国際関係を対象にする学問
Academic disciplines on international relation and global politics
国際関係[学]の議論を構成するのは以下のようなものがある。
1.外交研究
2.国際政治理論
3.国際機構論
4.安全保障論
5.国際経済論
6.国際社会問題
7.地域情勢
これらのことを解説風にまとめると、それぞれのグループの中にさまざまな議論(テーマ)があるこ とが発見できるだろう。
1.外交研究
外交(diplomacy)とは、国と国の政治のことである。もちろん、どこかの国を中 心にみると隣国や遠くの国との関係や交渉のことを外交と呼ぶし、また国家間の相互関係のことを外交と理解することも可能だ。国家間の争いを戦争(war) と呼ぶが、戦争は国際的なルールによっておこなわれることが理想とされているので、戦争は外交の一形態でもある。また、外交に際して武力の存在が大きな影 響力を与えることがある。軍縮などは、二国間の取り決めよりも、国際間の取り決めのほうが重要になってきた。軍備に結びつく核物質の管理もまた外交であ る。国民の間で、国家を運営する主体の理解に齟齬があり、それらが話し合いによって解決されずに武力で衝突する時、それを内戦(civil war)と呼ぶ。内戦をおこなっている当事者間が仲直りするときには、基本的に外交の時に使われるスタイルーー合意と調印ーーがとられる。
2.国際政治理論
国際政治の形式的側面は外交で理解することができるが、国家を外交という観点から運営す る時には、国はどのような原則で外交を推進させるべきかについての考え方を知ることが重要になる。政治学や国際経済学などから導きだされたさまざまな議論 がある。勢力均衡論、覇権安定論、相互依存論、レジーム論、従属論、世界システム論などである。
3.国際機構論
国際間の動きを調整し、時には牽制するのが国際機関の役割である。国際間の合意にもとづ き、司法、軍事、保健、経済などのさまざまな国際機構が存在する。これらの権限の範囲は、きわめて多様であり、国際的な状況によりさまざまに変化してきた し、今後も変化し続けるであろう。
4.安全保障論
従来、安全保障の概念は、国家安全保障(national security)の枠組みで考えられてきた。国家安全保障は、外敵から身を守り、かつ国内の統治を安全におこなうことであった。しかしながら、この考え 方が国際間に展開すると、核軍縮や生物化学兵器の禁止などの国際的な規約、査察制度、あるいは違反に対する制裁などについて考えられるようになってきた。 これらは、国際安全保障と呼ばれる。また、国民の一人一人ないしは地球上の市民の一人一人に関する安全の保障の問題は、近年では人間の安全保障 (human security)という観点から非常に重要視されるようになってきた。
5.国際経済論
そもそも、近代経済学の発展は、経済活動がグローバル化するにしたがって、自国の経済と 世界の経済の発展・開発・停滞・阻害などについて理論的に考察するようになったことと関係している。また帝国主義論にみられるように国際的な資本の流動 が、それぞれの国家と地球上の市民にどのような影響をもたらすのかに関する議論も古くからあった。冷戦構造の終結からは、国際間の経済的協調に国際機関の 介入や国際金融制度が大きな役割を果たすことが主張されるようになった。他方で、南北問題はいまだ未解決であり、また同時にグローバルNGOなどの役割の 重要性に関する見解が生じてきた。WTO, IMFなどは、地球市民の経済的活動のみならず政治にまで深くかかわる組織に変貌している。
6.国際社会問題
国際的な共通の課題は経済問題だけにとどまらない。地球環境問題、人権問題、移民・難民 などのグローバルな人間の移動、民族紛争の解決など、複合的な問題解決の課題が多数残されている。
7.地域情勢
もともと地政学などを通し て、世界の各地に関する知識の収集と分析の重要性は、外交のみならず国家政治においても認識されていた。地 域研究、国別研究が生まれてきたのは、そのような理由による。しかし、政治の問題を国際的な文脈の中で考えることや、国家概念にとらわれない地球 市民の人権擁護の必要性などから、地域に関する情勢の把握と分析が、さまざまなところでおこなわれるようになった。
■クレジット:忘れる人のための国際関係論02——国際関係を対象にする学問
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