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「ドキュメンタ リー」作品の育て方:映像芸術とその後方支援について

Cultivating "Documentary Visual Works": On art works promotions and Its cultural logistics

山國恭子(映像作家)/  池田光穂(大阪大学)

【1】これから「ドキュメンタリー」作品の育て⽅——映像芸術とその後⽅⽀援について——について発表します。発表者は、大阪大学の山國恭子が発表させていただきます。
【2】まず、この発表の目的についてお話しま す。演者のひとり山國は、修士論文作成のためフィリピン・インデペンデント映画の現状を明らかにするためにマニラのケソンシティにおいて独立系の映像作家 を追いかけてiPhoneを使ってドキュメンタリー作品を作った。そのタイトルは"uli-uli-ulit!:intro"(邦題:うずのなか:序)と して2019年にYouTube にて公開しました。(監督:山國恭子:88分:URL: https://www.youtube.com/watch?v=5VvSbXRzfC4)。本報告は、その制作のプロセスのリフレクシブな反省につい ての記述と、作品制作を支える独立系の映像作家の育成という文化振興手法について論じたいと思います。
【3】次に方法についてのお話します。まず最初 は、(1)映像作品を自主制作した山國による映像制作過程に関する「語り」の内容分析と、それを文化人類学者で共同研究者である池田が、他者のオートエス ノグラフィーとして表現し、エスノグラフィー手法における実験的手法の解釈を実践します。そして、
(2)シネマラヤ財団による若手作品の発掘、補助金交付システムに焦点をあてて「内面を映すドキュメンタリー」作品の育て方、とりわけ、ドキュメンタリー 映像の振興においてインデペンデント系の作家の育成という文化施策と、映像を消費する人々に与える社会的影響について明らかにする方法をとります。
【4】ここで、フィリピン映画の簡単な歴史について紹介します。……

ここでのポイントは、フィリピン映画は、フィリピンがおかれた、文化的ならびに政治的状況を反映するものであるということです。
【5】このスライドは、……
【6】シネマラヤというコンペティションの時間的構造について説明します。
【7】このスライドは、……
【8】このスライドは……
【9】そして、このスライドは……
【10】このスライドは……
【11】このスライドは……
【12】このスライドは……
【13】このスライドをとおして、映画と政治のとの結びつきについてご紹介します。……
【14】以上のことから得られた結論について2枚のスライドで紹介します。
まず、(1)オートエスノグラフィー(AE)とは、エスノグラファー(=他者を記述する人)の記述対象が他者に向けられるのみならず、自己と他者の関係を 内省的に描写し、かつ自己の心の中に生起する状況的記述に向かうモーメントをも内包することです。AEがエクリチュール(書記)可能である理由は、自己に ついての記述が他者の記述の「後に」生起するからです。映像作品の場合、他者を自己の眼のかわりにカメラがそれを代替します。さらに映像記録には書記が被 さる場合があります。映像記録のAEもまた最終的にはエクリチュールにより書記されることを待っています。AEにおける映像はそのような記述を可能にする 「外部観察者」であることが明らかになりました。
【15】次に、文化振興(プロモーション)として 映画政策についてお話します。(2)アカデミーやカンヌなど世界の著名な映画祭とは異なり、マニラの映画祭が、自主独立系の映像作家を支援することへの人 々の関心の高さは、制作者も観客も参加度の高いことで説明がつきます。シネマラヤとシネマラヤ財団による若手作品の発掘、補助金交付システムに着目した結 果、独立系の映像作家の育成という文化振興手法のユニークさが明らかになりました。
【16】考察です。
従来より映画は社会を映す鑑として捉えられ、撮影技法、映像提示技法、作品論、受容理論などの観点からさまざまに分析されてきました。ところが iPhoneなどのスマートメディアの登場により動画撮影が極めて容易になり、インターネットの動画サイトに映像がリアルタイムでアップロードされるよう になると、撮影者の眼の延長と視覚表象の共有という従来のメディア論で指摘された特性に加えて、自撮り手法は、撮影者の心の内面を映し出す芸術表象として の機能が前面に出るようになってきました。
【17】このスライドの一番右の赤い枠で囲んだ部分が、フィリピンの映画制作の現在です。すなわち……
【18】結論です。
メディアを容易に扱い、リアルタイムで自分の作品を紡ぎ出すアジアの若者たちの(複数の視座の)存在は「内面を映すドキュメンタリー」の情報論的な豊穣 さを反映しています。そしてそれらが、若者のアイデンティティ形成に影響を与えるために、映像表象を通しての若者文化の次なる文化創造を結果的に自己実現 するのです。すなわち映像芸術は社会の来るべき変容を予言するどころか未来を形作るのであると言えましょう。
【19】「ドキュメンタリー」作品の育て⽅——フィリピンにおける映像芸術とその後⽅⽀援について——についてご発表いたしました。発表は大阪大学の山國と池田でした。

みなさまご静聴ありがとうございました。

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1997-2099

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