はじめによんでください

海部陽介

Yosuke KAIFU, b.1969

池田光穂

海部 陽介(か いふ ようすけ、1969年 - )は、日本の人類進化学者。東京大学総合研究博物館教授[1]。約200万年にわたるアジアの人類進化史などを研究。前職の国立科学博物館で「3万年前の 航海 徹底再現プロジェクト」を実施した[2]。博士(理学)。第9回(平成24年度)日本学術振興会賞[3]などを受賞。その研究は書籍やウェブメディア等で も広く紹介されている[4][5][6]。

海部 陽介(か いふ ようすけ、1969年 - )は、日本の人類進化学者。東京大学総合研究博物館教授[1]。約200万年にわたるアジアの人類進化史などを研究。前職の国立科学博物館で「3万年前の 航海 徹底再現プロジェクト」を実施した[2]。博士(理学)。第9回(平成24年度)日本学術振興会賞[3]などを受賞。その研究は書籍やウェブメディア等で も広く紹介されている[4][5][6]。

経歴と業績
アジアの原人:1992年より大学院生として、アフリカの猿人化石研究で世界的に知られる諏訪元に師事。1994年に馬場悠男による日本・インドネシア合同のジャワ原人調査隊に参加し、馬場の引退後はその調査隊を引き継ぎ、さらに視野を広げるかたちで、アジアの原人化石について発掘調査と形態学的研究を続けている。

ジャワ原人に関しては、1980年代までに発見されていた相当数の化石資料について、はじめて網羅的な形態解析を行い、その独特な進化の大筋を明らかにした[7] [8]。身長1メートルに矮小化していたことが発覚して専門家を驚かせたフローレス原人(ホモ・フロレシエンシス)については、これを発見したインドネシ ア・オーストラリアのチームに招待され、2007年以降にその化石研究に携わっている。頭骨と歯について詳細な形態分析を実施したほか[9][10]、 2014年に発見されたその祖先らしき化石の形態解析を担当してネイチャー誌に報告し[11]、フローレス原人は大型のジャワ原人の仲間が矮小進化したとの説の論陣を張っている。台湾海峡の海底から発見された澎湖人(台湾の原人)についても日台合同調査を主導し、その独自性を明らかにした[12]。

こうして、かつてアジアに多様な原人のグループが存在していたことなどを解明した功績が評価され、2012年に日本学術振興会賞[3]を受賞している。野外と室内におけるその研究の様子は、川端裕人の著書[5]やWebナショジオ[13]でも紹介されている。

アジア人類史:大学院時代に、恩師の1人である赤澤威が主導した大型研究プロジェク トに触発され、化石形態学・遺伝学・考古学などを統合した、総合的なアジア人類史の構築に興味を持つようになった。2005年に、当時の日本国内ではまだ 主流でなかった「ホモ・サピエンスのアフリカ起源説」に注目し、その文脈の中で世界と日本の人類史を結びつける新しい切り口の著書を出版した[14]。 2011年には、出穂雅実・小野昭・佐藤宏之・Ted Goebelとともに国際シンポジウム「The Emergence and Diversity of Modern Human Behavior in Paleolithic Asia」(主催:国立科学博物館・日本旧石器学会)を開催し、それまで注目度の低かったアジアにおけるホモ・サピエンス史の研究推進に大きく貢献した [15][16]。

日本人の起源と変遷:縄文時代~近現代に至る顎骨と歯列形態の変遷について研究し、過去5000年間に生じた顎骨の縮小・歯列不正の増加・かみ合わせ形式の劇的な変化が、従来の想定に反して退化現象とは呼べないことを示すとともに、それを進化医学の観点と結びつける先駆的検討を行なった[17]。 その成果は、歯科学においても注目されている[18]。旧石器時代の最初の日本列島人の渡来についての研究や論考も多く、例えば沖縄で発見された約2万年 前の港川人の再研究や、従来の定説に反して彼らは陸路ではなく海を越えて列島に渡ってきたことを示した論文などがある[16][19]。

17. Kaifu, Y., et al. (2003). “Tooth wear and the “design” of the human dentition: A perspective from evolutionary medicine”. Yearbook of Physical Anthropology 46: 47-61.

3万年前の航海 徹底再現プロジェクト:最初の日本列島人が成し遂げた航海を学術的に推定し、その一部を実験航海によって再現することにより、彼らがどのような困難に直面 し、それをどうやって乗り越えたかを体験的に探ろうとする、日台共同プロジェクト(主催:国立科学博物館・共催:国立台湾史前文化博物館)[2]。代表と して、事務局マネージャーの三浦くみのとともに、企画と運営に当たった。当時の舟は遺跡から未発見で不明であるため、候補と考えられる草・竹・木の舟をそ れぞれ試作して海上実験を行ない、当時の航海技術を検討した。プロジェクトは2013年に始まり、2016年に正式に発足した。実験を重ねた末、2019 年7に月に手漕ぎの丸木舟で台湾から与那国島へ渡る実験航海を決行し、成功した[20][21]。これは研究者と冒険家が共同し、クラウドファンディング 等により民間から直接・間接の協力を得つつ、経過と成果を広く公開するオープンサイエンスの試行としても注目された[19][6][22]。

クラウドファンディング:2016年2~4月に国立科学博物館が実施した「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」のクラウドファンディングを、プロジェクト代表としてリードした[23]。これは日本の国立の博物館としてはじめての試みで、その 成功は、クラウドファンディングが公的機関の新たな研究資金獲得法として注目される契機ともなった[24][25][26]。2018年には2回目のクラ ウドファンディングを成功させ[27]、獲得資金は合計で59,782,000円にのぼった。
略歴
1987年 桐朋高等学校卒業[28]
1992年 東京大学理学部生物学科人類学教室卒業
1994年 東京大学大学院理学系研究科修士課程(人類学専攻)修了、日本学術振興会特別研究員
1995年 東京大学大学院理学系研究科博士課程(人類学専攻)中退、国立科学博物館人類研究部研究員
2007年 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻准教授(弊任)
2008年 国立科学博物館人類研究部研究主幹
2010年 自然史学会連合事務局幹事(2015年まで)
2013年 Science Committee Member, Musée d’Anthropologie Préhistorique, Monaco
2015年 国立科学博物館人類研究部人類史研究グループ長
2016年 国立科学博物館「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」代表
2020年 東京大学総合研究博物館教授
親族
父は天文学者の海部宣男。生態学者の海部健三は弟[29]。

受賞
2023年 日本人類学会賞[30]
2021年 海洋立国推進功労者表彰[31]
2020年 日本航海学会功績賞
2019年 山縣勝見賞特別賞
2016年 古代歴史文化賞優秀作品賞
2016年 モンベル・チャレンジアワード
2012年 第9回(平成24年度)日本学術振興会賞
展示監修
インターメディアテク特別展『海の人類史 – パイオニアたちの100万年』(2024):旧石器・縄文時代および現代の、人類による海への挑戦をテーマにした特別展。
東京大学総合研究博物館特別展『骨が語る人の「生と死」 日本列島一万年の記録より 』(2023-2024):遺跡から発掘される骨からわかる、祖先たちの知られざる素顔を探った展示。
国立科学博物館特別展『世界遺産 ラスコー展』(2016-2017):フランスで企画された世界巡回展に、クロマニョン人が製作した美術品の傑作等、日本限定の要素を追加して企画した特別展。当時の人気テレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のロケ地ともなった。
国立科学博物館シアター36○『人類の旅』(2013):同博物館が製作した全球シアターのコンテンツの1つで、440万年前のラミダス猿人の群れや、ホモ・サピエンスの世界拡散などの様子を描いた。全編CG。
国立科学博物館常設展『人類の進化』(2004、2010):ホモ・サピエンスの世界拡散史を床に描いた世界地図上をたどる、世界で初めてのスタイルを採用した。
著書
『人間らしさとは何か 生きる意味をさぐる人類学講義』(河出新書、2022)
『サピエンス日本上陸 3万年前の大航海 』(講談社、2020)
『日本人はどこから来たのか?』(文藝春秋、2016 / 文春文庫、2019) - 古代歴史文化賞
『人類がたどってきた道』(日本放送出版協会〈NHKブックス〉、2005)
共編著・監修
『我々はなぜ我々だけなのか-アジアから消えた多様な人類たち』(川端裕人著、講談社、2017) - 科学ジャーナリスト賞 / 講談社科学出版賞
『Lexicon現代人類学』(奥野克己・石倉敏明編、以文社、2017)
『理科好きな子に育つふしぎのお話365』(自然史学会連合編、誠文堂新光社、2015)
『人類の移動誌』(印東道子編、臨川出版、2013)
『人類大移動:アフリカからイースター島へ』(印東道子編、朝日新聞出版、2012)
『歯科に役立つ人類学』(金澤英作・葛西一貴編、わかば出版、2010)
『絵でわかる人類の進化』(斎藤成也編、講談社、2009)
辞典(人類進化関連項目)
『広辞苑 第7版』(岩波書店、2018)
『岩波生物学辞典』(岩波書店、2013)
『進化学辞典』(共立出版、2012)
『生物学辞典』(東京化学同人、2010)
『エンカルタ大百科事典』(マイクロソフト、2002 - 2006)

https://x.gd/H10gI
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リ ンク

文 献

そ の他の情報

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