病いの空間化
解説:池田光穂
病いの空間化というトピックは、ミッシェル・フーコー『臨床医学の誕生』に登場する概念です。
第一次空間化:分類学的医学
第二次空間化:肉体の地理の中で表象される(神谷訳、p.28)
「容積や距離の点で分化している肉塊の地理的体系の中で、この空間がどんなふうに可視的になりうるの であろうか」、「ある病気が、ある生体におけるその座によって、どんなふうに特徴づけられるのであろうか」(神谷訳、p.28)
「二次的な空間化においては、この医学は個人というものに対する鋭い近くを要求する。それは集団的な 医学的構造から解放され、あらゆる集団的まなざしから自由になり、さらに病院における経験そのものから自由になった知覚である」(神谷訳、p.34)。
第三次空間化
「ある社会の中で、病がとりかこまれ、医学的に包囲され、分離され、特権的な、かつ閉ざされた諸領域 に割り当てられ、あるいはまた、好影響を与えるようにととえられた諸療養施設を通じて配分される場合、こうしたことを行う動作の総体を三次的空間化とよ ぶ」(神谷訳、p.35)。
「病人は、たしかに、働くことはできない。しかし入院させられれば、病人は社会にとって、二重の負担 となる。彼がうける扶助は、彼にしか及ばないから、彼の家族は放っておかれて、今度は家族が貧窮と病のおそれにさらされる。施療院=病院 ho^pital は、閉ざされた、伝染性の領域をつくることによって病を生み出すが、それが置かれている社会空間の中で、もうひとたび病の創造者となる。病人を保護する目 的で行われた隔離は、かえって病をうつし、病を無限に増殖させる。これに反し、もし病が、その誕生と成長の自由な領域に放置されれば、病はいつまでも、自 ら以上のものには決してならないであろう。それは現れ出たときと同じような工合(=具合)に消え去るであろう。その上、家庭において公的扶助を支給すれ ば、病がひきおこす貧窮のうめあわせとなろう。周囲の者が自発的に保証する看護は、だれにも一文もかからないであろう。また病人に支給される補助金は家庭 の利益となろう」(神谷訳、pp.38-9)。
「病人のために、一つの分化した、明確な空間をつくることを断念し、あいまいな、不器用なやりかた で、病気を保護し、かつ病気から予防するための空間をつくることを断念すれば、「病の病」という連鎖と、貧困のたえざる貧困化という連鎖は、このようにし て断ち切られるのである」(神谷訳、p.39)。
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