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妖術を信じなくても妖術を理解することは可能である

Anthropologists explain what happens when they are attributed to witchcraft, and not, as among ourselves, to other causes.

池田光穂

妖術(ようじゅつ)とは、ザンデ語のマング (mangu)を、エヴァンズ=プリチャードが翻訳した際に与えた witchcraft の翻訳語である。ウィッチクラフトつまり、中世ヨーロッパのウィッチ(魔女)がおこなう施術としてのwitchcraft の用例は古く、OEDには11〜12世紀まで遡れるという。しかし人類学のいうウィッチクラフトは、エヴァンズ=プリチャードの独特のマングの用例で使わ れるもので、マングという言葉と概念で理解するアザンデ人以外には、類似のものがみつからないという、ややこしい起源をもつものである。

マングとは、アザンデの平民のうちある特殊な人がも つ腸の突起のことで、その人が他人に腹をたてたりすると、そのマングが超自然的な力を発揮して、その他人に危害を加えるという。マングをもっていることは 自覚するが、誰に対して攻撃するのかは、本人にもわからないらしい。それに対してアザンデの支配者層たる貴族では、意図的な超自然的な攻撃が可能で、エ ヴァンズ=プリチャードは、こちらのほうをソーサリー(sorcery)と名づけている。この訳語は、社会人類学者の馬淵東一(まぶち・とういち 1909-1988)が日本語の「邪術(じゃじゅつ)」の翻訳語として定着させたらしい(長島 2007)。この邪術(=悪意のある人が意図的に超自然的な力を行使して攻撃する)というものと、珍しいアザンデの妖術(=本人の意図とは無関係に他者に 危害を加えてしまう)を多くの研究者は混乱して使っているのが現状である。

エヴァンズ=プリチャードの民族誌(1937)のマ ングの検討以前にも古典的な意味で/そして邪術の意味で、ウィッチクラフト(妖術)が使われるのは、超自然的な攻撃(意図的、非意図的を問わない)と、そ の神判(あるいは審判=近代法体系でも呪術や妖術を悪意のあるものとして禁止することがある)が、どのような社会にも膾炙しているからである。にも関わら ず、非意図的な攻撃という意味でのアザンデのマングの重要な意義は失われない。

17■妖術を信じなくても妖術を理解することは可能 である

"Now this is not because the anthropologist becomes committed to a belief in witchcraft as the Azande understand it. He views it from quite a different angle. By reference to witchcraft, the Azande account for certain sorts of misfortune, and death; the anthropologist does not seek to account for these troubles by his theory of witchcraft, but to explain what happens when they are attributed to witchcraft, and not, as among ourselves, to other causes. "( Lienhardt 1956:102)

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