で 穴埋めも まれることになります。企 業などからの外部資金獲得 が見込まれる応用研究系の 学部などへの資金傾斜と、 基礎研究や人文系学部の軽 視がいっそう加速しかねま せん。 独自のファンドを立ち上 げたとして、その運用を担 う人材がいるのかという問 題もあります゜ 「米国の大学が優秀なス タッフを雇い末公開株やヘ ッジファンドなどハィリス クな投資をしているのは、 国際金融市場で圧倒的競争 力を持つ米国だからできる こと。同じことが日本の大 学でできるのか」(鳥畑氏) きていなければ、研究打切りや学部再編など厳し事業計画見暉しを迫られことになります゜ 政府は、大学ファンドら支援を受ける大学に拠金を求め、同ファンドで体的に連用することで支援 からの「卒業」に向けた準 備をするとしています。ファンドから各大学への援額は、大学の外部資金得実績や蜀出金の状況をて決められるため、支援引き換えに多額の拠出金を 求められる可能性もありま す゜ 大学ファンドが撰失をした際、各大学の拠出金穴埋めに使われる懸念はいのか。内閣府の担当者は 可能性を否定するものの財務省の審議会は昨年12月 「支援を受ける大学も一のリスクを負うべき」だと する審議まとめを出してい ます。(つづく)

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