文化表象学調査実習 リサーチプロポーザルの実例
インターネットと少年犯罪(2001)
改訂版(旧版はこちら)
元・熊本大学文学部文化表象学教室学生
インターネットと少年犯罪
インターネットに関する先行研究と児童心理の発達に関する研究を参考とし、インターネットを活用し ながら子供から大人までの意見を収集し、それからインターネットが人格に与える影響、特に成長途中の子供に関しての影響を考える。そこから現在の少年犯罪 を考える上での参考資料を提示する。
現在世界中において、少年犯罪が多発していると言う主張がある(しかし統計上はそうとも言い切れな い)。そして各機関や世論は、テレビや映画、ゲームなどをその理由としてあげるようになった。その中でも近年著しい発達を見せているインターネットは重要 な要素であり、アメリカにおいてその危険性について議論され始めている。
本研究の目的はインターネットによる個人、特に子供の人格に与える影響である.インターネット自体 がここ数年間で発達したものであるために、先行研究も他分野に比べやや少ないように見うけられるが、その分まったく新しい研究対象なだけに活発であり、そ れらを踏まえ、インターネットが人格に与える影響について考えてみたいと思う。現在アメリカ政府により、インターネットやゲームの子供に与える影響につい て調査がはじめられ、プロバイダーとの協力や、有害とされる情報(主に画像)を規制するブラウザの開発など情報規制も始まっていて、この調査の結果もその ように現実問題のための助けになればよいと思う。
この研究の目的は、インターネットが人格に与える影響について明らかにすることである。それを調査 する場合に一番重要な方法は、やはり利用者に直接会ってインタビューすることと、実際のインターネットの空間でインタビューすることである。しかしそこで 問題となることは、相手が著名人や企業、組織である場合は現実社会における確認が容易であるが、個人においては、匿名性が高いインターネット上であるため に確認が取れず、そこから得た情報に信頼が置けない場合が予想され得る。
くわえて、本研究の目的はインターネットの個人の人格に与える影響についてであるが、現在の少年犯罪 はインターネットやテレビ、ゲームの悪影響であると言われていることが多い。しかし冷静に考えれば、情報を知ることとそれを使うことはまったく別問題であ る。例えばどこかのホームページで犯罪の仕方が載せられていたとして、そのことを実行するのはその個人自身であり、多くの人は普通ゲームと現実の区別はつ くものである.そのように少し考えればわかりそうなことであるのにもかかわらず、インターネットやゲームのせいであると言うのは何故だろうか、その点につ いても考えてみたい。その結果本当にインターネット等のせいであるのならば、それを証明したいし、後述のように関係ないのであればなぜそのようにいわれる のか考えてみたい。
本研究の調査対象は以下の2つである。
(1)実際に影響を受けると思われる側の子供と
(2)それをインターネットのせいであると決める側、大人、ジャーナリズム、政治家等である。
それには主に直接のインタビューと、インターネットを活用し、電子メール等で情報をやりとりする。ま た実際にインターネット上でされる不特定多数参加型のゲームをし、その参加者から聞くことも考えている。
(タイムスケジュール)
5月 | 文献調査 | リサーチプロポーザル |
6月 | ||
7月 | 予備調査 | |
8月 | 本調査 | |
9月 | ||
10月 | ||
11月 | 中間報告 | |
12月 | 補充調査 | |
1月 | ||
2月 | 最終報告 |
費用の内訳/
利用場所 |
電気代 | 電話代 | 接続料 |
学校 | 大学での利用 | 大学での利用 | 大学での利用 |
自宅 | ¥1000 | ¥1500 | ¥1650/ 月 |
理論的貢献と実際的な貢献の2つが考えられる。
まずメディア(特にインターネット)と暴力行為への誘発の関係についての議論を整理することができる (理論的貢献)。つまりメディアの発達が子供の暴力を誘発させるという意見について、肯定的ならびに否定的議論の立場が、どのような論証過程を経ているか を検証できる。
つぎに、実際的な貢献は、そのような実態をあきらかし、メディアの発達のどのような現象が問題なの か、そして、どのような現象が問題でない(あるいは積極的な意味で)健全なのかについて、一定の答えを出すことができ、そのような問題に取り組んでいる人 たちに助言することができる。
謝辞:このリサーチプロポーザルはかつて文化表象学3年 に在籍した神田恭宏君の提出書類をベースにして、池田光穂が加筆修正したヴァージョンです。利用を許諾していただいた神田君に謝意を表します。
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