不 健康な医薬品たちへ

陀羅尼助からのメッセージ

寺岡伸悟さん

このページの作者の寺岡さんは、現在、奈良女子大学にいらっしゃいます



一 陀羅尼助の由来・歴史・製造


陀羅尼助とは

○歴史

○製造と販売


二 6つの文脈 ャ通・売買の場・


1、<山上詣り>の文脈

○洞川へ


○「陀羅尼助屋」と「講社の一員」(売り手と買い手が属するフレーム)

○「大峯参拝登山のしるし」として(呈示 の戦略)

2、<寺>の文脈

○薬を売る寺

○「寺の秘薬」として(呈示の戦略)

3、<観光>の文脈

○『るるぶ』にのる薬

○「伝統産業」と「観光客」(売り手と買 い手の属するフレーム)

○「特産物」として(呈示の戦略)

4、<置き薬>の文脈

○行李でゆられて

○「家庭配置員」と「一般家庭」(売り 手・買い手が属するフレーム)

○「家庭の常備薬」として(呈示の戦略)

5、<現代医薬品>の文脈

○「店員」と「客」(売り手と買い手の属 するフレーム)

6、<健康ブーム>の文脈

○インターネットで

○現代文明の「解毒剤」として


三 購買へのサポートム意味のブレンドと 口コミム


1、意味のブレンド

2、口コミ


四 結論――殺菌された医薬品たちへ――


 陀羅尼助は、長い歴史のなかで、その用 いられてきた文脈を失うことなく、むしろ新たな意味を重層的に身にまとうようなかたちで、サバイバルしてき た。そして現在においても、多様な文脈のなかで、その場に応じた意味をブレンドして身にまとう。それは配置員とともに全国をめぐり、標高1700メートル の修験の山にも登る。また、半露天の土産物屋で高野豆腐といっしょに売られるかと思えば、すました顔で『るるぶ』に収まっている。そしてしたたかに生き延 びているのである。前述のように、製造業者によると陀羅尼助は堅調な売れゆきをみせているという。もはや<薬>という枠を超えたこのモノの、現代消費社会 における「足腰の強さ」に目を見張らざるをえない。一体、こうしてみると、本当に不健康なのは、新薬を買いに走る現代の病める消費者たちなのではなく、広 告代理店に自らのアイデンティフィケーションをゆだね、モノとしての生命力を矮小化させてしまった、現代の医薬品自身なのかもしれない。

<参考文献>

(書籍・論文)