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見えない障害

"Mienai-Shoogai," Invisible disability


写真の説明は以下でおこないます

池田光穂

「見えない障害」は、平成12(2000)年に当時の厚生労働大臣である坂口力が、大蔵省との大臣復活折衝で獲得した、厚労省の「高次脳機能障害支援モデル事 業」計画のなかで謳われている、高次脳機能障害を一般の人々に啓蒙するための障害のラベルのこと。

この事業は2001(平成13)年度より2005(平成18)年度まで続いた。

一般に、外傷や疾患などによる脳損傷により引き起こされる高次脳機能障害は、その障害像が多様で、明確な定義をおこなうことができない。

そこで、その障害の原因を、問題が把握された時間をさかのぼって生起した脳損傷に求め、これらを「器質性精神障害」のカテゴリーの中に位置 づけた。

高次脳機能障害にみまわれる患者のグループは大きく2つに大別し、若年齢者の交通事故などを原因とするものと、高齢者の脳血管疾患を原因と するものである。

後者の高齢者には、介護保険の社会保障制度が適用できるが、前者のものについては、ケア制度が未整備であった。そのため、支援モデル事業 は、前者の若年齢者を中心とする障害者の認定と、その社会保障の実施というかたちで推進された。

社会保障制度では、障害者とは、当人の自己意識や周りの人たちの判断において認定されるのではなく、器質精神病としての障害者の認定を、専 門家(医師)の判断のもとに、国家が認定してはじめて、種々の福祉制度の受給者となる。いわゆる「障害者手帳」をもって、はじめて福祉対象となるほんもの の障害者になるのである。

器質的な病変が認められない精神疾患と同様、精神障害者は一般的には「見えない障害」を抱える人たちである。したがって、医療専門家ならび に国家が「見えない障害」を認定する際には、その当人は相反する2つの社会的影響を受けることになる。

ひとつは、精神障害者としてのスティグマを周囲の人たちから張り付けられることであり(=スティグマの可視化)であり、他方、そのような可 視化を通して、国家からの福祉的サービスの受給する権利を獲得することである。

そのモデル事業で確立され、現在「見えない障害」者に対する福祉サービスには、(記憶障害、注意障害、遂行機能障害などに対する)医学的リ ハビリテーションなど、認知科学の成果を応用する手法が採用されている。

だが、健常者がデフォルトとしてみなされ る社会では、不可視の障がいはしばしば、ないものとみされ、コミュニケーションがおこなわれるので、障がい者はそのつど、障がい者の意識のない人にむかっ て「自分は障がい者である」宣言を行わねばならない——これを「障がいカミングアウトの日常的実践」と読んでおこう。

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このようなプログラムが採用、推進されている背景には次のような複数の歴史的・社会的要因が見え隠れする。(1)見えない障害者を国家が発 掘し、丹念にケアをおこなってゆくというパターナリズム的政策主義、(2)1990年代以降に、医療や福祉の現場で徐々に表面化してきた「見えない障害」 者をとりあげるマスメディアや政策担当者および福祉実践者のあいだにおける、この障害のもつ社会問題化、(3)バイオジェネティクス研究の沈静化(ないし は一段落化)以降に隆盛する脳科学研究の進展、そして(4)年少者の教育現場や成人教育において、徐々に効力のある手法として社会的に影響力をもちはじめ てきた認知科学的療法(=認知療法)の進展である。

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しょうがいをもっている人への配慮は人権上重要な意味をもっている.だが、それは、しょうがいがないひとがデフォルト(基準)にあるので、しょうがいが可 視化されないひとは自らカミングアウトし(名乗り)なくてはならない。ヘーゲルの主人と奴隷の例え(精神現象学)の相互承認がここでも生じる。(ひ)しょ うがいしゃは主人であり奴隷でもある。——写真は信濃毎日新聞デジタルより(プライバシーがわかるものは消しています)

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