坂野徹『帝国日本と人類学者:1884-1952年』勁草書房、2005年 読書メモ
To-oru Sakano's
"The Great Empire of Japan and her Anthropological Sciences, 1884-1952"
[使用上の注意]馬鹿で無思慮な人間(=池田光穂)のノートですので内容は保証しません。
「人類学者にとって「帝国」とは何か。それは、人類 学者をフィールドへと駆り立てるドライヴィング・フォースである」——菊池暁(2003:379)
【章の構成】 序 章 日本の人類学と植民地主義/国民国家
●結語の構成
1.人類学から自然人類学/民族学/民俗学へ
2.日本人種論の展開
3.日本人類学と植民地支配/戦争
4.日本の人類学にとっての自己と他者
5.人類学の政治性をどう考えるのか
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坂野徹『帝国日本と人類学:1884-1952年』勁草書房、2005年 読書メモ
●問題意識
・「近代日本における人類学の歴史的展開を、同時代の政治・社会をめぐる状況のなかに位置づけること。それによって、人類学者による自己 (日本)と他者(アジア、西欧)をめぐる言説が有する政治性について考えること」(結語の冒頭:p.493)。
・「本書の課題は、近代日本における人類学の歴史を、人類学者による自己と他者をめぐる学的言説がはらむ政治性に焦点を当てながら、跡づけ ることにあった」(あとがき:p.507)。
●科学史的〈史観〉というものは?
・「近代日本における人類学の歴史的展開を……、科学史的観点から跡づけ」る(p.1)。
●使われる理論(家)
・M.Foucault, E. Said, and B. Anderson
●近代日本の自己/他者関係を映し出すもの?=ジャパン・プロブレム
・「日本における人類学の歴史とは、近代日本がいかに自己と他者を認識し、両者のあいだにいかなる関係を取り結ぼうとしてきたかという自− 他関係の歴史を映す鏡にほかならない」(p.5)。
・問題はどのような〈鏡〉かということだ。
・「近代国民国家成立以降の日本人における自己認識の問題」(p.10)。
●歴史的記述のイデオロギーの問題(1):容易なる道
・今日、植民地主義批判の研究をおこなうことは意外と容易( a piece of cake)。なぜなら糾弾対象や糾弾すべき行為が容易に見えやすいからである(→だから性急な断罪や安易な擁護が可能なのである)。
・歴史事象が「植民地主義のイデオロギーに回収され」(p.5)ること、そのものは忌むべきことなのか?
・忌むべきことと著者が認識しているという状況証拠:「……たとえ植民地統治下で実施された調査研究であっても、そこに植民地主義のイデオ ロギーに回収されない様々な知的発見があったことも確かである」(p.5)。
・このような知的構えは、歴史的資料の検討において、現時点での〈植民地主義糾弾を是とする価値判断〉をもって、資料を色分けすることに繋 がらないか?——科学史的観点から客観的に論じると言った矢先に、ある特定の価値判断に基づいておこなっているという〈知的態度〉をもつという馬脚を現し てはいないだろうか?
・(自己批判として)「人類学者の研究対象とされた植民地住民の主体性や観察者と被観察者のあいだの相互関係が捉えられておらず、結果的に 研究者によって眼差された人々を単なる客体とみなしてしまっている——極論すれば、本書自体がある種の植民地主義に陥っている——という批判もありうるだ ろう」(p.507)。
●歴史的記述のイデオロギーの問題(2):デカダンの現状肯定か?デュオニソス的解決か?
・「人類学という知のなかに、完全に非政治的(非イデオロギー的)で客観的な領域と、政治的(イデオロギー的)な領域があるといった素朴な 二分法を採ることはもはや不可能だということである……/しかもまた……本書で検討した人類学の政治性という問題は、必ずしも人類学という知の限界性を意 味しているわけではないということである」(p.504)。
・「学問(科学)をめぐる政治性に自覚的であることがどんなことにも必要だという至極当たり前の主張である」(p.505)。だが、自覚は 出発点であり、最終目標ではない。では、その出発が目指す先とはなにか? 実践的課題とは? 著者はそれを語らない。
●全体的構造・包括的観点・統一的視点という虚構?
「本書では、人類学の様々な知的営みを、同時代の政治・社会をめぐる状況のなかに置き直し、性急な断罪や逆に安直な擁護に流れることなく (→著者の対象の客体化願望)、全体的構造のなかで描き出すことを目指したい」(p.6)。
「植民地(占領地)で行われた人類学調査に関する歴史的検証は、現時点では様々なアプローチによる個別研究の集積という印象が強く、各植民 地における調査研究を統一的視点から評価検討する作業はあまり進んでいないようにみえる。……従来の研究にあって不十分だと思われるのが、太平洋戦争開戦 を契機とした人類学研究の変容に対する視点である。……人類学者の調査地域はアジア全域への拡大するが、従来の研究にあっては、こうした太平洋戦争中の占 領地での調査研究と、通常の植民地における調査研究の質的違いがともすれば見逃されてきた。/……本書では、……より包括的な観点から、人類学と植民地支 配や太平洋戦争との関係を検証してゆくことになる。……帝国日本の植民地や太平洋戦争中における人類学者の調査研究の全体的特徴を明らかにすること、これ が本書の第三の課題である」(p.9)。
●批判的に検証、全体論的構造の把握
・批判的とは、先行研究の瑕疵を批判することなのか? 批判とは何か?
・批判的とは、議論の階梯における別の〈審級〉の決定的要因(→たとえば経済決定論)をもってくる議論の論法のこと?
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文献
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