アルマアタ宣言
Declaration of Alma-Ata, 1978
「アルマ・アタ宣言
1978年9月、旧ソ連のカザフ共和国の首都アルマ・アタに、世界140カ国以上の代表 がWHOとユニセフの呼びかけで集まり、 国際会議が開催された。この会議で、「西暦2000年までにすべての人に健康を」という目標を定め、 そのための世界戦略として、プライマリー・ヘルス・ケア(PHC)と言う理念を打ち出した。
(1) 本会議では、健康について、以下のように強く再認識する。健康とは身体的精神的 社会的に完全に良好な状態であり単に疾病のない 状態や病弱でないことではない。健康は基本的人権の一つであり、可能な限り高度な件高水準を達成することは最も重要な世界全体の社会目標である。その実現 には保健分野のみでなく他の多くの社会的経済的分野からの行動が必要である。
(2) 人々の健康に関してとりわけ先進国と発展途上国の間に存在する大きな不平等は国 内での不平等と同様に政治的社会的経済的に容認 できないものである。それ故全ての国に共通の関心事である。
(3) 「新国際経済秩序」に基づいた経済社会開発はすべての人々の健康を可能な限り達 成し先進国と発展途上国の健康状態の格差を縮小 するために基本的の重要なことである。人々の健康を増進させ保護することは持続した経済的社会的発展に欠くことのできないものでありまたより良い生活の質 と世界平和とに貢献するものである。
(4) 人々は個人または集団として自らの保健医療の立案と実施に参加する権利と義務を 有する。
(5) 政府は国民の健康に責任を負っているがこれは適切な保健及び社会政策の保証が あってはじめて実現される。政府国際機関およびす べての国際社会の今後数十年の主要な社会目標は西暦2000年までに世界中のすべての人々が社会的経済的に生産的な生活を送ることができるような健康状態 を達成することである。PHCは開発の一環として社会正義の精神に則りこの目標を達成するための鍵である。
(6) PHCと は、実践的で、科学的に有効で、社会に受容されうる手段と技術に基づい た、欠くことのできない保健活動のことである。 これは、自助と自決の精神に則り、地域社会または国家が開発の程度に応じて負担可能 な費用の範囲で、地域社会の全ての個人や家族の全面的な参加があって、 はじめて彼(女)らが広く享受できうるものとなる。PHCは国家の保 健システムの中心的機能と主要な部分を構成するが、保健システムだけでなく、地域社会 の全体的な社会経済開発の一部でもある。PHCは、国家保健システム と個人、家族、地域社会とが最初に接するレベルであって、人々が生活し労働する場所に なるべく接近して保健サービスを提供する、継続的な保健活動の過程の第一段階を構成する。
(7) PHCは、
A 国家と地域社会の経済状態と社会文化的および政治的特徴を配慮するものであり、かつ、そこから進展する。その基盤は、関連する 社会的、生物医学的、保健サービス上の研究成果の応用と公衆衛生の経験にある。
B 地域社会における主要な健康問題を対象とする。それは、健康増進、予防、治療、社会復帰のサービスを適宜提供することであり、 したがって、
C 少なくとも次のものを含む・・・・主要な保健問題とその予防・対策に関する教育、食糧供給の促進と適切な栄養、安全な水の十分 な供給と基本的な衛生措置、家族計画を含む母子保健、主要な感染症の予防接種、風土病の予防と対策、日常的な疾患と外傷の適切な処置、必須医薬品の供給。
D 保健分野に加えて、国家や地域の開発、とくに農業、畜産、食料、工業、教育、住宅、公共事業、通信、その他全ての関連した分野 を含み、これら全ての分野の共同した努力が必要である。
E 地域、国家、その他の利用可能な資源を最大限利用し、地域社会と地域住民が最大限の自助努力を行い、PHCの計画、組織化、実 施、管理に参加することが重要であり、これを推進する。そして、この目標のために、適切な教育を通じて地域住民がこれに参加する能力を開発する。
F 統合的で機能的な相互支援の体制によって維持されなければならない。そのことにより全ての人々を対象とする包括的な保健を継続 的に改善し、もっとも必要とされている人々を最優先する。
G 地域や後方支援レベルにおいても、保健医療チームとして働くために、また地域社会が求める保健ニーズに応えるために、社会的に も技術的にも適格に訓練された保健ワーカー、すなわち、医師、看護婦、助産婦、補助要員、可能であれば地域ワーカーや、必要によっては伝統治療師たちの力 を必要とする。
(8) すべての政府は、PHCを、他の部門と協力し、包括的国家保健システムの一部と して着手し維持していくために、国家の政策、戦 略、および行動計画を作成すべきである。この目的のために政治的意思を実行し、国内資源を動員し、利用可能な外部資源を合理的に活用することが必要であ る。
(9) 全ての国々は、すべての人々にPHCを保証するために、パートナーシップと奉仕 の精神で協力すべきである。一国の保健目標が達 成された場合、これは、他のあらゆる国に直接に影響し、恩恵を与えるのであるから。これに関連して、PHCに関するユニセフとWHOの合同報告書は、全世 界でのPHCの将来の発展と実施に向け、確固とした基礎となる。
(10) 現在かなりの部分が軍備と軍事紛争に使われている世界の資源を、十分にかつよ りよく利用すれば、世界中のすべての人々の健康 水準は西暦2000 年までに十分達成可能となろう。独立、平和、緊張緩和、軍縮への真の政策は、平和的目的、とくに社会経済開発の促進のために適切に活用されるさらなる資源 を生み出すことができるであろうし、また、そうすべきである。その中で、PHCは、必要不可欠な要素として、資源が適切に割り当てられるべきである。
「PCHに関する国際会議」は、技術協力の精神のもと、「新国際経済秩序」と歩調を合 わせ、全世界、とくに発展途上国においてPHC を発展させ、実施するための緊急かつ効果的な国家的および国際的な活動を要請する。本会議は、政府、WHOとユニセフ、その他の国際機関、二国間および多 国間の援助機関、NGO、資金援助団体、すべての保健ワーカー、および全世界の国々に対して、PHCを推進するための国家的、国際的行動を支援し、とくに 発展途上国において、PHCへの技術的、財政的支援を拡大するための方策の道を開くよう要請する。本会議は上述の全機関と全関係者に対して、本宣言の精神 と内容に則ってPHCを導入、発展、維持していくための協力を求めるものである」。
出典:http://www.cbr.in/book/almaata.html
クレジット:■アルマアタ宣言(あるいは、アルマ・アタ宣言、アルマトイ宣言、アルマ・トイ宣言)全文を掲載します。
参考文献:いのち・開発・NGO 子供の健康が地球社会を変える David Werner 著 池住義憲 訳 新評論
Mitzub'ixi Quq Chi'j. 2015