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多文化主義

Multiculturalism


池田光穂

定義

多文化主義とは、地球上の民族や文化の多元性を承認した上で、民族や文化を共有する人びとの間の共存を「善」と考える倫理的態度あるいは、イデオロギーのことである。

Multiculturalism is an ethical attitude or ideology that recognizes the plurality of peoples and cultures on earth and considers coexistence among people who share a common ethnicity or culture to a kind of virtue.

多文化主義(Multiculturalism)の同義語として、文化多元主義(cultural pluralism)がある。しかし、後者には、ひとつの文化の中にもさまざまな下位文化やジェンダー区分や世代区分に纏わる多元性の尊重の考え方があるので、文化多元主義は、価値多元主義(value pluralism)や文化相対主義(cultural relativism)の変種であり、(国際社会やグローバル・イシューに接続する)多文化主義とは異なるとする見方もある。

多文化主義は、国際協調やグローバル・イシュー取り 組むSDGs礼賛の風潮のなかでは、なかなか、良さげな態度でありイデオロギーであるが、国際間に横たわるさまざまな経験的な文化衝突(cultural collision)から厳しい批判に晒されている。スラヴォイ・ジジェク(2005[2000])によると、多文化主義にはおおきく、次の4つほどの問 題が指摘されている;1)多文化主義は、自分が普遍的な認識論的立場を維持して他者の文化の多様性を称揚する矛盾する態度がある。2)それは、自らと関わ りを持たずに他者の文化の多様性を称揚する態度とは「傍観する人種主義」である。3)傍観する人種主義とは、他者の具体的な内容については、実は何の関心 も思い入れもなく、極論すれば他者は文化の背景にまで後退する。4)自分の生活とは無関係なものでありながら、それ自体固有の(sui generis)価値をもつために、他者は昆虫採集の対象のレベルにまで(縁もゆかりもない)客観的な他者に貶められてしまう。これは植民地時代の人類学 者と変わらないものになってしまう(危険性がある)、というものだ(→「厄介な多文化主義批判」)。

日本において、多文化主義をもとに、社会を再編する理想主義的な社会のあり方は、これまで「多文化共生社会」——日本製なのであえて英訳すると"Multicultural Symbiotic Societies"——と呼ばれている。

多文化主義批判」とそれを擁護(pro-)したり批判(cons-)する理論家についてはこちら「多文化主義とその批判の理論家たち」を参照

◎暴力に抵抗する多文化主義

多文化主義の政治理論は,民族的アイデンティティを称揚することでも,それを克服することでもなく,文化的マイノリティに対する国家的暴力や民族間の戦争といった危険を減らすことに主眼を置かなければならないと主張(Jacob T. Levy, 2000)

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