学知としての「医学」の問題
Medicine as Intelligence
20■学知としての「医学」の問題
日本語の医学には、医療に関する科学すなわち「医の 学知」という面が強調され、「医の実践」であるところの医療と、字面では区分されている。例えばその人 称語としての医学者は研究者であり、医療者は実践者という語感で受け取られる。しかし、英語のメディシンあるいはメディスン(medicine)は、医学 と医療を兼ね備えたものである。
OEDの"medicine"の冒頭には、その語源 として"a. OF. medecine, medicine (mod.F. médecine), ad. L. medicīna (1) the art of the physician, (2) a physician's laboratory, (3) a medicament, remedy, f. medic-us physician"[フランス古語の借用:medecine, medicine(現代フランス語:médecine)、ラテン medicīna の翻案、すなわち(1)医師の技(アート)、(2)医師の研究室、(3)薬や治療法、であり、それらはmedicus physician に由来する]と記した後に、一番最初の語義として、"1. That department of knowledge and practice which is concerned with the cure, alleviation, and prevention of disease in human beings, and with the restoration and preservation of health,"(人間がかかる病気の治療と緩和と予防に関する、および健康の回復と維持に関する、知識と実践の領域[や分野])と示したあと、それ以外 の5つの項目、都合6つのセクションで語義の解説とその歴史的用例を挙げている。このことから、英語における医あるいは医療(medicine)の意味に は、病気の治療と予防に関わる、(a)技術的資源、(b)治療の空間、(c)物質的資源、という三要素が含まれていることが分かる。医の旧漢字の「醫」に は、「矢」を収納する「匚」に「殳」(背丈に満たない長さの矛)に酒を意味する「酉」ものから構成されている。それゆえに、宗教的意味としての呪術、病気 を攻撃する武器、酒からの派生として考えられる医薬の意味があると言われている。漢字の「醫」同様、学知としての医学を含む、総体としての医療は、さまざ まな学知や実践の意味が含まれた混成体であることが分かる。
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