ビッグデータだけに依存すると予測を誤る
fateful hoaxing of big(mouth)data!!!
「2014年の春、サイエンス誌が、「グーグル・イ ンフル・トレンド」を学術的に研究した結果を 記事にまとめた。グーグル・フルー(インフル)・トレンド(GFT)とは、インフルエンザの流行 を追跡するサービスで、アメリカ疾病予防管理センターが報告する従来の方式より早くインフルエン ザの流行を予測する触れこみだった。GFTの基盤は、1,152のデータポイントに対して5,000 万の検索ワードをマッチさせるアルゴリズムである。要するにグーグルは、関連する客観データに検 索ワード(症状、医療提供者、治療薬)を相互参照させることによって、インフルエンザの発生を予 測できるのではないかと考えたのだ。サイエンス誌に寄稿したノースイースタン大学、ハーバード大 学、ヒューストン大学の研究者たちは、GFTは2年以上にわたってアメリカのインフルエンザの症 例数を著しく過大評価していたと結論づけた。その記事「グーグルインフルの寓話ーービッグデータ 分析の落とし穴」によると、少なくとも過ちの一部は、GFTの技術者たちが下した、アルゴリズム にどんな要素を含めるかという判断に起因していた。記事では「アルゴリズムのダイナミクス」と 「ビッグデータの倣慢」という表現を使っている。/ グーグルの目指すゴールはすばらしかった。インフルエンザの流行を早い段階で警告し、病気の拡 散を防げれば、従来の方式より生命を救えるかもしれない。だがグーグルの技術者たちがのちに悟っ たように、何を分析するかはあらかじめ選択しておかなければならない。信頼性のある予測ツールを 構築するには、明確な検索ワードとグーグルのアルゴリズムを厳密にリンクさせる必要があるが、こ がれが途方もなく複雑で、無数の人間の変遷パターンの影響も予想以上に大きかった(たとえば、自身 の健康に神経質な人が同じ用語を毎月のように検索しただけかもしれず、グーグルの別の部署の技術 者たちがデータの収集法を変更したのかもしれない)。/ グーグルの検索から表出するワードはコンピューター上に保管され、さまざまに分析できることか ら、根拠のしっかりした妥当なデータセットのように見えるが、実際はちがう。ある現象ーーこの場 合は検索ーーの演算と分析が可能だからといって、データの権威が増すわけではない。方向づけに役 立つかと間われればイエスと答えるが、客観的な現実かと問われれば答えはノーだ」(クリステンセンほか 2017:289-291)。
■片付けるべきジョブ(Job to be done)理論について
クリステンセンのジョブ理論においては、消費を、あるジョブを雇用する、という枠組みで考える。
たとえば、あるビジネスパースンが、出張の行きがけ の空港のスタンドで新聞を買うとする。その時、ジョブ理論では、新聞をコスト(=代金)を支払って雇用したと考えるのである。では、何のために雇用したの か?さまざまな事前の理由や事後の理由が考えられる、たとえば情報入手(=昨日起こった事件の詳報が載っている)なのか、飛行機のなかでの時間つぶし(= 退屈な機内の安全手段を手持ちぶたさで聞かないで済む)、あるいは、出先のビジネスホテルの風呂の中で連載小説を読む、あるいは、濡れた靴に入れて翌日の ために乾かすためにとっておく。新聞はそれぞれの用途に、雇用され、顧客(=ビジネスパースン)に対してジョブをおこなう。
我々は物事を単に消費しているわけでなく、消費した もののなかにジョブを見出しているわけである。金を支払ったから、元を取りたい。消費を真剣に考える人は、その消費にさまざまなジョブを見出せば、投下し た資本よりもより多くの利益を回収できるわけである。これは、物を大切に使う以上に、資本の増殖をも加味している点で、生産的である。そして、雇用主に とって、満足できることは、投下した資本に対して、それに見合ったジョブをその消費財が果たしてくれることである。また、雇用主が、その消費財を購入(= 雇用)して、もとめることは、最初の片付けるべきジョブ(Job to be done)をやってくれること(=求めていた情報を提供してくれる/暇を潰してくれる)である。
ベスト&ロングセラーである『破壊的イノベーターのジレンマ』
の著者であるクリステンセンが、このジョブにこだわるのは、なぜだろう。それは、この世の中の消費は、すぐにはジョブを見出さない、なあなあの消費、ある
いは「儀礼としての消費」があることで、これは、投資効果を考えていない非合理的な消費である。また、雇用者も、消費財を提供する製造業者も、「片付ける
べきジョブ」をより明確に意識することが重要である。さらに、イノベーションを加速する理由として、クリステンセンは、イノベーションを、(1)ローエン
ド破壊、(2)市場創造、そして(3)持続的イノベーションの3つに分類しているが、ジョブ理論は、(2)の市場創造、とりわけ無消費のユーザーに、ジョ
ブを売り込むという点で、大きな市場価値があると考えるのである。
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