人びとに尽くす動物たち
animals that offer the contribution for human society
万葉集第16巻「乞食者の詠二首(ほかひひとのう た、にしゅ)」には、鹿と蟹が、人間(歌の場合は「おほきみ」)に尽くす様を詠んだものである。このことを民俗学の歴史において最初に指摘したのは、折口 信夫(おりくち・しのぶ, Shinobu Orikuchi, 1887-1953)その人である。
万葉集 第十六巻
乞食者(ほかひひと)の詠(うた)二首
■3885
愛子(いとこ) 汝兄(なせ)の君 居り居りて 物にい行くと*
韓国(からくに)の 虎といふ神を 生け捕りに 八つ捕り持ち来
その皮を 畳に刺し 八重畳 平群(へぐり)の山に
四月(うつき)と 五月(さつき)の間(ほと)に 薬猟 仕ふる時に
あしひきの この片山に 二つ立つ 櫟(いちひ)が本に
梓弓 八つ手挟(たばさ)み ひめ鏑(かぶら) 八つ手挟み
獣(しし)待つと 吾(あ)が居る時に さ牡鹿の 来立ち嘆かく
たちまちに 吾(あれ)は死ぬべし おほきみに 吾(あれ)は仕へむ
吾(あ)が角(つぬ)は 御笠の栄(は)やし 吾が耳は 御墨の坩(つぼ)
吾が目らは 真澄の鏡 吾が爪は 御弓の弓弭(ゆはず)
吾が毛らは 御筆の栄(は)やし 吾が皮は 御箱の皮に
吾が肉(しし)は 御膾(みなます)栄やし 吾が肝も 御膾栄やし
吾が屎(みぎ)は 御塩の栄やし 老いはてぬ 我が身一つに
七重花咲く 八重花咲くと 申し賞(は)やさね 申し賞やさね
右の歌一首は、鹿の為に痛(おもひ)を述べてよめり。
■3886
押し照るや 難波の小江(をえ)に 廬(いほ) 作り 隠(なま)りて居る
葦蟹を おほきみ召すと 何せむに 吾(あ)を召すらめや
明らけく 吾(あ)は知ることを 歌人(うたひと)と 我(わ)を召すらめや
笛吹きと 我を召すらめや 琴弾きと 我(わ)を召すらめや
かもかくも 命(みこと)受けむと 今日今日と 飛鳥に至り
置かねども* 置勿(おきな)に至り つかねども 都久野(つくぬ)に至り
東(ひむかし)の 中の御門ゆ 参り来て 命受くれば
馬にこそ 絆(ふもだし)掛くもの 牛にこそ 鼻縄はくれ
あしひきの この片山の 百楡(もむにれ)を 五百枝(いほえ)剥き垂り
天照るや 日の日(け)に干し さひづるや 柄臼(からうす)に舂き
庭に立つ 磑子(すりうす)に舂き* 押し照るや 難波の小江の
初垂(はつたれ)を 辛く垂り来て 陶人(すゑひと)の 作れる瓶(かめ)を
今日行きて 明日取り持ち来 我が目らに 塩塗り給ひ
もちはやすも もちはやすも
右の歌一首は、蟹の為に痛(おもひ)を述べてよめり。
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出典:http://www.asahi-
net.or.jp/‾sg2h-ymst/manyok/manyok16.html
※以下は、難解漢字の読みのルビを省いたものである
乞食者の詠二首(万葉集第16巻)
3885
愛子汝兄の君居り居りて物にい行くと
韓国の虎といふ神を生け捕りに八つ捕り持ち来
その皮を畳に刺し八重畳平群の山に
四月と五月の間に薬猟仕ふる時に
あしひきのこの片山に二つ立つ櫟が本に
梓弓八つ手挟みひめ鏑八つ手挟み
獣待つと吾が居る時にさ牡鹿の来立ち嘆かく
たちまちに吾は死ぬべしおほきみに吾は仕へむ
吾が角は御笠の栄やし吾が耳は御墨の坩
吾が目らは真澄の鏡吾が爪は御弓の弓弭
吾が毛らは御筆の栄やし吾が皮は御箱の皮に
吾が肉は御膾栄やし吾が肝も御膾栄やし
吾が屎は御塩の栄やし老いはてぬ我が身一つに
七重花咲く八重花咲くと申し賞やさね申し賞やさね
右の歌一首は、鹿の為に痛を述べてよめり。
3886
押し照るや難波の小江に廬作り隠りて居る
葦蟹をおほきみ召すと何せむに吾を召すらめや
明らけく吾は知ることを歌人と我を召すらめや
笛吹きと我を召すらめや琴弾きと我を召すらめや
かもかくも命受けむと今日今日と飛鳥に至り
置かねども置勿に至りつかねども都久野に至り
東の中の御門ゆ参り来て命受くれば
馬にこそ絆掛くもの牛にこそ鼻縄はくれ
あしひきのこの片山の百楡を五百枝剥き垂り
天照るや日の日に干しさひづるや柄臼に舂き
庭に立つ磑子に舂き押し照るや難波の小江の
初垂を辛く垂り来て陶人の作れる瓶を
今日行きて明日取り持ち来我が目らに塩塗り給ひ
もちはやすももちはやすも
右の歌一首は、蟹の為に痛を述べてよめり。
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