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薬学コミュニケーション

Communication Competence for Pharmacists

(パイロット版)

池田光穂

薬学研究科2017年度夏学期授業「ヘルスコミュニケーション」(火曜5-6限:6/13- 7/25)はこちらです!

授業計画案 「ヘルスコミュニケーション」 (Health Communication)——シラバス

授業計画案 「ヘルスコミュニケーション」 (Health Communication)

■授業担当者:薬学研究科教員(複数)、TAによる 支援つき

■履修対象/Eligibility:4年次以上

■開講時期/Schedule:(半期)

■講義室/Room:(未定)

■講義題目/Course Name: 薬学コミュニケーション/Communication Competence for Pharmacists

■授業の目的と概要/Course Objective:

この授業では、ヘルスコミュニケーションの領域に包 摂される薬学コミュニケーションについて学びます。薬学コミュニケーションでは、個人のプレゼンテー ション能力の開発にはじまって、チームで議論ができる能力、薬学的知識を非専門家に口頭で伝える能力、専門家として薬とのつきあい方を非専門家にメディア を通して発信できる力、過去におこった薬学コミュニケーションにおける問題や紛争から学ぶこと、医薬品や薬物をめぐる社会政策に専門家してどのように取り 組むことができるのか、という幅広いテーマをとりあげ、受講者のコミュニケーション能力を多角的な角度から育てあげることを目的にします。

■学習目標/Learning Goals:

1.自分が考えたことを、メモ書きにまとめ、それを もとに3分間スピーチすることができるようになる。

2.数人のグループ・ディスカッションで、司会役を 務めることができる。議論終了後に1〜2分程度でブリーフィング(=簡単なまとめ報告)ができる。

3.一人で考えることと、グループで考えることの、 それぞれ利点と欠点(=限界)について、具体的な事例を出して指摘することができる。

4.剽窃(ひょうせつ、コピペ)と引用の違いを理解 した後で、インターネットと図書館での情報収集で、与えられた情報をまとめてA4、1枚程度のレポート にまとめることができる。

5.薬の正しい使い方について、マスメディアを利用 して、広報するプログラムのアウトライン(概略)を設計することができる。

6.ヘルスコミュニケーションの失敗によって起こっ た歴史的出来事について、学期中にもっとも興味が持てたものについて情報収集し、5分程度の発表原稿を まとめることができる。

7.この授業を通して学んだ「薬学コミュニケーショ ン」の重要性を、自分なりに整理して、中学生に説明するための原稿を作ることができる。

■履修条件・受講条件/Requirement; Prerequisite:

 履修対象の年次以降であればどなたでも受講可能で す。入学年次で定められた選択必修の科目名に相当しているかどうかを必ず確認してください。

■特記事項/Special Note:ありません。

■授業計画/Special Plan (回)題目/Title:内容/Content

〈毎回のテーマ〉


〈各回の紹介〉
1.ヘルスコミュニケーション入門(1):健康科学としてのコミュニケーション

米国の疾病予防研究センターでは、ヘルスコミュニ ケーションを「健康を増進する個人とコミュニティの決定に情報や影響を与えるコミュニケーションの諸戦略 の研究と利用」と定義する。このことを日本の文脈で考えてみましょう。

2.ヘルスコミュニケーション入門(2):薬学コ ミュニケーションの特徴

この授業で定義する薬学コミュニケーションは、個人 のプレゼンテーション能力、チームで議論ができる能力、薬学的知識を非専門家に口頭で伝える能力、専門 家として薬とのつきあい方を非専門家にメディアを通して発信できる力、そして、過去におこった薬学コミュニケーションにおける問題や紛争から類似の問題が 二度と起こらないようにする具体的な方略等を考えることが出来る能力だと定義してみましょう。これらについての概略を学びます。

3.情報収集(1):文献収集、文献読解、インター ネットリテラシー

薬学に関する学術情報の情報収集の方法、メタアナリ シスの手法などについて学びます。

4.情報収集(2):面接、フォーカスグループ技 法、質的情報処理、調査倫理(守秘義務)

対人コミュニケーションを基調とする情報収集の技 法、資料の取りまとめ、そしてそれらの資料管理の倫理について考えます。

5.対話力:言語と感情、「考え」/「気持ち」を伝 えることの相違点、対話機能

なにげないお喋りで盛り上がった経験のある人は、そ れを事後的に思いだすことと、録音やビデオで記録されたものを再生したものを照合すると、前者に多数の 見落とし(=聞き落とし?)を発見します。お喋りの中に含まれる膨大な情報をどのように引き出すのかについて考察します。

6.プレゼンテーション能力(1):スライド(パワ ポ、キーノート、pdf等)技法

学会発表や、卒論・修論・博論などに必要なスライド による発表技法について学びましょう。

7.プレゼンテーション能力(2):口説による論証 プレゼンテーション

スライドをみてそれを見ながらアドリブで発表するこ とと、発表原稿を用意して発表すること、あるいはスライドなど視覚手がかりがない場合の発表を比較し て、発表原稿による口説の可能性を最大に引き出す方法について考えましょう。(余裕のある人は英語によるプレゼンテーションに挑戦します!)

8.専門家間コミュニケーション:科学社会学、科学 の政治、科学のイデオロギー

政府の審議委員会の報告書、科学者集団の在り方、学 会内部おける論争や学問政治、研究手法の流行と衰退、研究費獲得競争など、学問内部におけるさまざまな 社会的現象について学びましょう。

9.市民とのコミュニケーション:臨床、OTC(カ ウンター越しのコミュニケーション)、集会

薬学研究者や薬剤師は、さまざまな機会で市民とのコ ミュニケーションをおこなっています。臨床の現場で、OTC薬の販売の現場でのヘルスコミュニケーショ ン、そして、政府や公的機関における集会や、市民向けの研修会などでの知識の提供です。このような市民とのコミュニケーションについて考えてみましょう。

11.科学をめぐる紛争:科学革命の構造、公害、薬 害、裁判法廷、裁判外紛争解決(ADR)

科学者による論争、特定の化学物質が原因かどうかの 判定、裁判における検証、薬害や医事紛争における対話や謝罪や賠償の問題、薬学という科学もさまざまな 社会の紛争の面に巻き込まれます。薬学者としての客観的中立的な立場と、被害者の側に立つヒューマニズムの原則の調和について考えてみましょう。

12.臨床コミュニケーション:基本構造

臨床コミュニケーションとは、対人コミュニケーショ ンを基調として、具体的な問題に対話者どうしが取り組み、一定の時空間のなかで結論が求められるものと 定義することができます。世の中にあるさまざまな臨床コミュニケーションの現場で起こる、すれ違いと交流について、広い視点から考えてみましょう。

13.臨床コミュニケーション:疾患に応じたコミュ ニケーションのタイプ

薬学領域における専門家ならではコミュニケーション は、特定の疾患を抱えた人とのものです。その疾患が患者や患児に与える心理的影響、薬の作用機序にもと づくさまざまな身体精神症状への影響、そして、その人固有の悩みや個人的事情という偶発的違いです。ここでは、がんサバイバー、認知症、小児疾患、など、 病気や障害がもつ特徴的な事例をピックアップして、さまざまな角度から議論しましょう。

14.ヘルスプロモーション:疾患情報、治療情報、 健康政策

薬物が人間生活との関わりあいをもって社会問題にな るケースについて、個々の臨床経験を基礎にして、社会政策としてどのように対処すべきか、皆さんは行政 官やプロモーションを推進するNPOという立場から自分たちのコミュニケーションの方略(=戦略、ストラテジー)を考えてみましょう。課題になるのは、青 少年における薬物濫用や、禁煙政策についてです。

15.薬学コミュニケーション(まとめ)

これまで、個人のプレゼンテーション能力、チームで 議論ができる能力、薬学的知識を非専門家に口頭で伝える能力、専門家として薬とのつきあい方を非専門家 にメディアを通して発信できる力、過去におこった薬学コミュニケーションにおける問題や紛争から学ぶこと、そして最後は社会政策について考えてきました。 学習者として自分は、こういう点は得意だが、こういう点は不得手だった、という反省を通して、利点を伸展させ、欠点を克服する方法について、各人がまと め、それを発表することで、教室全員のメリットとして共有することを目標にしてみましょう。

■授業形態/Type of Class:

 座学による講義と、学生自身によるミニディスカッ ションとプレゼンテーションによるフィードバックも組み込むアクティブラーニング形式も一部導入しま す。

■授業外における学習/Independent Study Outside of Class:

 それぞれテーマに対応する教科書からの課題を使う ことがあります。その場合は、指定された箇所についての事前・事後の予習と復習が必要になります。授業 で触れた重要なキーワードや略号表記(例えばPBLやADRなど)をインターネットによる検索などで用語集などをつくっておくと、授業の理解度がさらに増 すことでしょう。

■教科書・教材/Textbooks:

 著者名/Author: 小林静子・江原吉博
 教科書名/Title: 薬学生のためのヒューマニティ・コミュニケーション学習
 出版社名/Publisher: 南江堂
 ISBNコード/ISBN:978-4-524-40251-9

■参考文献/Reference:

-薬剤師と薬学生のためのコミュニケーション実践ガ イド, Bruce Berger, じほう, ISBN 4840733260

-薬剤師・薬学生のための実践医療コミュニケーショ ン学Q&A, 町田いづみ, じほう,ISBN 4840735573

■成績評価/Grading Policy:

8割以上の出席を義務づけます。予習を伴った出席 (20%),レポート(20%),最終試験(60%)

■コメント/Other Remarks:

 薬学コミュニケーションを学ぶ資料は日本語のみな らず英語においても豊富にあります。授業スケジュールに従い教科書をチェックし,関連文献を入手し読解 することとで授業への理解は格段に向上するでしょう。授業で話されること,議論されたことを記録しまとめる(=書く)能力を養いましょう。授業終了後に, 興味をもったテーマについて短いエッセーを書く習慣をつけること,これら2つのことを常に心がけるようにしてください。授業が格段に面白くなるでしょう。

■キーワード/Keywords: ヘルスコミュニケーション、薬学コミュニケーション、対話力、プレゼンテーション、薬事行政、広報、医薬品リテラシー、ヘルスプロモーション

■受講生へのメッセージ/Messages to Prospective Students:

 この授業は、薬学研究科の複数の教員が協力して、 大阪大学ならではの「薬学コミュニケーション」について考えたいと思います。これまでは、本学のコミュ ニケーションデザイン・センター(現在は廃止)提供の「臨床コミュニケーション」と「ヒューマンコミュニケーション」というタイトルで開講されていたもの の後継として、より薬学専攻の学生・院生向けとして「ヘルスコミュニケーション」のタイトルで開講するものです。薬学コミュニケーションに関する本研究科 の教員による、本学部、本研究科の学生・院生のためのものです。皆さんと共同して、授業の質を高めて、有意義なものにしたいと、教員一同張り切っていま す。受講生の方の積極的な協力を期待します。

■モデルシラバス



リンク

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