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シンギュラリティ研究のための11のテーゼ

Twelve thesis for our Innovative Campus and Community

池田光穂・井上大介

テーゼ01:「AI時代においてある歴史 的時点でシンギュラリティ(=技術的特異点)に到達する」という思考実験は、人類社会の 行く末を占う意味で重要な思想史的意味をもつ。
テーゼ02:しかしながら、これまでのシンギュラリティの議論は、提唱 者カーツワイルのものも含めて、完璧なものとはいえず、領域 においては粗 雑な議論のままの部分がある。この研究は、カーツワイルの議論を受け継いて、シンギュラリティの 議論を、思想史的検証にたるだけの理論に鍛え上げる目的を もつものである。
テーゼ03:AI技術者のシンギュラリティの議論での現時点での問題 は、人類史におけるその思想史的意義、歴史的意味 についての深い洞察がな い。つまり、人文社会学(ヒューマニティズ)の二千年以上にわたる知的総力を結集して取り組む課題なのに、皮相的な科学技術論のレベルを超えていない。つ まり必要なのは、このテーマに人文社会学が果敢に取り組むべきことである。
テーゼ04:代表者の管見においては、人 文社会学のどの分野も、シンギュラリティ問題に取り組めるような知的伝統がある。にもかかわらず、それ を横断的総合的できないのは、人文社会学の分断である。
テーゼ05:人文社会学が取り組める知的 担保には、この細分化された分野がすべて共有する、知的基盤がある。それは、(1)どの人類社会にも言語 があり、その言語手段には、知識人や知的論理操作をする基本的活動が認められる。つまり、言語操作により人類が世界を創造/想像する基盤をもつ。(2)言 語 の操作により、自然に働きかけ、自然を改変してきたが、同時に人類の知的活動は、その自然環境を理解する言語や知的枠組みをつくりあげてきた。つまり環境 や世界認識が重要である。言語と世界との関係、そして、その2つの抽象的構築物の前に存在する人間との関係について、人文社会学は長きにわたり、さまざま な知的貢献をしてきた。
テーゼ06:このような本研究グループが もつ人文社会学が考えるAIやシン ギュラリティの考察とその知的貢献は、もちろん、AI技術者との真摯 な対話を通して、はじめて意味を持つことは言うまでもない。しかし、現時点ではシンギュラリティに関する人文社会研究を第一の急務となる。そして、次にコ ンピュターサイエンティストや技術者たちとの対話、最後に、それを教育カリキュラムとして次世代に伝えるための学問パラダイム確立が必要とされる。最終年 度には、パラダイム確立への道筋と、次世代学生・院生のためのモデル・カリキュラムを技術系の研究グループと構想提案する。
テーゼ07:シンギュラリティが人文学 (ヒューマニティーズ)にもたらす最大の思想史的インパクトは「人間の死」(あるいは主体の死)である。人間の死」とは、ミッシェル・フーコーの『言葉と物』の最後の部分の、あのテーゼである。
テーゼ08:シンギュラリティ問題で問われていることは、人間社会における、個人間、個人と機械、そし て、機械間における信頼関係である。現在のところは、研究 者がAIの開発する際に留意しなければならない「倫理」の次元に留 まっている。
テーゼ09:2017年のアシロマAI会 議で言われた「超知能(superintelligence)」という語彙は、それが指し示す以前に「超知能という実体」を虚構的空想表現のなかに表現を しており、今後「神」という名とともに、我々の意識の中を占有するに 違いない
テーゼ10:SF 映画たとえば、ブレードランナー(正続)や、ターミネイター(シリーズ連作)や、機械の反乱により、人間生活どころか、人間を破壊しようとするカコトピア が想像されています。AI研究者が、シンギュラリティなど来るわけないよという揶揄している一方で、民衆は映画的世界が提示するなかで、未来への対処行動 を、各人の想像力のなかですでに「実践」していると言えないでしょうか? ギアーツ流の宗教は、シンボル操作やその観念体系プラス信仰実践ですが、ふつう の人々は観念のなかで善悪の行動を実践してはいないでしょうか?旧約聖書であるトーラの解釈学的伝統など。
テーゼ11:コンピューターサイエンティストとサイバー人 類学者は、これまでのインターネット社会と「シンギュラリティという幻影」をさまざまに解釈しただけである。問題なのはネットワーク社会を変革することな のである。
解説編:シンギュ ラリティ研究のための11のテーゼ(Eleven thesis on AI Singularity Studies, 2099)

Maya_Abeja

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