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垂水源之介による「悪に関するショートレクチャー」です。悪の定義、カント、サルトル、アーレントの悪に関するさまざまな議論を軽く紹介しながら、人類が悪についてどのように考えてきたのかを考えます。レクチャーの時間は30分です。
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悪に関するショートレクチャー
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悪の定義
悪(evil or being bad)とは、道徳的に 正しくない行動をとること、あるいは不必要な痛みや苦しみを《引き起こすこと》である。——ウィキペディア(英語)の解説
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根源悪
「根源的な悪(ドイツ語:das radikal Böse)とは、ドイツの哲学者イマヌエル・カントが用いた言葉で、キリスト教用語のradix
malorumを表す言葉である。カントは、人間には生まれながらにして悪の傾向があると考えた。彼は、根本的な悪とは、人間を完全に支配し、普遍的な道
徳法則に反して行動する欲望へと導く堕落であると説明する。悪に向かう自然的傾向、すなわち生得的傾向の結果は、道徳律に従属する行為、すなわち「行い」
である。カントによれば、これらの行為は普遍的な道徳法則に反し、自己愛と自惚れを示すものである。多くの著者は、カントの急進的な悪の概念は逆説であ
り、彼の道徳理論の発展を通して矛盾していると見ている。」https://en.wikipedia.org/wiki/Radical_evil
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ジャンポール・サルトルは、「1947年における作家の状況」の中で、第二次大戦が我々に示したものは、ヨーロッパがそれまで知らなかった〈絶対悪〉の存
在であったという。ここで言う絶対悪とは、原爆や強制収容所あるいは絶滅収容所に代表されるものである。また、サルトルはジュネに仮託してして次のように
もいう:「悪とは、組織的に具体を抽象に置き換えることだ」(『聖ジュネ』)。
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陳腐な悪(悪の陳腐さ)とは、ハンナ・アーレントが『エルサレムのアイヒマン』の中で指摘した:「悪の陳腐さ」に由来する。それは、アイヒマン裁判におい
て、明らかになったことは、アイヒマンは狂信者でも社会病質者でもなく、自分の頭で考えるよりも決まりきった自分自身の保身に頼り、イデオロギーよりも職
業上の昇進に突き動かされた極めて平凡な人間だったということだった。それは、アイヒマンの行動が凡庸であったということでも、私たち全員の中に潜在的な
アイヒマンがいるということでもなく、むしろ彼の行動が「まったく例外のないある種の愚かさ」に突き動かされていたということである。この「まったく例外
のないある種の愚かさ」に突き動かされたなかで行う行為を、彼女は「悪の陳腐さ(Banality of evil)」と呼んだ。
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マルキ・ド・サドは啓蒙の時代初期に現れた「早すぎた自由思想」の思想家である。そして、時代を超えても、それを嫌う人たちには、時代を超えた極悪人であ
る。しかし、サドそのものは、現代では単純で粗暴な大悪人ではない。サドが、近代啓蒙の幕開けの時期に、人びとの想像力がもつ可能性を極限まで押し広げた
ということを、文章による創作活動を通しておこなったことが、嫌われているのである。これは奇矯な結末である。澁澤龍彦(1928-1987)は「サド復
活」のなかでこういう。:「ちょうど開幕したばかりの19世紀が、前世紀の遺産を受け継ぐことを好まず、サドという一作家に具現された前世紀の抵当権を消
去することを何よりも早急に欲したかのごとくであった」(澁澤 1989:171)。・澁澤龍彦『サド復活』日本文芸社、1989年
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悪は観念ではなく実践行為である
悪の本質とは思念の中にあるのではなくて、それを実際に《行動》に移すことだ——カントやマルキ・ド・サドから導きだせること
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勧善懲悪の技法は「詩的正義(Poetic
justice)」と呼ばれる。詩的正義は詩的皮肉とも呼ばれ、最終的に美徳が報われ、悪行が罰せられる文学的装置である。現代文学では、登場人物自身の
行動に関連した皮肉な運命の展開を伴うことが多いため、詩的皮肉と呼ばれる。
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まとめ
1. 悪とは、道徳的に正しくないこと、不必要な心身の痛みや苦しみを引き起こすこと、と定義できる。
2. 善よりも悪のほうが我々の生活のなかで衝撃的である。それゆえ、悪の存在は、我々の倫理的生活を(反面教師の形で)形づくることに形成している。
3. 悪への考察を通して、人類は悪の本質を解明しようと努力してきており、この探求は今後も続くだろう。
4. 悪は無くならないという古来から続く悲観的な見解と、悪は厄介ではあるが、反省と分析を通して、以前よりも軽減するための努力は必要であり、実際にそうなりつつあるという現代的な楽観的な見解の2つがある。
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悪が定義できれば、道徳的なこと、倫理的なこと、つまり善に続く考察が次に求められる!!
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