か ならずよんでください

ポートフォリオ理論による大学受験の方法

Applied Portfolio theory for preparing of Japanese university entrance examinations


解説:池田光穂

ポート フォリオ portfolio → 用語法はこのページの後半にあります。最初から本論にはいります!
■受 験としてのポートフォリオ
これを受験で考えてみると、どうなる のか?

つまり、ここでの投資理論は、志望校を複数化し分散投資することである。投資における利益の回収(=合格数を増えて、その受験生にとってより難関な大学 =入りたい大学がその中に含まれること)を最大に、結果としてのリスクを最小にする(=合格数が少なくなり、かつ優先度の低い大学だらけになる)を最小に する。このことに他ならない。

ポートフォリオ理論でいう、安全な資産は、その人の実力に対して「入りやすい」志望校ということになる。また、危険な資産とは「入り難い」志望校であ る。これらの複数の志望校の組み合わせが、ポートフォリオということになる。

沢山受験することは受験料が無駄になり勿体ないという考え方があるが、少なくともどこか1校に入るという目的を受験生は至上命題にするので、優先度の高 い大学に入るための「必要経費」であれば、その額は初期投資として無視できる。また、複数受験することによる、体力の消耗も、センター入試の点数を使うと いう多くの私立大学があるために、受験校を増やすことのデメリットは、ここでは考えなくてよい。

また、実力も考えず、なにがなんでも、最も行きたい大学に進学すべきだということも(不合格者が厳然として存在するという意味で)現実的には馬鹿げてい る。高校受験に際して学習塾の校長が根性主義を振りかざして受験者とその家族に吹聴する内容は、およそこのポートフォリオ理論のような冷静さは全くない。 大学に入学するのは、(高校と異なり)入学後に勉学やそれ以外の課外活動を豊かにおこなうことで、卒業時に、自分にも他人にも有為な人材になっていること こそが重要だからだ。

したがって最も適切な受験の組み合わせによって、その人にとって、より「相応しい大学」が最適化される——事後的に決定する——ことが可能になる。おま けに、経験的事実から、(1)不本意であっても入ってからその大学の魅力に出会い、就学期間を有意義に過ごせる人がいる、一方で(2)憧れの大学に入って も(本人にコントロールできないことも含めて)不幸な出来事が続き、就学そのものが不本意になることがある。このことにより、ポートフォリオの考え方に従 い、最も適切な受験の組み合わせの結果に従い、その時に合格した中で、もっとも優先度が高い大学を選択することは、入学後の不安を軽減し、人生についての 中長期的なビジョンを立てることに貢献することができる。少なくとも、なにがなんでも入学する大学を1本化しても、落ちれば意味がないし、他方、合格して も、そこの時点で目的が消失——バーンアウト(燃え尽き)という——するという危険性もある。根性主義は、受験時期を持続させるためには効用があるが、入 学後のキャリア形成のためには、何の貢献もしないどころか、偏った大学観を再生産するという意味でも有害である。
 では具体的に入りたい大学をどのように分けるのか?

 A〜Eの五ランクに志望大学を分散させる。:の次の数字は受験。Aに近づけば「危険資産」であり、Eはもっとも確実な「安全資産」である。

A:希望はゼロではないが、入ることが難しい志望校:1
B:合格圏内の実力をもつことはあるが、常時発揮できるものではないレベル:1〜2
C:進学指導において普段の実力で合格が期待できる大学:2〜3
D:合格できて、かつ入学時の成績が上位にマークすることができる大学:1〜2
E:確実に入学出来る大学だが、受験生にとって少なくともリスペクトできる点が最低ひとつ以上ある大学:1


これだけのポートフォリオを確保するためには、受験校は、国公立あわせて6校〜9校が必要になる。

入学金のコストを下げる努力としては、両側のAとEを削る方法があるが、もし削る場合はA→Eで削るべきだろう。

ただし、Aを含めずEはキープしたまま、5校にするのは、先に述べたように、受験料は必要経費という考え方からみると、ここで節約するという考えはパ フォーマンスが悪いために、浮いた1校をBないし、Cに割り当てるほうがいい。ここから得られる教訓は「冷やかしで自分の実力を超える大学を受験するのは 愚行に等しい」ということだ。ちなみにAを浮かした分をBに投資するのは「冒険家」で、Cに投資するのは「堅実家」という戦略で、どちらの 戦略をとるか は、受験生の気質や、それまでも実力試験のムラ(=出来不出来)や、受験直近の成績の伸び(=微分係数)で判断したほうがいいかもしれない。ただし、人間 はいきなり「戦略家」から「堅実家」になれないし、またその逆も困難である。受験という比較的退屈なタスクをこなすためには、むしろ、受験生は、受験とい うポートフォリオに対して、どのように取り組むのかいう「自己の役割」を与え、それを信じ切り、受験するほうがよい。また、入学後の勉強(あるいは課外活 動を含むキャンパスライフ)や進路も、このポートフォリオの投資(=受験)分散に影響を与えるだろう。

■結論

大切なことは、ポートフォリオからみると、確実に入れる大学も、受験生がしばしば陥りやすい「自分の実力以下の大学は、自分に相応しい大学では ない」と いうリスク(これは私の定義からみるとハザード)なのではなく、受験生にとっては「安全資産」であるということだ。だから受験産業・進路指導の先生、そし て大人多くの人たちがいうFランクの大学が、すべて経営にも教育にも行き詰まっている危険水域の大学という訳ではない。大学受験で、一番のリスクであり、 またハザードは合格できない高いレベルの大学に無防備に挑戦して「不合格」になることである。さらにポートフォリオ理論において重要なことは、自分が選択 した大学に合格することは、そのレベルが受験生にとっていかようなものであっても「安全資産」になるということだ。

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099
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【用語法の解説】

  ポートフォリオはsheet carrier 、紙ばさみや書類フォルダーの意味であるが、金融業界では、個人や機関の投資家がもっている有価証券[資産]の一覧表のことをさす。つまり、象徴的には ポートフォ リオ(紙ばさみ)に入っている個々の証券や株券のことの集合体のことである。さてこの資産は、将来にわたってリターンをもたらすと同時に、その価値が変動 するかもしれないというリスクをもつ。
 ハ リー・マルコヴィッツは、投資の個々の戦略を複数の組みわせからなるもの(=資産 構成, portfolio)とし、有 価証券への分散投資をすることで、利益を最大に、リスクを 最小にすることが重要であることを理論として提唱 した(これをポートフォリオ理論という)。すなわち、期待収益率と期待収益の分散という2つの変数により、通常の効用の極大化の手法で資産選択行動を説明 することができるようになった。(図を参照)。ここでそれぞれの経済主体は、【期待収益】と【収益の分散】からなる平面に描かれる無差別曲線で表現され る。危険資産(C〜Dの曲線)を組み合わせることにより、収益が高く分散が小さくなるような資産構成(ポートフォリオ)を作ることができる。安全な資産と は収益がゼロで名目価値変動もしない貨幣と、危険資産を組み合わせれば、その接点Bが、有効なフロンティアになる。有効フロンティアと無差別曲線の接点A が、最適な資産構成となる

 こ のことから、ポートフォリオは、戦争する主体が動員できる兵器・戦術・補給資源な ど の総体をさすと同時に、それが明細表の形で表記さ れ、分節化され、有機的な組合せにより、戦術レベルでの効果を発することができる潜在性をもった潜在的配置図であることがわかる。ここで重要な運用原理 は、〈運用効率〉と〈リスクの回避〉とである。
 経済学におけるポートフォリオ選択(portfolio selection)は、資産選択というふうにも訳される(岩波経済学辞典)。
◎文献
- Tobin, J., 1958. Liquidity perference as behavior towards risk, The review of economic stdies. (水野正一・山下邦男監訳「危機に対する行動としての流動性選好」『現代の金融理論(I)』1965)
 ポートフォリオ理論は、投資の運用理論で、有価証券への分散投資をすることで、利益を最大に、そしてリスクを最小にする方法である。
ポートフォリオ (承前)
030325portfolio.html

附論 補足する理論——心理的効用とポートフォリオ全 体への貢献について

以前、志望校選択には、ポートフォリオ理論が結構使えるのではないかと言いましたが、 それは、合格校のパフォーマンスを、期待値(確率×満足度)の分布で考え、ポートフォリオを、投資に見合った資産回収をより効率的にしようと考えたもので した。

しかし、冷静に考えてみると、合格率をあげるためには、その合格する確率を上げるということで、ポートフォリオ全体の「資産価値」(=合格の満足度)を上 げることにもの繋がりますので、そのことを、科目点数の不均等分布という観点から、管理するという姿勢も重要なのではないかと、私は考えるに到りました。 つまり、限られた時間に、合格のパフォーマンスを上げるための、総点数の向上に、どのような努力(=時間と労力の投資行為)が効率的なものかということで す。

そうすると、よくできる科目に、今以上の努力をして点数を上げるよりも、苦手な科目(=好き嫌いとは関係なしにポイントが低い科目や領域)の克服は、点数 向上のためには「効率的に働くのではないか」と考えます。なぜなら、苦手科目への投資(=時間と労力をかける)ことにより、もし、点が上向きになるとする と、そのことだけが嬉しいのではなく、苦手意識を、点が向上したことで、さらなる努力への投資に振り向けることに繋がるという心理的インセンティブもある のではないかと思うことです。他方、好きな科目(=好き嫌いとは関係なしにポイントが高い科目や領域)へのさらなる投資は、努力の割には成長が少なく、総 得点への寄与率が低いということになります。

もちろん、これは単純な「嫌いな科目の克服法」なのではありますが、投資と「点数が上向いた時の心理的インセンティブ(=やる気・今後の動機)」という心 理的効用もあるという主張です。

もちろん、苦手科目が満点になっても試験点数の配分(=配点)が少ないものにより多くの投資をするのには限界がありますが、心理的効果は抜群です。入試が 近づくにつれて、細かい点数の配分と労力投資についての調整は必要ですが、こういう論理は、入試勉強を飽きる事なく安定して続けるための心理的管理に役立 つはずでしょう。
試験にリラックスするというメンタル管理も重要になりますが、これは、他のライバルも五十歩百歩なので、各人が自分なりの方法をみつけてゆく必要がありま す。
十分にお役に立てないかもしれませんが、なにかのヒントになるかもしれません。御参考にしてください。




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