【定義】

ある具体的な解決を目的としておこなわれる対人コミュニケーションのこと。［→臨 床コミュニケーションデザイン］

【適用範囲の拡張】

もっとも典型的な例は、医療現場における医療者と患者の間でみられる相互作用である。ここで言う医療者とは、かならずしも医師だけをさすわ けではない。また、患者は、一般には病者とよばれ、広義には家族も含まれる。

【技法習得への社会的期待】

しかし、臨床の現場におけるコミュニケーションに類する行為は、学校教育の場、心理カウンセリングの現場、法律相談、友人間の悩み事の解決 など、さまざまな局面でみられる。臨床コミュニケーションの教育が、医療者、カウンセラー、教育者などの専門家以外にも必要なことは、患者学のように、相 談する者と相談される者の間では、さまざまな技法の習得が期待されているからである。

【行為主体の相互変換性】

また、相談される者である専門家もまた（その例として医師がガンになり入院することを想定したまえ）相談する者になるからである。

【臨床コミュニケーションの現場分析の必要性】

医療・福祉・コンサルテーションなどの業務は、具体的な専門知識と技量を有する人間と、問題を抱えその解決を求める人間のあいだのコミュニ ケーションを基調とする。治療・ケア・対応策を授けるといった具体的業務においては確実さと信頼性を確保するためには現場における対人的コミュニケーショ ンは不可欠であろう。またこの種のコミュニケーションは、つねにその成果を現場にフィードバックするものであり、現場から得られる知恵の習得・継承・発展 は欠かせない。

【臨床コミュニケーションと臨床コミュニケーター】

人間が社会的生活をおこなうかぎり続いてゆく、具体的な結果を引き出すためにおこなう対人コミュニケーションのことを、私たちは「臨床コミュニケーション」(human care in practice)と呼ぼう。そして、その教育において育てられる人たちを「臨床 コミュニケーター」と呼ぶことができる。

【社会的文脈の別名が「臨床」】

臨床コミュニケーションの場は、つねに具体的な状況——〈社会的文脈〉と呼ぶ——のなかで起こる。より適切な臨床コミュニケーションを生み 出すためには、個々のコミュニケーションが、どのような社会的文脈と結びつくのかを検討し、具体的な場——それが私たちの言う〈臨床〉にほかならない—— で検討することが重要になる。

——最後に偉大な社会哲学者の引用から：「人間の行為は、絶海の孤島のロビンソンを除けば、本質的につねに必ず相互＝行為である。なぜな ら、人間「である」ことは、つねに社会のなかで生きることに等しいからである」（今村仁司「社会空間の概念」p.46、『社会空間の人類学』西井涼子・田 辺繁治編、 Pp.32-47、世界思想社、2006年）

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本日の課題（2011年1月20日）

これまで受講してきた「臨床コミュニケーション２」を振り返り、また、個々の授業参加の体験をもとに「２１世紀における対人コミュニケー ション」は今後どのような展開を遂げるだろうか？　人間のコミュニケーション活動は量や質とも基本的に変化しない／大いに変化する／ある特定の量や質がと りわけ変化する／変化しないなどについて、焦点化したい事例をあげてグループ内のメンバー間で協議して、発表してください。

来週までの課題

来週の最終授業（2011年1月26日）

「２１世紀における対人コミュニケーションの未来像」というテーマで、マイクロソフトPowerPoint形式（あるいはPDFフォーマッ ト）の２〜３枚のスライドにまとめ、約３分程度の発表用スライドを作成してください。ファイルはUSBメモリーとして用意してください。またUSBメモ リー等がない／準備できない方は、授業の前日（26日）までに池田（rosaldo［あっと］cscd.osaka-u.ac.jp）にファイルを電子 メールにてお送りください。

来週の最終授業について

「２１世紀における対人コミュニケーションの未来像」に関する発表会を実施します。各人の持ち時間は３分間です。自分の発表を含めて、他の 院生・学生の発表について５段階評価で合評（非公開）をおこないます。参加者による合評と、教員集団の評価を加味して総合的に成績を評価します。

参考：2009年の授業成果発表会「21世紀における臨床コミュニケーションの未 来像」

当日配ったハンドアウトサイズ132K（Rinsho2_2011C9E.pdf）

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