帝国医療の問題系に関するメモ
帝国医療の問題系 2002.11.22 桜美林大学新宿キャンパス
1.「切断」の概念――帝国医療の予感
仮説A:帝国医療はもはや過ぎ去っ た存在である。
・歴史的素材として我々はそれを客体化することができる。
・帝国医療を歴史のエピソードとして相対化したり、社会理論の肥やしにする。
仮説B:帝国医療は今日の現下の医療システムである。
・歴史的素材の中に、過ぎ去ったものと連続しているものが混在する。
・歴史的素材として客体化するには認識論的な操作が必要になる(→客体化のテクニック。もしそれがあるものとして)
・帝国医療の概念の拡張
・領土なき帝国としての生物医療とそれに対する「抵抗」の方法あるいは実践的課題の導出
(予感はいかにして触知しうるか?)
2.客体化の認識論的装置
・相対主義(文化相対主義、歴史相対主義、認識論的相対主義など)[opp. 本質主義]
・まなざし("gaze" by Foucault)の分析[cf.社会構築主義]
・社会分析
・医療概念の拡張(法的システム―法廷記録(Vaughan 1991)、認識システム、権力システム―生=権力(Foucault)、経済システム) ―――― ・反実証主義的方法(例:対位法的読解、遡航voyage in[対話の場所において、差異の主張をおこなう])
3.有用性と社会の変革
・核分裂物質(ウラン235、プルトニウム239、ウラン233)は臨界量を超えると分裂をおこし、巨大なエネルギーを放出する。
・「危険な階級」としての労働者階級(19世紀前半)から、革命の主体としての発見(cf.『英国労働者階級の現状』)
・憐れみを与える対象から解放の主体へ(ただし臨界量を超えなければ核分裂はおこならない:プロパガンダの必然性)
・解放と抑圧の弁証法(核エネルギー(→労働者の破壊力)は政治による制御が必要)
・19世紀から20世紀中葉までの社会思想の発想は「制御」概念にあるのでは?(制御概念は、必然的にその事前に[病などの]自然史 natural history を必要とする)
・制御の発想は、“自分の行為が結果的に何を生み出すかを知らない”行為者観とは相反する。
4.近代主体は誰が作ったか?
・人間が近代医療を造ったのではなく、近代医療が[近代における]主体を形成した(cf. Armstrong)
・初期マルクス主義:資本主義の生産様式が近代的人間をつくる。作り出すものと造られるものとの齟齬が人間を疎外に導く。(差異生産= 再生産による暴走を、革命的暴力として制御、活用する)
5.グローバリゼーションから帝国主義へ
・帝国の認識の拡張としての民族医療(→知識の集積)
・熱帯の猖獗の地の征服(→植民事業)
・西洋近代医療の実験(植民地の若き医師たちが、本国に近代科学としての熱帯医学を持ち帰り、教育を通して帝国医療の宣教につとめる)
・後発帝国医療という発想は成り立つか?(例:日本)
■ 記憶としてのアイヌの人骨発掘問題
満州における田村、アイヌにおける内村
帝国医療と植民地医療
植民地医療:ポストコロニアル・システムに仕える医療
帝国医療:アーノルド、組織的権力。
Dr Mark Harrison に関する情報
source: http://www.wuhmo.ox.ac.uk/staff/harrisonm.htm