はじめによんでください
博士論文執筆能力の三要素
The
three
elements of competence required for writing a doctoral dissertation
Kkachi horangi (magpie and tiger), artist unknown
博士論文作成(ないしは博士課程の研究遂 行)能力の3つの要素について述べる。
博士論文という資格にふさわしい能力は以 下の3つの条件が備わっていなければならない。
1)テーマに関する基礎知識があるかということ
2)取り扱っている下位領域に関する具体的知識があること
3)それらのことをまとめる能力。とりわけ先行研究にはない、独自のオリジナリティがあること
以下個別について、具体例をあげて説明し てみよう。
1)テーマに関する基礎知識があるかとい うこと
テーマに関する基礎知識とは、例えば文化人類学の場合、宗教や経済(私の場合は「医療人類学」を専攻している)などのテーマであり、行動観 察あるいは口述記録など方法論に関するものも、ここで言う「テーマ」に関する知識に入る。つまり、どのような研究や大きな理論的枠組みあるかについての知 識のことである。また、そのテーマを研究した偉大な先人についての可能性と限界についての批判的レビューができる能力が要求される。
テーマに関する基礎知識とは、そのテーマにおいて何がすでに明らかにされており、なにが未解決なのか。なにが、よく議論されており、なにが 等閑視(閑却)されているのかが見渡せることである。
てっとりばやく言えば、君がやっているテーマで、大学の教養課程・一般教育で教授できるだけの基礎知識、つまり君が属しているノーマルサイ エンスのパラダイムの中のことを教育することができる資質をもっているかということである。
2)取り扱っている下位領域に関する具体 的知識があること
この知識は、研究室の大学院ゼミなどで読んでいる論文レベルの知識である。文化人類学を例にすると、文化人類学は、ひとつないしは複数の地 点での観測つまりフィールドワークをおこなう必要があるので、その地域に関する知識などは、この「個別研究・理論」の範疇に入る知識を必要とする。例え ば、私は中米とりわけ最近はグアテマラの先住民を研究しているのであるが、ここでの知識は単にグアテマラの先住民に関する文化人類学的研究のみならず、現 代政治や歴史、あるいは、もっと卑近な地域情報に関するものまでの知識がこれに相当する。
3)それらのことをまとめる能力。とりわ け先行研究にはない、独自のオリジナリティがあること
これまでの1)と2)知っているだけでは、単なる物知りと変わりない。もの知りになることは、その学問に対する情熱の証(=事後的な結果) であるので、それ自体にも十分な価値を認めた上で、あなたが、なぜ研究するのかという、必然性やあなたの研究は他の未来の人たちにとって不可欠なものにな るためには、ほかの人にない独自性を示す必要がある。なぜなら、もし独自性がなければ、あなた以外の人がそれをやってもいいからであり、なぜ、このテーマ のこの個別研究をおこなっているのかについての立派な存在証明は、まさにオリジナリティにあると言える。
以上のことをまとめて、博士論文という資 格にふさわしい3つの条件(能力)のそれぞれの関係は以下のような図で示すことができるだろう。
あなたが、いま研究している最中だとし て、それぞれの領域にどの程度研究が進んでいるのか、達成点やまだ未着手の点、気づいた点や、これまで心 に抱いてきたけど、まだ不定型なアイディアなどを書き出して、それぞれの図形のなかにどれくらいの情報やアイディアが盛り込まれているのか記述してモニ ターするのがいいだろう。そうすることで、これからなにをすべきなのか、時間的に可能なものはなにか、あるいはその最短経路はどうすればよいのか、別の経 路をとることに関するコストとリスクなどについて思いを馳せればよいだろう。
以下は、破格で、フツーの人はまねてはいけません。ハロルド・ブルーム 『影響の不安』より |
1)クリナーメン:詩的な誤読、正当な曲解 |
2)テスセラ:完結および反定立 |
3)ケノーシス:反復強迫に対抗するために使われる(認識の)分断 |
4)デモナイゼーション:古典や権威を呪う、反崇高性 |
5)アスケーシス:自己浄化 |
6)アポフラーデス:死者の帰還 |
フォースとともにあれ!(May the Force be with you! )
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