かならず 読んでください

虎は歴史を語れるのか?

Can extinct Chinese tigers speak ?

taiwanese_tiger_for_independence.jpg

池田光穂

書誌:上田信『トラが語る中国史:エコロジカル・ヒスト リーの可能性』山川出版社、2002年

章立て:

リンク

文献

その他の情報

●コメント

上田がいう、エコロジカル・ヒストリーは通常、環境史(Environmental history)と呼ばれるものである。
"Environmental history is the study of human interaction with the natural world over time. In contrast to other historical disciplines, it emphasizes the active role nature plays in influencing human affairs. Environmental historians study how humans both shape their environment and are shaped by it."(Wiki-Eng-Environmental history)
・・
「歴史とは、偉人や指導者がつくるものであっ て、民衆や野生動物はその主役になれないとばかり思われてきた。かれらは史料を書き残さないからである……民衆や野生動物の歴史も、工夫次第で何とかな る」 という上田の記述は、歴史を語る主体を人間から環境や「トラ」に置換しても理論的には可能だが、現実的には、史的腹話術(historical ventriloquism)を弄さずを得ず、ニューヒストリー的な意味でのサバルタン研究の著名なタイトル「サバルタンは語れるか(Can the Subaltern Speak?)」を捩れば、そのような歴史叙述のスタイルは――教室での教育的チャンスを除けば――もはや終わっているのである。 もっとも上田は決してトラに語らせるという大胆なことは一切しておらず、その語り口のスタイルを、それも一部だけ取り入れて語っているにすぎない。むし ろ、中国という広大な地域――地理空間が極めて大きなスケールに比して、その心的な領域と(野生動物を含めて)少数民族には寛容性がなくきわめて狭量な心 的領域なのだが――歴史の環境史をコンパクトにまとめた、一種の教科書あるいは、卒論のためのネタ探し集のようになっており、その記述のバランスもよい。
[章立て構成など]
1. ヒトが来る前 005
トラの無念 005
アモイトラの生態 009
常緑広葉樹の森 015
極相と遷移 016
温量指数 022
ケッペン指数 028
文明揺籃期の気候 030
終南のアモイトラ 034
2. ヒトと遭う 040
先史時代のヒト 040
百越の世界 043
漢代の越 048
ビン(門構えに虫)越国 054
人口の変動 057
歴史時代の気候変動 062
気候変動のずれ 067
江南開発の歴史 070
地域の履歴 074
モンゴルの聖家族 079
物質の供給地 082
3. ヒトに畏れられる 086
小説にみるトラとヒト 086
トラがヒトを襲う理由 089
天とヒトとトラ 092
陰界のトラ 095
駆虎文 098
トラの出没 104
4. ヒトに追いつめられる 109
山林と風水 109
人里に出る 114
商業の時代 118
生態環境の激変 123
棚民の流入 131
人口の急増 135
風水と山林の保全 140
5. 大虐殺、その後 145
命を落とす 145
大虐殺 150
共産党が来る前 154
ソビエト政府と山林 161
農村の集団化 164
野生生物の悲劇 169
虐殺から保護へ 172
虎皮と虎骨 177
トラとヒトの共存 182
李時珍(1518-1593)「本 草綱目」(1578)
 獣部:瘧(おこり)「瘧疾(ぎゃくしつ)」に効果をもち、邪魅を避けると記されている(178ページ:李[自]珍は、李時珍の間違いか?)
本草経集注 Běn cǎo jīng jí zhù(正確には、神農本草経集注)に虎骨の効能の記載あり
「《集注本草》とも呼ばれる。500年ころに陶弘景が編纂した中国の本草書(薬物書) である。彼は当時伝存していた本草書のうちで365の薬品を収載していた《神農本草》(《本経》と略す)を底本にし,それに《名医別録》(《別録》)の 365の薬品とその説を加え,合計730の薬品を収録する3巻の《神農本草経》を編纂した。その上巻は総論で,《神農本草》の文のほかに薬物の分量,製剤 法,病症別の用薬名と配合禁忌などを述べている」(出典:世界大百科事典、平凡社)

虎骨酒
「日本にも虎骨が配合されている舒筋丸、活絡丸、海馬補腎丸、健歩丸、虎骨酒などが輸入されていた。現在トラの生息数が減少しており、ワシントン条約でも 虎骨の含まれる漢方薬は制限されている。そのため近年ではイヌ(狗)の狗骨などで代用されている」(出典「虎 骨」)
ワシントン条約=絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約
CITES (サイテス): Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(外務省記述)
4.規制の方法
 以下の通り,野生動植物の種の絶滅のおそれの程度に応じて同条約附属書に掲載し,国際取引の規制を行う。
(1)附属書 I :
 絶滅のおそれのある種であって取引による影響を受けており又は受けることのあるもの。商業取引を原則禁止する(商業目的でないと判断されるものは,個人 的利用,学術的目的,教育・研修,飼育繁殖事業が決議5.10で挙げられている)。取引に際しては輸入国の輸入許可及び輸出国の輸出許可を必要とする。
(2)附属書 II :
 現在必ずしも絶滅のおそれのある種ではないが,その標本の取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種となるおそれのある種又はこれらの種の標本の 取引を効果的に取り締まるために規制しなければならない種。輸出国の許可を受けて商業取引を行うことが可能。
(3)附属書 III :
 いずれかの締約国が,捕獲又は採取を防止し又は制限するための規制を自国の管轄内において行う必要があると認め,かつ,取引の取締のために他の締約国の 協力が必要であると認める種。附属書 III に掲げる種の取引を,当該種を掲げた国と行う場合,許可を受けて行うことが可能。



****



Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 2013-2019


Do not paste, but [re]think this message for all undergraduate students!!!

taiwanese_tiger_for_independence.jpg