レヴィ=ストロー ス『人種と歴史』について
カトリーヌ・クレマン『レヴィ=ストロース』の弁。文化人類学として私は、この屈折した彼女の生物学への無知とその修辞法にはあまり満足しない が、耳を傾ける価値はある、
「ユネスコの小冊子シリーズのために、30年前(原著発行より数えて[20年前とあるが誤記])、いまでも名高いテクスト『人種と歴史』を
書いた縁
で、1971年、この国際機関は、彼に「大講演会」を依頼した。人種差別差別主義と戦う年の最初の
講演会としてである。道徳的に批判したり、学問的に比較することを、レヴィ=ストロースは小冊子で
すでに才気あふれる形でやっていたが、この講演会ではそうする代わりに、遺伝学によって支持された
科学的論証を試みている。1950年代、遺伝学者たちは先住民の文化を支配する諸規則、とりわけ人
口に影響している諸規則に興味を抱いていた。この新しい科学は、集団遺伝学——相変わらず人種差別
主義、あるいは優生学の疑いをかけられていたが——と呼ばれている。だがそれは誤りだ。集団遺伝学
のおかげで、種族(トライブ?)は生物学的単位ではないことが発見された。実際、同じ種族におけるひとつの村と別
の村の遺伝的差異は、ひとつの種族と別の種族との遺伝的差異と同じほど大きいのである。白人によっ
て先住民社会の人びとにもたらされた病気の影響力を除くと、幼児死亡率と伝染病は、通常思われてい
るほど大きくはない。こうした小集団における人口増加の抑制は、しばしば文化的諸規則の結果である
——性交渉の禁止を延長することで出産の間隔をあけること、堕胎、嬰児殺しの実践などである。
伝染病がほとんど害をもたらさないのは、赤ん坊が母親の身体、さらには周囲の環境の主要部分と深
く結ぼれていて、そのおかげで母乳と母親の抗体によって伝わる受動的免疫から、能動的免疫に移行す
ることが可能となるためである。最後に、トゥピ・カワイブ族の首長タペライのように、首長には一夫
多妻という特権があり、彼らは気前のよさだけでなく性的(な)力によっても指名される。そのため実際、た
くさんの子供たちをもつため、一夫多妻の族長支配に由来する自然淘汰を助長することになる。こうし
た健康上の配慮に、信仰による掟が付け加わる。植物を理由なく摘まないこと——ヤマアラシの棘を抜
きそれを捨てたりしないこと——、木のなかに見つけた蜜をその場で食べないこと、「それゆえ土着
世界観では、いずれかの種の命を粗末にするあらゆる悪習は、必然的に、人間自身に期待される寿命の
減少となって現われる」(Le regard éloigné, Pris, Plon, 1983『はるかな視線』I:19)。/
こうした言葉は、人種差別をすぐさま非難しようとつねに待ちかまえている伝統主義者に、不快感を
あたえてきた。レヴィ=ストロースは、人種差別主義者だ!だが、こうした言葉のいずれにも、驚く
べきようなところはまったくない(※レヴィ=ストロースに言わせると人種主義に反対して人は民族学者になるから民族学者が人種主義反対の声を上げることは
ナンセンスだというのだ——引用者)。早くも『悲しき熱帯』の頃から、心的なもの、文化的なもの、物質
的条件がたがいに補いあうものであることを彼は主張していた。この新たな歩みにおいて、民族学者は
民族学と遺伝学の協調関係を取り結ぶのであり、この二つは自然の進化と有機的進化のあいだの補完性
を研究することを任務とするのである」(クレマン
2014:104-106)。——カトリーヌ・クレマン『レヴィ=ストロース』文庫ク・セ・ジュ、白水社、2014年
・Race et
histoire / Claude Lévi-Strauss ; dossier et notes réalisés
par Jean-Baptiste Scherrer ; lecture d'image par Seloua Luste Boulbina,
Gallimard , 2007
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