野口悠紀雄『日本式モノづくりの敗戦』研究
僕は野口悠紀雄先生の、「自動車産業の農業化」というテーゼに出会って以来、野口先生の魅力に完全に参ってしまった。
僕は、経済の専門家でもないし、普通の人よりも、経済の知識には疎いほうだと思う。だけど、野口先生が「日本の経済や社会はこのままでよい のですか?」という審問は、より多くの人――とりわけ若い学生諸君――が耳を傾けるべき、先人の知恵というものがあると思う。
というわけで、ここで取りあげるのは2012年に東洋経済新報社から出版された『日本式モノづくりの敗戦』である。「週刊東洋経済」誌に連 載されたとのことだが、他の類書とは異なり、書籍への編集の際には、きちんと索引が付され、また、引用された図表には別途索引がつくという、いわゆる専門 書としても利用可能になっている。どの本でも、さすがかつての『超整理法』の著者だけあって、文章は平易でわかりやすい。にも関わらず高度な経済理論に裏 付けられている――僕は、経済学的知見は疎いと先に言ったが、学問の作法にはプロ中のプロとして精通しており、大学で教育を行ったことがある人は、野口先 生の啓蒙的「ちから」には脱帽することであろう。
さて『日本式モノづくりの敗戦』は、11章から構成されている。その章の表題と副題をみるだけでも、この本の概要が示唆できる――理論は細 部に宿るので、直接本をとってみるのがよかろう。
余談
《ノリメタンゲレ:ポストモダン版》「文化放送のラジオで大竹まことと、司会者が、じゃあ どうすればいいのですか?と野口悠紀雄先生にすがるのだが、それは自分でかんがえないといけないとつれない返事。それもそのはずだ、彼は米国が製造業を脱 却し ITないしはICT産業で大ブレイクした時に政府の助成金などなかったと指摘、「彼ら(米国の企業)が創意工夫してなしとげた」とくり返し言う。つまり、 日本は野口のいう「製造業界の農業化」(=政府の助成金サポートで国際競争力を失い本当に産業を日本政府そのものが破壊してしまう)により、もっと酷くな るのだと予言する。つまり、野口のテーゼは「自分たちが直面する苦境は、自分たち自身が創意工夫して乗り越えないとならない」という至極当たり前な処方を くり返しているからだ。イエスが(騙し、裏切り、中傷、拷問、そして処刑という)痛い目にあい、死んでから復活したときに、まだ、残りの連中が、優柔不断 にイエスにすがろうとしたとき彼は「ノリメタンゲレ」と言った。俺にすがるな、という意味だ。それをパラフレイズすれば「自分のケツは自分で拭くんだ!」 という高尚なメッセージになる。イエスは、昔も今も正しいことをおっしゃっている。みんなひとりひとりが、イエスにならなければならない。」
「日本は、直面する最大の問題に対して有効な対策を講じていないのだ」(野口 2012:306-307)
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