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シラバスコンクールを通した大学教育改革モデル

報告者:池田光穂

大学院横断教育部門会議 2015年4月2日
摘要:
(訪問先)
国立大学法人B大学学務企画課
高等教育推進機構・高等研究部
日時:2015年3月25日
入手資料:

【摘要】
・シラバスコンクールは、組織の9名の教員のうち4名が担当して、募集にもとづいて選出する。選出数は(数十?)90〜100件程度のものがある。
・それぞれの部局には依頼し、部局ごとにシラバスを推薦してくるが、部局の取り組みの情熱はシラバスの応募本数に反映しているようだ。一般的に医歯薬系は シラバスコンクールの応募には熱心なようである。
・医歯薬系の応募が熱心な背景には、全学のFDへの若手教員の参加の他に、自前でFDをやっているようで、そのような実施実績が、よくできているシラバス の多さに反映しているのではないかと、A教授は分析。
・シラバスは、全学共通教育(1〜2年生)、学部専門(3〜4年生)と、大学院生(各研究科)のものがある。
・シラバス改善のための啓蒙活動は、1998年のFDから盛り込むようになって、引き続きおこなっている。
・シラバス評価の採点方法は、6項目について各項目3点満点で加算採点し、18点満点で評価を出す。
・12月のシラバス入力の時期に、当該年度のシラバス優秀なシラバスをpdfでダウンロードすることができ、それを参照して、シラバスを書けるように、公 開の時期を配慮している。
・シラバス改善だけのFDを実施しているのではなく、国立大学法人B大学に毎年就職する100名ほどの新入教員のうち6割ほどが1泊2日の新人研修を受け る。この人たちの類型受講者は現在では、およそ千人に上っている。FDへの関心の高まりや、シラバス改善に成果があるとすれば、そのような効果もあるのだ ろう。
・国立大学法人C大学のD准教授が、シラバス改善について精通しているので、話を聞けばよいと、A教授からうかがう。
・なぜ北米著名大学からのTAセミナー等が多いのか質問したら、すでに物故されているE教授のご縁で、当該大学に派遣したり、また、当該大学からもセミ ナー講師を招へいして、国立大学法人B大学大学でワークショップを開催している。
・シラバスの評価(=コンクール)よりも、もちろんFDの実施とその実効のほうがが重要である。
・シラバスコンクールとあわせて(教育熱心な)教員が気にするのが「エクセレント・ティーチャー」で、しばしば、同僚の表彰に対して「自分のほうがよい授 業」をしているという自負のある声も聞こえるとのこと。A教授によると、それは、それで(自己研鑽の向上には)好ましいことであると指摘している。
・年配の経験のある先生には、シラバス改善に抵抗があるのでは?という質問には「50歳以上の先生には、それほど期待していません」とA教授。話をよく伺 うと、コンプライアンスが悪く、説諭や指導などの改善よりも、より若い世代に対してFDを通して、シラバスの「新しい書記法」を学んでもらうほうが近道と のことであった。
【結論】
・シラバスの改善は次の4つのポイントにまとめられよう。

  1. 1)シラバスの改善は、ファカルティーディヴェロップメント(FD)の一連の流れのなかで若手教員を中心に指導されていく必要がある。
  2. 2)全学のFDの教員を派遣するのみならず、自前のFDを開催している組織には、シラバスの質の高いものが多い。
  3. 3)シラバスは、授業の内容紹介や学生への誘いという類いの文章ではなく、どのような授業をどれだけの具体的な到達目標をマニュフェストする 「契約文書」であるということ。
  4. 4)シラバスの改善動向には、教員の世代間の移りかわりという中程度の時間的推移を見守る必要があり、コンクールなどの実施を通して、他の教 員の優秀なシラバスを閲覧することは、自らのシラバスの書き方への反省を促し、また、意欲的な書記法を模索する可能性が広がる。

■文科省の大学院改革について、とそれに関する池田のコメントや提案

平成28年度から予定の「第3次大学院教育振興施策要綱」への取り組み予定

1)体系的・組織的な大学院教育の推進と学生の質の保証
2)産学官民の連携と社会人の学び直しの促進
3)専門大学院の質の向上
4)大学院修了者のキャリアパスの確保と進路の可視化の促進
5)世界から優秀な高度人材を惹き付けるための環境整備
6)教育の質を向上するための規模の確保と機能分化の推進
7)博士課程(後期)学生の処遇の改善

1)体系的・組織的な大学院教育の推進と学生の質の保証

 >>>高度副プログラム副専攻教育は、確実に大学 院教育の質を上げており、本学の大学院生間のフォーマル/インフォーマルなコミュニケーションのネットワーク形成に寄与している。その最大の収穫は、高度 教養教育履修者は、大学院の共通教育に批判眼をもち、教員にアドバイスする院生もまれではない。(綜合大学の大学院ならでは量が質を変えつつある証拠)

2)産学官民の連携と社会人の学び直しの促進

 >>>社会人学生の履修相談や、学生のサブカルチャーに馴染むための、ワン・ストップサービスをCSCDが提供できる。(現在、総合図書館が試みているTAによる学生指導や学術相談の、大学院生版)

3)専門大学院の質の向上

 >>>直接には相当しませんが、専門大学院の院生の自律的学習主体の構築には、側面から人材育成を支援することができる。

4)大学院修了者のキャリアパスの確保と進路の可視化の促進

 >>>院生自身が各人に与えられた研究を通してキャリアパスを切り開いていくためには、専門分野のメンターと連携する研究者としてのキャリアパス・デザイン力(=デザイン力)を育成する回路が必要。それをお手伝いできるはず。

5)世界から優秀な高度人材を惹き付けるための環境整備

 >>>専門分野を超えた、ノーブルな知的教養が集うファカルティクラブの創設が不可欠。

6)教育の質を向上するための規模の確保と機能分化の推進

 >>>TLSCの活動を、大学院教員にも押し広げる必要。この活動は、FD教育の質のレベルの向上につながる。

7)博士課程(後期)学生の処遇の改善

 >>>(承前)専門分野を超えた、ノーブルな知的教養が集うファカルティクラブの創設が不可欠。

関連リンク(外部)

■【活動報告】自学自習を促すシラバス作成法【吹田:120分】
http://www.tlsc.osaka-u.ac.jp/events/141127_1
■【活動報告】ルーブリック評価入門 〜時短・ブレない・公平な評価方法〜【吹田:120分】
http://www.tlsc.osaka-u.ac.jp/events/141127_2

リンク(サイト内)

文献

その他の情報

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For all undergraduate students!!!, you do not paste but [re]think my message. Remind Wittgenstein's phrase,

"I should not like my writing to spare other people the trouble of thinking. But, if possible, to stimulate someone to thoughts of his own," - Ludwig Wittgenstein