池田光穂
グローバリゼーションとは、地球(グローブ)における距離の圧縮現象に伴う文化的・社会的変化のことをいう。とりわけ、モノ・人・情報の大規模な流通が、もたらす影響について考え、その制御や権利(=法や正義)を考え、そして、その未来のあり方について考えるのが、グローバリゼーション研究のテーマになる。
グローバリゼーションが法文化(リーガル・カルチャー)に与える影響は次の2
つの領域である。
- 1.グローバリゼーションにより、国境をこえたモノ・人・情報の流通がおこり、国家法によるガバンナンスの限界が露呈すること。そのために、
人びとの間に国家法概念における「相対化」がおこる。
- 2.国家法の相対化により、人びとの意識は、国家法よりも自分が慣れ育ったローカルな「法文化」に関心がおこったり、また、そのことの伝統的
価値を再び見出すようになる。もちろん、グローバリゼーションという文脈のなかで人びとの意識のなかに、さまざまな国家法が存在することが自明になり、国
家法概念の相対化が起こる。逆説的だが、この相対化のなかで、自分たちの身の回りの慣習に興味が湧いたり、時には国家法がその自分たちの法文化を抑圧して
きたことについての反省的意識が生じる。これられのことは、人びとのあいだに法の多元化の意識が、足下からおこることになる。これは法学者が考える法の多
元化——機能的多元化——よりも、よりプラグマティックで、自分たちの法文化に依拠するかたちで進行してゆくだろう
このようなことをまとめると、国家法の相対化と、法
(現象)の多元化という2つのことにつきる。
リンク
文献
- 浅野有紀, 2014「私法理論から法多元主義へ:法のグローバル化における公法私法の区分の再編成」社會科學研究 第65巻
第2号、Pp.89-112.